2009/5/18

  2009年5月18日(月)
  I 続三洋電機の研究。
  II 新型(豚)インフルと富士フイルム。

 I 続三洋電機の研究。
(一)三洋電機の日足。

三洋電機日足

(1)先週末にリチウムイオン電池量産工場の建設発表を受けて株価が上放れた。
(2)今回は4月20日付クラブ9「三洋電機の研究」の続編です。

(二)世界初、リチウムイオン電池の本格生産へ。

(1)三洋電機は先週、決算発表と共にリチウムイオン電池の新工場を兵庫県加西に建設すると発表した。徳島工場の2万台と合わせて供給能力を6倍の年産12万台以上に引き上げる。投資額は300億円。
(2)年産12万台といえば本格生産の開始を意味する。ハイブリッドカーの開発競争は、第1世代のニッケル水素電池から第2世代のリチウムイオン電池に進み、三洋電気は技術開発の最先端に躍り出たと私は感じた。
(3)三洋電機はニッケル水素電池でも洲本工場に数十億円を投じて、生産量を年産6万台から15万台に引き上げる。
(4)ニッケル水素電池はホンダのインサイトのほかフォルクスワーゲン、フォードにも供給している。パナソニックはトヨタのプリウスに供給しているから、三洋電機の生産量を合わせると市場シェアが80%以上となる。そのためにパナソニックの三洋電機買収は独禁法に抵触する恐れがあり、パナソニックはTOBを延期している。
(5)パナソニックの大坪社長は15日の決算発表で「現在11ヶ国・地域で競争法の審査を受けているが、今夏にはTOBを実施できるだろう」と述べた。TOBが終わればパナソニックも直近の開発情報を開示するだろう。
(6)三洋電機がパナソニックの傘下に入れば、開発資金面でも技術面でも、万全の後ろ盾を得る。

(三)ニッケル水素電池とリチウムイオン電池。

(1)現在発売中のハイブリッドカーは、プリウス、インサイト共、ニッケル水素電池を用いているが、次世代のリチウムイオン電池を用いれば出力が2.3倍に改善する。
(2)しかしリチウムイオン電池は携帯電話に使われて、発火事故が発生した。そのためにトヨタはリチウムイオン電池を用いたハイブリッドカーの発売計画を3年延期した経緯がある。
(3)三洋電気が徳島工場に次いで大量生産のための加西工場を建設するということは、リチウムイオン電池の問題点を克服し、実用化に目途をつけたことを示している。
(4)三洋電機はニッケル水素電池とリチウムイオン電池でフォルクスワーゲンと提携している。ホンダはGSユアサと合弁で新工場を立ち上げたが、三洋電機との提携関係も維持すると思われる。
(5)しかし12万台という生産量から見て、トヨタへの供給が含まれている可能性が高い。
(6)リチウムイオン電池を用いたハイブリッドカーも、当面は電気モーターとガソリンエンジンを併用するが、さらに進化してガソリンスタンドの充電態勢等が整えば、ガソリンエンジンが不要となる。

(四)究極の技術革新へ、主導権を握るか。

(1)自動車メーカーは機械、電気、素材等、広大な下請けの裾野を支配して、製造業の頂点に立っている。
(2)その巨大な自動車産業で、「ガソリンエンジンから電気モーターへ」という歴史的な技術革新の大波が起こった。今やクリーンエネルギー、省エネルギーの追求は世界の政治の共通の目標となった。
(3)そうなると自動車の技術革新の主導権は自動車メーカーから電池メーカーに移る可能性が高い。中でも最大出力と安全性を備えた電池を開発した企業に対して、世界の自動車メーカーから需要が集中するだろう。
(4)少なくとも今日現在、三洋電機は世界で初めて自動車用リチウムイオン電池の量産体制に踏み出した。
(5)私の理解が的はずれでなければ、三洋電機を除外したポートフォリオは考えにくくなるだろう。

(五)TOB株価と市場株価のかい離について。

(1)表題の質問が多いので私見を述べておきたい。
(2)昨年12月に、パナソニックは三洋電機と資本業務提携を結び、三井住友銀行、大和証券、ゴールドマンサックス3社が保有する三洋電気株式を、TOBによって、1株131円で取得すると発表した。
(3)その後、独禁法問題が浮上してTOBが遅延している間に、三洋電機の株価が上昇したが、今回は市場株価と関係なく、TOBを宣言した上で、相対で売買を執行すると思われる。
(4)パナソニックはTOB成立後も三洋電機を合併せず、連結子会社としてそのまま上場を維持すると発表している。

 II 新型(豚)インフルと富士フイルム。
 富士フイルムの日足。

富士フイルム日足

(1)三角持ち合いが煮詰まっている。
(2)新型(豚)インフル患者の急増で、富士フイルム傘下の富山化学 T-705 が注目されているように見える。
(3)T-705 は昨年、日米同時にフェーズ2を終了し、日本では追加臨床も終えた。新型鳥インフルエンザ特効薬の呼び声が高く、タミフルを凌ぐ薬効と、安全性が報告されている。
(4)新型(豚)インフルエンザ患者の急増を受けて、日米同時に臨床フェーズ3が進行している可能性がある。
(5)もちろん、T-705 の製造が認可されるか、その時期がいつか、はわからない。
(6)インターネットで「富山化学T-705」を検索すれば3,270件の情報が閲覧できる。
(7)クラブ9の4月27日付を参照されたい。