2010/11/22

  2010年11月22日(月)
  円安、日本株高へ、相場の環境が大逆転。

(一)円売り、日本株買いの主役はヘッジファンド。

(1)11月15日付クラブ9で、私はドル円為替と日本株の大逆転をきわめて正確に予測できたと思う。
(2)先週末には逆日歩が269銘柄に達した。これは日本株買いの中心がヘッジファンドによる空売りの買い戻しであったことを明快に示している。個人投資家の買いであれば買えば買うほど信用取引の買い残高が増えるが、ヘッジファンドは借り株を用いて実弾で日本株を売り崩していたから、買い戻せば買い戻すほど信用取引の買い残が減ったのである。
(3)私はかねてから証券業協会と東証に提言しているが、ヘッジファンドの借り株による売り・買いを信用取引と同様に毎日開示させるべきだと思う。例えば川重のような大型株が短期間に急騰し、株不足になったが、ヘッジファンドが実弾で買い戻した結果だと推定される。
(4)ヘッジファンドは空売りしていた株式を買い戻すと同時に、買っていた円を売ったと推定される。彼らは円買いと日本株売りをセットにしたポートフォリオを組んでいたから、ヘッジを解消するためには円の売り戻しと日本株の買い戻しを同時に執行しなくてはならない。
(5)ヘッジファンドのヘッジの巻き戻しは11月がピークとなる可能性があるが、年内は大きな基調変化がないだろう。
(6)一方、米FRBのジャブジャブ金融を受けて世界的に株価と商品相場が高騰した。特に石油相場の値上がりで外貨を蓄積したオイルマネーが欧州系ファンドを通して日本株を買った可能性が高い。新興国市場に集中投資していた日本の年金が慌てて日本株を買ったという情報もある。日本の年金はリスクを回避しようとしてかえって後追い、高値づかみを繰り返している。
(7)次項でクラブ9注目3銘柄の株価を見ておきたい。

(二)パナソニックの株価。

(1)三洋電機、パナ電工の買収以来、パナソニックの新たな情報が連日のようにマスコミを賑わしている。
(2)中でも三洋電機のリチウム電池部門は、パナソニックの中核部門を担うばかりか、世界最大の自動車産業の中核部品を支配する可能性が高い。
(3)三洋電機は18日、EV車(電気自動車)とHV車(ハイブリッド車)向けリチウムイオン電池を自動車大手6社に供給すると発表した。すでに公表済みのフォルクスワーゲンとスズキのほか、トヨタ、ホンダ、フォード、プジョー等が含まれていると推定される。
(4)三洋電機はEV時代が本格化する2020年に市場シェア40%を確保すると宣言して全方位販売を進めてきたが、本間副社長は記者会見で「40%は今や目標から確信に変わりつつある」と述べた。
(5)さもありなん。三洋電機は技術力と生産量でダントツのシェアを占めたから、量産によるコスト競争力で競合他社を圧倒している。現在までに発売されたEV車はリチウムイオン電池が生産コストの3分の2を占めており、作れば作るほど赤字が増えるという情報もある。EV車やHV車の競争はすなわちリチウムイオン電池のコスト引き下げ競争だから、市場シェアはますます三洋電機に集中するだろう。
(6)チャートのパナソニック株は保ち合い圏を明快に上放れた。次の目標は1,500円台となる。

(三)富士フイルムの株価。

(1)11月18日付日経は、富士フイルム傘下のバイオベンチャーであるJ・ティッシュが軟骨再生を量産するための設備投資に踏み切ると報じた。
(2)先に富山化学を買収した富士フイルムは、富山化学が20%を保有していたJ・ティッシュをも傘下に収めて、着々と製薬業界の足場を固めている。
(3)富山化学が開発中のT-705は新型インフルエンザや多剤耐性菌等、広範囲の感染症に有効と認められた大型新薬で、製造認可は来年と推定される。
(4)富士フイルム株は先週、保ち合い圏を突破した。次の目標は3,300円台である。

(四)日本ケミカルの株価。

(1)株価は5月大商いの6ヶ月期日を迎えて底入れが難航したが、徐々に下値を切り上げて2番底を形成したように見える。
(2)米国のバイオ企業の時価総額は30兆円に急拡大し、3兆円の大型買収も成立した。
(3)日本ケミカルはバイオ技術を用いて腎性貧血治療薬エポエチンアルファを開発し、日本企業で初めて厚労省の製造認可を受けた。
(4)国内では2社寡占の1,100億円市場に、7月からキッセイ薬品が第3勢力として参入した。第2四半期の売上高は7億円に過ぎなかったが、月を追って増勢をたどるだろう。
(5)来年には海外1兆円市場の販売権を取得した世界第2位の製薬大手グラクソ・スミスクラインが2社寡占の市場に参入する。来期には売上高が急増し、株価は高値更新を目指すだろう。