2011/9/12

  2011年9月12日(月)
 傑出したモルフォの開発力、成長力。

モルフォ
(一)失速したモルフォの株価。

(1)モルフォの株価が下放れた。強気で推奨した私の不明をわびたい。
(2)世界的な株価暴落のあおりを受けたとはいえ、固有の下落要因もあった。しかしモルフォが魅力あふれる成長株であるという確信は変わらない。以下に株価と業績に対する私見を述べておきたい。
(3)第3四半期の実績と通期の予想については9月5日付緊急レポートを参照されたい。今期は5%の小幅増益に止まるが、来期は6億円へほぼ利益が倍増する。
(4)モルフォは画像処理技術に特化した研究開発型企業である。パテントとライセンスの使用料収入が収益の中心だから、モルフォ自身が予想する業績は信頼性が高い。
(5)問題は株価である。社長は「当面は無配を継続するが株主には株価で報いたい」と表明していた。私の強気も投資家の期待も社長の談話を最大のよりどころとしていたが、その株価が下放れた。しかし世界的暴落のあおりを受けて大半の銘柄が急落したから、株価の下落をモルフォの責任とばかりはいえない。
(6)ただし、社長が考えていた株価と投資家が期待していた株価の間には、ズレがある。
(7)上場時の公募価格は2,250円、会社が株式市場から取得した資金も2,250円であったから、社長は2,250円を責任価格と感じているようである。
(8)しかし2,250円で公募株を取得した投資家は皆無に近い。大多数の投資家は上場時の初値である4,840円が社長の責任価格だと思っていたから、4,840円を下回った途端に市場人気が弱気に傾いた。
(9)社長以下多数の従業員を東大卒で固めている点もモルフォの大きな特徴である。本社所在地は東大、筆頭大株主も東大ベンチャーである。上場企業初の東大集団に対する投資家の期待も大きかった。
(10)それだけに9月5日に発表した第3四半期の予想外の赤字転落は、通期決算も赤字に転落するのではないかという疑心暗鬼を投資家に与えた。私も突然の赤字決算に驚いてモルフォに問い合わせたが、窓口のIR担当は平然として「第3四半期の赤字も通期の黒字も予定通りです」と答えた。
(11)しかし現に、株価は決算発表を受けて寄りつきから売り気配で始まり、その後も一方的に下落した。投資家は第3四半期の赤字を見て通期の黒字予想を信用できなくなったのである。モルフォは10月の本決算が予定通りの黒字を維持する理由を投資家が納得できるようにコメントする配慮に欠けていた。

(二)日本初、ソフトウェアのみで上場したモルフォ。

(1)社長は「モルフォは日本で始めてソフトウェアだけで上場を果たした企業であることを誇りとしている」と語っている。将来もソフトウェアの開発力は衰えず、ライセンス収入が増加するという自信が社長の株価に対する強気の背景にある。
(2)第1に、これまでも毎年2〜3件の特許を取得してきたが、今後は株式上場によって取得した資金を投入して開発力を強化する。
(3)第2に、国内ではすでに多くのスマートフォンにモルフォの画像処理ソフトが搭載されており、デジタルカメラより魅力的な写真が簡単に撮れると人気を集めている。国内の搭載機種は更に増えるだろう。
(4)第3に、現在はアップルやノキアなど海外のスマートフォン大手や、デジタルカメラの大手にもモルフォのソフトウェアを売り込んでいる。搭載機種は早晩世界中に広がるだろう。
(5)第4に、サムスンのように新規にモルフォのソフトを採用した企業は、モデルチェンジやマイナーチェンジによってソフトを搭載した時点から、ライセンス料の支払いが始まる。つまりライセンス収入は契約よりも遅れて発生する。
(6)私は、モルフォほど魅力的なノウハウを次々に開発し、ノウハウとライセンスの収入を世界市場で着実に積み上げる企業はきわめてまれだと思う。
(7)モルフォは材料が豊富で、潜在成長率が高い。その一方で安定株主が増えて出来高が縮小傾向をたどっている。
(8)株価は現在、世界的な下落局面に巻き込まれているが、モルフォの株価は好材料が表面化する度に反発力を強めると思う。