(1)前回に私はセリングクライマックスを示す条件が成熟していると述べた。そして今回はセリングクライマックスに達した可能性が高いと感じている。前回と併せてごらんいただきたい。
(2)株式市場には「弱気論者が理路整然と弱気の理由を述べるようになれば相場は底入れする」という格言がある。今やギリシャはもちろん、スペインやポルトガルの財政赤字は周知の事実となった。赤字国の財政再建案と赤字国に対するECとIMFの支援態勢も鮮明となった。どんな大材料でも、周知の情報は相場が折り込んでしまっている。
(3)リーマンショック時にはどの銀行とどのヘッジファンドが、どれくらいの不良債権を抱えているかが全くわからなかったから、恐怖心と不信感が世界の金融市場をおおっていたが、今回は問題点の所在と対応策が明快である。
(4)一方、景気と企業業績は世界的に回復が鮮明となっている。主要国の中央銀行はそろって過剰流動性を供給しているから、ユーロや株式や国債を売って換金しても新たな投資先を見つけるのは難しい。
(5)先週、中国政府が備蓄したユーロを売るという情報が流れてユーロと株式が連鎖して急落したが、翌日には虚報とわかった。それもそのはずで、中国は輸出で稼いだ外貨をドルとユーロで運用する以外に選択肢がない。
(6)ヘッジファンドのユーロ売り、国債売り、株式売りは、現在までは増勢一途であるが、各国政府が空売り規制で協調しつつある。ちなみに欧米で問題となっている空売りは日本の信用取引の空売りとは全く別で、ヘッジファンドが現物の裏付けなしに売り崩すきわめて投機的行為を指している。
(7)ゴールドマン・サックスを初めとする投資銀行は金融規制法案成立を受けて米政府との妥協点を探っており、投資銀行傘下のヘッジファンドが空売りの買い戻しに転じる時期は近いだろう。
(8)私は株価が底値圏に達したことを示す条件が一段と成熟したと思う。