2009/4/20

  2009年4月20日(月)
  三洋電機の研究。

(一)三洋電機のチャートと株価。

三洋電機

(1)パナソニックによる三洋電機TOBが迷走している。
(2)しかしチャートを見れば一目瞭然、永い三角持ち合いの上限である150円突破が目前である。
(3)GSユアサと古河電池はリチウムイオン電池人気で、世界的な株価暴落を尻目に今年最大の出世株となった。
(4)パナソニックが独禁法問題を解決すれば、三洋・パナソニック連合はリチウムイオン電池車の開発で文句なしに世界最大、最強となる。
(5)そこで私はパナソニックのIR(株主向け広報)にTOBの進捗情報を問い合わせた。以下に私の推定を加えて問題点を整理してみた。

(二)迷走するパナソニックのTOB。

(1)三洋電機にTOBをかけたパナソニックが、実施期間を先延ばしにし、買収株数を減らすなど、不可解な動きが続いている。TOBの成立を阻んでいる理由をパナソニックは次のように説明した。
第1に、三洋電機の買収が独禁法に抵触する恐れがあるので事前承認を申請している。
第2に、独禁法の対象となる部門はリチウムイオン電池のみである。
第3に、事前申請は国別に行っているが、まだ合意に達していない国がある。
第4に、4月中には何らかの情報開示が可能だろう。
(2)私は独禁法の罰則が最も厳しいECについて文献を当たってみたが、「独占的な立場を利用して公正な競争力を損なった場合」といった抽象的な表現があるだけで、市場シェアなどの具体的なガイドラインは存在しない。パナソニックの事前折衝が難航している事情もこのあたりにあると思うので、私の独断的推測を加えて問題点を整理した。
(3)最も難航している国はドイツだろう。
第1に、リチウムイオン電池の開発で、三洋電機はフォルクスワーゲンと提携し、パナソニックはトヨタと提携している。
第2に、自動車の販売実績で、トヨタは世界1位、フォルクスワーゲンは世界3位である。パナソニックが三洋電機を買収すれば、両社のシェアは世界最大、最強となる。
(4)パナソニックはTOBの遅延後に次のような発表を行っている。
第1に、買収する株式数を70%程度に止める。
第2に、合併はしない。子会社として三洋電機のブランドを生かす。
(5)パナソニックは買収株数を減らした理由を「資金負担を減らすため」と説明しているが、3兆円の利益剰余金を蓄積した超優良企業が1,000億円程度の出資金を問題にするとは思えない。おそらく事前折衝の過程で生まれた譲歩だろう。
(6)独禁法の問題が発生した後、両社はリチウムイオン電池に関する情報開示を全く行っていない。GSユアサや古河電池等の活発な情報開示と比べれば異常である。これも事前折衝を刺激しないための配慮だろう。
(7)私の推定が的外れでなければ、事前申請の交渉は大詰めを迎えており、「4月中に決着する」可能性もある。

(三)白熱化する開発競争。

(1)1年前の工場見学で、三洋電機は「リチウムイオン電池は生産工程を5分割してノウハウの社外漏洩を防止している」と説明していた。フォルクスワーゲンと提携した三洋電機はトップ企業の自信にあふれていた。
(2)昨年両社がTOBで合意した直後に、パナソニックは三洋電機の工場内に1,000億円の設備投資を行うと発表し、期待と意気込みの大きさを感じさせた。
(3)独禁法問題が浮上した後、両社は完全に沈黙を守っているが、独禁法抵触を恐れるほど圧倒的なシェアを確保した両社が手をこまねいて何もしていないはずがない。問題が決着すれば、具体的な情報開示が続出するだろう。