2010/7/26

  2010年7月26日(月)

グラクソ・スミスクライン会長・日本ケミカルの新任取締役
マーク・デュノワイエ氏から

クラブ9 山本清治に手紙
(一)私の質問。

(1)GSK(グラクソ・スミスクライン)は売上高3.4兆円、世界第3位の巨大製薬会社である。これに対して日本ケミカルは売上高144億円、大証2部上場企業で、両社の売上高格差は236倍に達する。
(2)GSKはこれまでに日本ケミカルの株式25%を取得し、筆頭大株主となったが、なお3分の1まで持ち株を増やすという合意がある。
(3)GSKはこれまでにエリスロポエチンの販売権取得に推定10億円以上を投入している。
(4)両社は新薬の開発、販売を含むすべての業務で全面的包括提携の契約を結んだ。
(5)さらに今回、GSK・デュノワイエ会長が日本ケミカルの社外取締役に就任した。GSKの杉本氏も社外取締役に就任した。
(6)株主はもちろん、日本の製薬業界は、GSKのデュノワイエ会長が日本ケミカルの取締役に就任して今から何が起こるかに注目している。GSK会長、JCR取締役、マーク・デュノワイエ氏のコメントを承りたい。

(二)デュノワイエ会長からの手紙。

(1)株主の山本清治氏から適切な質問を受けて満足している。JCR(日本ケミカルリサーチ)とGSK(グラクソ・スミスクライン)の将来の可能性の大きさを株主が正確に認識されていることの象徴である。
(2)JCRが優れたバイオ技術を投入して開発した革新的なバイオ医薬品を、GSKはGSKの販売網を通して世界中の患者様にお届けする。
(3)GSKは現在JCRが開発中の酵素補充療法を共同で開発し、世界中で販売する。酵素補充療法は希少疾病を治療するための医薬品である。(注1)。
(4)両社の提携によって、より多くの国の患者様がその治療法を利用し、GSKの使命である<未だ満たされていない医療上の必要性>に解決策を提供できると期待している。
(5)GSKは最近、世界的な希少疾病のための事業部を立ち上げ、私自身がその先頭に立っている。
(6)JCRはバイオ技術分野におけるバイオ医薬品の精製と無血清細胞培養の双方で広範囲の経験と技術を蓄積している。これらの技術を組み合わせることによって、高品質、高収益の製品を生産することが可能となる。(注2)。
(7)GSKはJCRの潜在的な可能性を最大限に引き出して、日本で製造するバイオ医薬品が世界中で認められることを目指す。
(8)GSKの世界的な開発と販売のネットワークを通して、患者様はより容易に高品質なバイオ医薬品を手に入れることができる。両社の提携は患者様にとっても大きな利点となる。

 注1. JCRは現在希少疾病治療薬でライソゾーム、ハンターファブリー、ゴーシエの3品目を開発中である。
 注2. 腎性貧血治療薬・エポエチンアルファはJCRの高度なバイオ技術によって開発された。

(三)私見と感想・ジェネリックからバイオシミラーへ。

(1)大型医薬品が集中的に特許期限切れを迎える2010年問題に直面して、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の開発が製薬業界の目標となった。厚労省も薬価財政を抑制する必要性からジェネリックを支援してきた。
(2)しかし、めぼしいジェネリック医薬品の開発が一巡すると、ジェネリック市場は早くも成熟期に入った。
(3)現在、製薬業界は新たな目標であるバイオシミラーの開発競争に入っている。「バイオシミラー」は数年後に特許切れが集中するバイオ医薬品の後発薬である。
(4)しかしバイオシミラーは先発薬と同様に厚労省から臨床試験データの提出を求められるから、多大の資金力と永い開発期間と高度のバイオ技術が必要である。
(5)特に人工透析患者の90%が必要としている腎性貧血治療薬は国内1,100億円、海外1兆円の超巨大市場で、新たに中国市場が急拡大期を迎えた。その内外の巨大市場を2社が寡占しているから、製薬会社の開発競争が激しい。
(6)その競争に勝って日本ケミカルがエポエチンアルファの開発に成功し、バイオシミラーの第1号として厚労省の製造販売の認可を取得した。
(7)売上高144億円の日本ケミカルにとって世界市場はあまりにも巨大であるが、世界最強の助っ人が現れた。グラクソ・スミスクラインのデュノワイエ会長は技術者としてエポエチンアルファの技術的優位を評価して販売権を取得したばかりか、株式取得を含む全面的な包括提携契約を結んだ。
(8)私はデュノワイエ会長の手紙から、グラクソの販売力に対する強い自信と意気込みを感じた。世界屈指の巨大企業の会長が自ら私の質問にご返事をいただいたことに感謝申し上げたい。