2010/10/4

  2010年10月4日(月)
  底入れ、反騰、鮮明の日本ケミカル。

(一)チャートは底入れが鮮明。

JCR

(1)株価は9月27日から10月1日までの5日間に158円の急騰を演じた。底値脱出の軌跡が鮮明である。
(2)先週は出来高もまた連日10万〜20万株と急増した。浮動株が100万株程度と見られる小型株としては、何らかの材料が表面化したかと感じさせた。
(3)もちろん、日本ケミカル(以下JCR)が開発し、5月27日に発売した超大型新薬エポエチンアルファが近い将来、業績と株価に革命的な変化をもたらすことは確実に予想できた。次項で潜在的な材料の大きさを確認しておきたい。

(二)日本の株式史上空前の変化率を予想。

(1)私はJCRが、日本の株式史上空前の変化率を実現するだろうと述べてきた。最大の根拠は6月の株主総会における「エポエチンアルファで市場シェア20%を目指している」という芦田会長の発言にある。
(2)エポエチンアルファは人工透析患者の90%が必要とする腎性貧血治療薬である。その市場規模は国内1,100億円、欧米1兆円で、年率10%のペースで拡大しており、高度医療時代を迎えた中国が新たに巨大市場に急成長すると予想される。
(3)国内、海外とも2社が独占する巨大市場に、5月27日から第3のバイオ新薬・エポエチンアルファを開発したJCRが参入した。
(4)内外1.1兆円の市場で、JCRが来期(2012年3月期)に20%の市場シェアを取得すれば、エポエチンアルファの年間売上高は2,200億円となり、JCRの売上高(前期144億円)は15倍に激増する。
(5)来期の市場シェアが目標の半分の10%に止まったとしても、JCRの売上高は7倍以上に激増し、日本の株式史上空前の変化率を記録することになる。
(6)さらに芦田会長は株主総会で粗利30%を確保できると発言されたから、来期の営業利益は数百億円規模となる。
(7)これらの数字はあくまでも予想に過ぎないが、次項の通り、実現可能を裏付ける客観的な事実がある。

(三)製薬世界第3位の英グラクソが筆頭大株主に。

(1)JCRは6月の株主総会で新任取締役2名を選出した。2名は共にグラクソ・スミスクライン(以下グラクソ)が派遣したマーク・デュノワイエ会長と杉本俊二郎氏である。
(2)グラクソは5月に3度目の株式取得で25%の筆頭大株主に急浮上したが、その取得株価は1,310円であった。
(3)グラクソは昨年来、エポエチンアルファの海外販売権取得に十数億円を拠出し、今後もマイルストン条項に従って、売上高の一定比率を支払う。またグラクソはJCRとの間で新薬の開発を含む全面的な提携関係を結んだ。
(4)株主総会では、グラクソがさらに持ち株を増やすのではないかという質問に対して芦田会長は発行株式数の3分の1までの買い増しを許容していると回答。
(5)売上高2.2兆円、世界第3位の巨大製薬会社グラクソが、電光石火、売上高144億円、大証第2部のJCRを事実上傘下に入れた経過を見れば、エポエチンアルファに対する評価と期待の大きさを明快に証明したと言える。

(四)1,300円以下は下げ過ぎ。

(1)JCRは6月の株主総会で幹部社員に対するストックオプションを決議したが、その株価は1,371円であった。
(2)グラクソが取得した株価1,310円とあわせて、JCRは6月の株主総会当時には1,300円台を底値と見ていたと推定される。
(3)JCRは直近の業績予想でも今期の売上高を前期並みの144億円、エポエチンアルファの今期売上高をゼロとしているが、確定するまではゼロだとする決算手法を一貫している。四季報予想から会社の未来は何も見えないから、株主総会における会長の本音の発言を重視するべきだろう。
(4)先にJCRに15%を出資して国内の販売権を取得したキッセイ薬品は、5月27日に販売を開始したばかりで、具体的な数値が見えるのは10月以降だろう。
(5)グラクソが販売権を取得した海外市場は、米国の販売開始が2年先となる。欧州では国ごとに認可申請を行っており、本格販売は来年になるだろう。
(6)販売遅延の理由の一つは生産体制の遅れにある。神戸第1工場は直近になって軌道に乗った。神戸第2工場が本格操業に入る12月には万全の供給体制が確立する。
(7)以上はJCRから得た情報であるが、株価は販売状況の変化を先見し始めたように見える。

(五)株価は底値を形成した。

(1)新薬の販売情報が途絶した中で、信用取引の高値期日を迎えた株価は8〜9月に予想外の急落を演じた。
(2)6月の株主総会で株主を興奮させた芦田会長の超強気の発言に照らして、9月6日付けクラブ9で私は「株価急落は自社株買いの好機だ」と提案した。
(3)第1に、前期の好決算でキャッシュポジションが大幅に改善した。第2に、ストックオプションの株価を先に1,371円と決定したが、自社株買いによって高すぎた取得価格を1,000円以下に引き下げることができる。第3に、自社株買いで取得した株式をグラクソに対する安定工作に援用することもできる。第4に、JCRは設備投資が一巡し、新たな大型の投資計画がない。第5に、自社株買いによってJCRが受ける損失は皆無である。第6に、自社株買いはいかなる法令にも違反しない。第7に、世界中で自社株買いが急増している。
(4)サラリーマン社長ならともかく、オーナーで大株主の芦田会長はつい先頃の株主総会で新薬に対する満々たる自信を熱く語られたばかりである。なぜ自社株買いを拒否されたかが私には謎である。

(六)株価はこれからどうなるか。

(1)クラブ9の推奨銘柄は基本的に材料株、利益成長株である。雄大な利益成長株はざらには出現しないから、私の推奨銘柄は少なく、その代わりに長期間追跡する。
(2)一昨年に推奨した富山化学は富士フイルムが買収し、昨年来推奨してきた三洋電機もパナソニックが完全買収に踏みきった。富士フイルムとパナソニックは有望成長企業の買収をテコとして、新たな成長基盤を構築している。両社を別の機会に取り上げたい。
(3)JCRもまたグラクソの傘下に入って超高度成長期を迎えるだろう。
(4)7月26日付けクラブ9で、私はグラクソのマーク・デュノワイエ会長から頂いた「株主へのメッセージ」を掲載した。世界第3位の巨大製薬会社の会長がクラブ9の質問に丁寧に答えた上で、グラクソの販売力を信頼して下さいと結んであった。
(5)私は、2012年3月期の決算発表まで持続すれば、株価数倍の大化けが期待できると思う。