2012/6/18

  2012年6月18日(月)
  I。「あべのハルカス」は日本一の超高層ビル。
    大阪で高層ビルの開発ラッシュが始まる。
  II。日本ケミカルリサーチ。
    バイオ医薬品時代の大本命。

 I。「あべのハルカス」は日本一の超高層ビル。
    大阪で高層ビルの開発ラッシュが始まる。
(一)「あべのハルカス」は日本一の超高層ビル。
伊丹空港発着ルート

(1)近鉄が阿倍野で建設中の超高層ビル「あべのハルカス」が先週、西日本一の高さを記録した。2014年3月の完成時には地上300メートルに達し、日本最高となる。
(2)敷地面積は28,700平方メートル、延べ床面積は212,000平方メートルで、百貨店、オフィス、ホテルが入居する。
(3)<地図・伊丹空港発着の飛行ルート>をご覧頂きたい。伊丹空港に離着陸する飛行機の安全を確保するために、現在、大阪市周辺のビルは高さが200メートルに制限されている。
(4)あべのハルカスは飛行ルートから外れているために、例外として高さ300メートルが認可された。
(5)しかし6月11日付「クラブ9」でも述べたように、大阪府、大阪市、吹田市が主張している伊丹空港廃港案が通れば、200メートルの高さ制限は自動的に消滅する。
(6)その時、大阪には高層ビルの建設ラッシュが始まる可能性が高い。特に高さを50メートルに規制されている御堂筋周辺に高層ビルが林立して大阪の景観が一変するだろう。
(7)不動産価格はビルの容積率に比例するから、10階建てを20階建てに立て替えれば敷地面積が同じでも家賃収入は2倍になる。さらに風景や環境がよくなれば家賃にプレミアムがつく。
(8)大阪のような巨大都市でビルの建築ラッシュと不動産相場の高騰が重なれば、不動産バブルが発生し、沈滞した景気を浮揚させる効果が期待できる。
(9)前回の「クラブ9」で私は、上方(大阪)で元禄時代に不動産バブルが発生し、上方文化が一斉に開花した経過を述べた。井原西鶴の小説や近松門左衛門の人形浄瑠璃と歌舞伎が爆発的な人気を集めて遊郭、芝居、文楽等の豪華な建物の建設ブームが起こり、一方堂島で世界初の米の先物取引が始まると堂島川沿いには豪華な蔵屋敷がひさしを連ねる大建設ラッシュが起こり、大阪で巨大なバブルが発生して行く経過を詳述した。
(10)問題は大阪でビルの高さ制限がなくなったとしても、多数の超高層ビルを必要とするほど大きな建築需要が発生するかであるが、この点でも絶妙のタイミングで「東京の首都機能の一部を大阪で肩代わりする」という巨大な不動産需要が突然発生した。

(二)首都機能の一部を大阪に移転する。

(1)第1に、東大地震研の平田教授がマグニチュード7の東京直下型地震が4年以内に発生する確率は50%以上と発表した。京大地震研も富士山が噴火する確率は100%と発表した。大正時代に日本経済を恐慌に陥れた関東大震災が再発する確率は大飯原発が破たんする確率よりも桁違いに高い。
(2)第2に、東京圏は人口2,400万人を擁する世界一の巨大都市である。さらに東京には世界第2位の経済大国の政府機能と日本企業の本社機能が集中している。もし東京の直下でマグニチュード7の巨大地震が発生すれば、日本の政治経済の中枢が麻痺して大混乱に陥る。
(3)第3に、原子力発電所は二重三重の防護措置を講じているが、それでもリスクを懸念する報道がマスコミを占拠している。これに対して東京は首都直下型地震に対してまったく無防備であるばかりか、政治家、経営者、住民がそろってリスクに無頓着で、マスコミの話題にさえならない。「油断」こそ大敵である。
(4)第4に、さすがに東京都の石原知事は自ら首都機能の一部大阪移転を要請した。
(5)世界各国の首都に比べて東京の首都機能はあまりにも肥大している。超高層ビルから深度40メートルの地下鉄まで、建築物は極端に立体化し、首都圏は近隣府県を飲み込んで広域化した。昨年の東日本大震災では千葉県や埼玉県の多数の住民が帰宅できずに東京で立ち往生し、難民化した。直下型大地震で火災と水害の追い打ちがかかれば凄惨な悲劇が発生する。
(6)大地震が発生しなくても、日本の首都はすでに肥大化し過ぎて効率と利便性を失っている。
(7)かつて石原都知事は堺屋太一氏の首都移転論を「東京一極集中のどこが悪いか」と一蹴したが、今や石原知事の危機意識が一変し、自ら首都機能の一部大阪移転を主張するに至ったのである。
(8)橋下市長は今こそ「大阪都」に腰を据えて、石原都知事の要請を受け入れるべきではないだろうか。橋下維新は中央政界に打って出るまでもなく、霞ヶ関自体の大阪シフトが進み、民間企業が追随して本社機能を大阪に移し、国家として大地震の発生に備える動きが急速に具体化するだろう。
(9)もしそのとき東京で大震災が起これば橋下市長は日本の救世主となる。大震災が起こらなくても、不動産の高さ制限撤廃がもたらす大阪の不動産バブルが日本経済復活の起爆剤になると私は思う。

 II。日本ケミカルリサーチ。
    バイオ医薬品時代の大本命に。
JCR日足

(1)日本ケミカルリサーチ(以下JCR)は売上高が145億円に過ぎないが、世界でトップクラスのバイオ技術を確立している。今やそのバイオ技術をベースにした新薬開発のプロジェクトが目白押しで、今期の研究開発費は28〜30億円に達する。
(2)製薬世界第2位の英国グラクソ・スミス・クライン(以下グラクソ)は早くからJCRのバイオ技術に着目して筆頭株主となり、全面的な包括提携契約を結んだ。現在、JCRと共同で新規の開発プロジェクトを続々と立ち上げている。
(3)世界の製薬業界の新薬開発の主戦場は今やバイオ新薬とバイオ後発薬に向かい、JCRは世界で最も活気にあふれた製薬会社となった。
(4)今期はバイオ後発薬エポエチンアルファが急速に市場シェアを伸ばし、月次ペースで2倍に激増している。野村證券は5月1日付レポート「ジェネリック医薬品業界」で、人工透析病院が薬価引き下げを受けて高品質で割安なエポエチンの使用比率を大幅に引き上げていると分析している。
(5)エポエチンは2010年5月発売で設備と開発費の償却が大幅に進んだから、売上高が倍増すれば利益も急増する。業績予想の大幅増額修正は必至だろう。
(6)エポエチンの販売は国内をキッセイ薬品、海外をグラクソが担当しており、国内の前期販売実績14億円は倍増が見込まれる。グラクソは世界各国で販売認可を申請中であるが、海外の市場規模は国内の10倍である。グラクソの海外販売が始まれば業態を一変させる効果が期待できる。
(7)グラクソは現在JCRの筆頭株主として26%を保有しているが、両社は最大33.5%まで、240万株の買い増しで合意している。提携関係の進展につれてグラクソは保有株式を増やす可能性がある。