2010/11/15

  2010年11月15日(月)
  円安、株高へ。日本に追い風。

(一)NYダウと日経平均。

NYダウと日経平均の週足

(二)米超ジャブジャブ金融の光と影。

(1)NYダウは9月以降きわめて順調な上昇傾向をたどってきた。FRBのバーナンキ議長が空前の規模で金融市場に巨大流動性を供給すると表明し、予告を上回る規模で実行したからである。
(2)すなわちFRBは米経済のデフレ懸念を断ち切るために、来年半ばまでに6,000億ドル(50兆円)の長期国債を買い取ることによって、金融市場に空前の過剰流動性を供給すると発表し、実施した。日銀が表明した資産買い取り5兆円の10倍に達するスケールである。
(3)これを受けてニューヨーク株を筆頭に世界の株価が高騰し、石油、貴金属、非鉄、穀物等の商品相場が一斉に急騰した。特に米国では株式や住宅価格の上昇が消費を刺激し、設備投資を誘発し、景気と雇用を好転させると期待された。
(4)しかし先週には一転してNY株が急反落し、予想に反してドル相場に底入れ観が台頭した。
(5)オバマ政権は金利を引き下げて、ドル安に誘導し、輸出主導で景気拡大を図る戦略を意図したいたから、短期的には予想外の展開となった。
(6)一方、グリーンスパン前FRB議長は11日付け英フィナンシャルタイムズ紙で米国と中国の通貨安政策を批判した。両大国の通貨政策は他国の不利益を招き、通貨安競争を誘発すると警告したのである。
(7)また、ドル札の際限ない大増発は、世界通貨であるドルの信任を揺るがすリスクをはらんでいることをちらりと感じさせた。

(三)資産インフレが進行する。

(1)しかし、米国の超ジャブジャブ金融は今始まったばかりである。ジャブジャブの過剰流動性供給はこれから5ヶ月にわたって積み上がるから、早晩金融市場からあふれ出て、株式市場、商品市場、不動産市場に流入し、資産インフレを誘発すると考えておくべきだろう。
(2)現に世界の金融市場を見渡せば、株式はもちろん石油、貴金属、非鉄、穀物等の商品相場が全面的に急騰した。
(3)一方、新興国では通貨高とインフレ懸念が台頭し、米国の行き過ぎたジャブジャブ金融に対する批判が表面化した。

(四)円安で日本にフォローの風が吹く。

(1)先週、日本と韓国で相次いだ国際会議で米国、中国の通貨安政策に批判が集まり、為替介入回避への合意が図られた。
(2)円高から円安へ、基調逆転の気配を受けて、早くも東京市場で外国人買いが復活した。日本株独歩安の修正局面が続く可能性がある。
(3)1ドル80円で下期の利益を予想した輸出関連企業には増額修正の期待が広がるだろう。
(4)海外の複数の不動産ファンドが日本進出を狙っているという情報もある。
(5)急速な円高に歯止めがかかれば、日本国内の設備投資が回復し、景気好転、デフレ脱却への期待が広がる。エコノミスト、マスコミの間で蔓延している自虐的弱気論にも変化の兆候が見える。
(6)11月の最初の2週間にニューヨーク市場では強気局面と弱気局面が交互に現れたが、東京市場では円安と株高が進行した。
(7)円相場の割高と日本株の割安は周知の事実である。周知の事実はすでに株価が折り込んだ。私は久々に日本の金融市場に逆風から順風へ、基調を逆転させる風が吹くと思う。