2010/5/24

  2010年5月24日(月)

(一)相場観。セリングクライマックスを形成か。

(1)ギリシャ問題に発した、国債売り、ユーロ売り、株式売りは、世界の金融市場全体から見ればヘッジファンドと欧米政府の全面的対決の様相を深めている。
(2)ヘッジファンドの奇襲売りに敗退を重ねたECはギリシャ国債を買い支え、空売り規制を強化し、過剰流動性を供給し、国際的な協調態勢を強化している。
(3)ECの金融市場の混乱を受けて、先週末には米上院で難航していたオバマ政権の金融改革法案が逆転成立した。自由な金融市場への政治的介入に強硬に反対していた投資銀行と共和党も規制止むなしで譲歩した。直後の20日には規制強化を嫌ったヘッジファンドの空売りでニューヨークダウが急落したが、翌21日には反発に転じた。
(4)マスコミ報道は弱気論一色であるが、私はヘッジファンドが深追いしすぎの段階に入ったと思う。ヘッジファンドは国債売り、ユーロ売り、株式売りで連戦連勝しているが、空売りも積み上がっている。利益を確定するためには空売りを買い戻さなくてはならない。そのとき売り手と買い手の資金量が大逆転し、急騰局面に転じるのは相場の常である。
(5)金融市場の混乱をよそに、経済的環境は景気、業績とも着実に改善している。日本企業の在庫は記録的な低水準にあり、キャッシュフローも潤沢で、業績が悪化する懸念が乏しい。米欧日の中央銀行は出口戦略を棚上げして過剰流動性を積み増している。金融改革法案が成立した米国は腰を据えてECの規制強化を支援するだろう。ガイトナー米財務長官は先週末中国を訪問し、元切り上げ時期の先延ばしを容認した。元切り上げに伴う中国の景気悪化懸念は後退する。形勢逆転の条件は成熟しつつある。
(6)急落局面の中でも、ソニーとグーグルの提携、トヨタと米ステラの提携、中国資本によるレナウン買収など、好材料が飛び出している。以下に私がこれまでに取り上げた小型株の好材料を補足しておきたい。

(二)野村マイクロ・今期業績を大幅増額修正か。

(1)5月18日付日経は、韓国サムスンが2010年に過去最大となる2.1兆円の設備投資を、半導体メモリーと液晶パネルに集中して断行すると報じた。
(2)野村マイクロは韓国のサムソン向けに半導体と液晶の生産に必要な超純水製造装置を一手に納入してきた。前期は主要取引先である韓国、台湾企業の設備投資が激減して大幅赤字に転落したが、5月14日の決算発表では今期の1株当たり予想利益を上期43円、通期63円と発表した。
(3)しかしサムスンの超大型設備投資から推定すれば、通期の1株利益は63円を大幅に上回る可能性が高い。突っ込みは買いの好機だろう。

(三)日本ケミカルと提携を強化したグラクソの目標。

(1)製薬世界第3位のグラクソ・スミスクラインは5月18日、日本ケミカルの株式308万株を1株1,310円で取得した。保有株式は25%に増加してダントツの筆頭株主となった。アルファJCRの販売権取得にも十数億円を投入しており、6月の株主総会ではデュノワイエ会長自ら日本ケミカルの取締役に就任する。日本ケミカルの250倍の売上高を持つグラクソが買収も辞さないほど急接近したのは新薬で1,000億円単位の新市場を見込んでいるからだろう。中でも最大の目標は高度医療時代に踏み出した中国市場の開拓である。
(2)世界の人工透析患者数は180万人でうち日本人が30万人である。人工透析患者の90%が副作用のために腎性貧血治療薬を必要とし、その市場規模は国内1,100億円、海外1兆円の巨大市場である。
(3)中国では人工透析治療が始まったばかりで患者数は10万人であるが、潜在患者数は150万人と推定される。2011年に医療保険加入者が90%に達すのに対応して大学の医学部では1学年2万人の医者を養成している。
(4)中国市場の急成長に対応して人口透析機のトップメーカー日機装は中国最大の医療機器メーカー威高集団と合弁会社を設立し、現地生産を開始する。世界の市場を視野に収めているグラクソが中国市場に注目したのは当然だろう。
(5)一方、キッセイ薬品と日本ケミカルは前期の決算発表で今期のアルファJCRの寄与をそれぞれ25億円、15億円と発表した。過小ではないかという質問に対して両社は発売が始まらない時点で予想数字を出すのは難しいと答えている。
(6)私は第1に、6月の日本ケミカルの株主総会で取締役に就任するグラクソのデュノワイエ会長のコメントに注目したい。第2に、9月中間決算におけるキッセイ薬品の売上高推移に注目したい。