2009/8/24

  2009年8月24日(月)
  I. 三洋電機、シティ、AIGの日足。
  II. 三洋電機。
  III. 相場観。

 I. 三洋電機、シティ、AIGの日足。

三洋 シティ AIG

(1)三洋電機は電池で世界1,シティグループは銀行で世界1、AIGは保険で世界1である。
(2)世界1の日米3銘柄はクラブ9の長期推奨銘柄であるが、奇しくも先週、同時に大きく上放れた。
(3)クラブ9は毎週のように、三洋電機こそ21世紀前半を代表する世界的成長株であると主張して来た。今週も最新情報を次項にまとめた。
(4)株価と平行してシティとAIGを窮地に追い込んだ「証券化商品」や「CDS」の相場も急回復しており、両社がこれまでに計上した巨額の不良債権は次々に優良債券に逆転する。AIGは先週、政府資金を返済すると発表した。シティの返済も近いだろう。8月3日付クラブ9を参照されたい。

 II. 三洋電機。
(一)トヨタが三洋から電池を調達。

(1)8月19日付け日経は1面トップで以下のように報道した。その内容はこれまでのクラブ9の推論と主張の正しさを証明している。
(2)トヨタは三洋電機からリチウムイオン電池を購入する。初年度は1万台を新型ミニバンタイプのハイブリッドカーに搭載し、順次生産を拡大する。
(3)トヨタは製品ラインを家庭で充電できるプラグインタイプのハイブリッドカーや電気自動車に広げる。
(4)トヨタはすでに三洋電機製品の技術評価を済ませており、これから共同で車両への組み込みを含めた量産準備に入る。
(5)トヨタは2008年にハイブリッドカーの販売で年間43万台を達成。10年代前半に1,000万台を目指す。
(6)パナソニックと共同で設立したパナソニックEVエナジーは現在の年産70万台体制を100万台体制に増やす。

(二)トヨタは基幹部品を2社調達体制に。

(1)トヨタは今後、パナソニックに次いで三洋電気を調達先に加える。部品の2社調達は製造業の常識である。2社調達の目的は、
 第1に、下請け工場の不測のトラブル発生に備える。
 第2に、2社を競争させて価格引き下げを狙う。
(2)他の自動車会社も、本格生産に入れば必ず2社調達体制を敷く。その場合、1社は三洋電機となるだろう。その理由は、
 第1に、9月にパナソニックによる三洋電機TOBが完了すれば、世界の電池メーカーの1位と2位連合が成立し、三洋電機は技術力と資本力で競合他社を圧倒する。
 第2に、三洋電機はニッケル水素電池とリチウムイオン電池の双方で、世界ダントツの生産体制を構築したから、大量生産によるコスト競争力が世界1である。
(3)ちなみに三洋電機はリチウムイオン電池でも、徳島で年産2万台、兵庫で年産10万台の設備を構築し、兵庫第2,兵庫第3の新工場建設に踏み切る準備を整えている。
(4)三洋電機は2011年3月までに2,900億円に達する超大型の設備投資計画を発表し、主力行から2,000億円のコミットメントライン(いつでも使用可能な融資枠)を取得している。

(三)絶対優位の三洋電機。

(1)三洋電機はすでにトヨタ、ホンダ、フォルクスワーゲン、フォードの大手4社と電池の供給契約を締結している。
(2)ニッケル水素電池ではパナソニックと三洋電気を合わせた市場シェアは100%に近い。リチウムイオン電池ではNEC、日立、GM等が大量生産を表明しているが何れも計画段階で、事実上三洋電機が独走態勢を固めている。
(3)例えば三菱自動車のアイミーブは400万円の製造原価のうち電池が250万円を占めている。自動車会社は安価で高性能の電池を持たなければ勝負にならないから、2社調達体制で三洋電機を取り込む必要がある。
(4)自動車会社は開発段階から電池の車体への組み込みを共同で進めているから、私は三洋電気製品の仕様が世界の電気自動車のスタンダードとなると思う。
(5)三洋電機の本間副社長が2020年に電気自動車用電池の世界シェア40%を目指すと述べた背景には、自動車各社との共同作業が進行していると推定される。10年後の2020年には本格的な電気自動車時代が始まると予想されるだけに、世界シェア40%は高い目標であるが、三洋電機としては控えめな数値だろう。

(四)TOB成立後の三洋電機。

(1)トヨタが先週、三洋電機との水面下の提携関係を明らかにしたのは、パナソニックが独禁法問題を解決したからではないかと私は感じた。トヨタは当初から電池業界1位の三洋電機と2位のパナソニックを両輪としてきたが、独禁法問題に配慮して三洋電機の名前を伏せていたと思われる。
(2)予定通り9月にTOBが成立すれば、三洋電機の本間副社長は独禁法に気兼ねすることなく、事業展開の実情を開示するだろう。
(3)パナソニックの大坪社長は、電池はもちろん太陽光発電等についても新規の開発計画を明らかにするだろう。三洋電機の2,900億円に上る設備投資計画の背後にはパナソニックとトヨタの後ろ盾があるだろう。
(4)私は三洋電機を電気自動車時代の大本命と確信し、21世紀前半を代表する成長株だと主張して来た。TOBが成立すれば、水面下の実体が表面化し、三洋電機の圧倒的優位が鮮明になるだろう。
(5)電池関連というだけで株価が乱舞している銘柄群に比べれば、三洋電機はいま土俵入りを果たしたところである。先週は後半の3日間で出来高4億株を記録した。ここから横綱相撲を見せると私は思う。

(五)空気清浄装置に注文殺到。

(1)先週19日に三洋電機と群馬県衛生環境研究所は、三洋電機の空気清浄機に採用している電解水技術「ウイルスウォッシャー」がウイルスの感染力を99%以上除去する効果があることを確認したと発表した。実験では新型インフルエンザを患者から採取、培養したウイルスを電気分解した水に10分間接触させ、感染力の変化を計測した。
(2)各紙一斉の報道を受けて、三洋電機の空気清浄機と加湿器の店頭在庫は即座に消滅した。9月発売予定の新製品も量販店向けに完売したという。
(3)太陽光発電、電池に続いて、第3の人気商品に恵まれた三洋電機にフォローの風が吹いて来た。

 III. 相場観。

(1)先週の繰り返しになるが、現在の相場は「不景気の株高」或いは「金融相場」であって、「業績相場」ではないと私は思う。
(2)銀行貸し出しはまだ伸びていない。政府と中央銀行が放出した巨額の過剰流動性は金融市場に滞留し、主として株式市場と国債市場の間を往来している。
(3)マネーが銀行から産業界に流れるのは7〜9月の好決算が報道される10〜11月頃だろう。実体経済の好転を確認してエコノミストが総強気に傾いた時、逆にマネーの一部が株式市場から産業界に流出して、一時的に株価下落のリスクが生じる、と私は思う。
(4)もちろん短期間の調整を経て株式相場は金融相場から業績相場に発展するだろう。
(5)上海株に一喜一憂するのは過剰反応だろう。中国は世界で唯一財政の健全性を維持している新興経済大国である。中国政府が株価の急落を放置するとは思えない。