2009/8/3

  2009年8月3日(月)
  I. TOBに目途つけた三洋電機。
  II. シティとAIGの近況。

 I. TOBに目途つけた三洋電機。
(一)TOBに自信示した前田副社長。

(1)三洋電機の前田副社長は7月30日の決算発表で、パナソニックによるTOBについて次のように述べた。
 第1に、独禁法問題は11ヶ国・地域のうち未解決の日本、米国、欧州、中国でも、すでに第4コーナーを回った。解決は近い。
 第2に、TOB価格(1株131円)は三洋電機とパナソニックの合意に基づいて決定した。
 第3に、9月までにTOBを完了する自信がある。
(2)パナソニックの広報も三洋電機前田副社長のコメントに同意している。

(二)三洋電機の株価。

(1)4〜6月決算は予想を上回った。通期予想は不測の変化もありうるとして据え置いたが、7月にはほぼ全部門が黒字転換しており、増額修正の可能性がきわめて高い。
(2)7月の株価急落は、TOB成立への疑問が原因の一つと思われる。
 第1に、独禁法問題の解決が困難でTOBは不発となる、というウワサが広がった。
 第2に、時価から大幅にかい離した131円でのTOBにゴールドマン・サックスが難色を示している、というウワサが広がった。
 第3に、これらのウワサは昨年末に表明したTOBの発動が遅れに遅れた結果として浮上した。
(3)しかし前田副社長の談話によればTOBは9月までに成立するから、開始は8月となる可能性が高い。
(4)私は、第1にTOBが正式に始まった時、第2にTOBが成立した時、株価をめぐるすべてのもやもやが吹っ切れると思う。

(三)TOBの悪材料と好材料。

(1)最大のマイナス材料は、優先株が普通株に転換することによって発行株式数が4倍に激増し、1株当たりの資産や利益が薄くなる点だろう。
(2)しかし増加する株式の大半はパナソニックが保有するから、株式市場の需給関係は変わらない。
(3)TOBが成立すれば、パナソニックと三洋電機の共同プロジェクトが続々と開示される。パナソニックは社運をかけて1兆円の超大型投資を断行するのだから、新規の共同プロジェクトも超大型となり、驚きを誘うだろう。
(4)TOBによって乾電池業界の1位と2位の大連合が実現する。今後の開発力、技術力、資本力で圧倒的な競争力を確立するだろう。
(5)パナソニックは太陽光発電を持たなかったから、今後は住宅や自動車の車体等に新たな用途を開発するだろう。
(6)18〜19世紀に英国は蒸気機関を発明して産業革命を起こし、世界を制覇した。20世紀に米国はT型フォードを開発して大量生産システムを構築し、世界を制覇した。21世紀は電気自動車の開発が国家と企業の最大の争点となる。
(7)パナソニックによる三洋電機TOBの行方に注目したい。

 II. シティとAIGの近況。
(一)シティグループ。

(1)シティグループは2四半期連続で好決算を発表したにもかかわらず、株価が低迷していた。
(2)第1の理由は新たな不良債権の増加懸念であるが、先週、カードローン大手のアメックス、マスターカードと消費者金融最大手のGEが相次いで好決算を発表し、株価が急騰した。同業の業績好調を見てシティの不良債権の増加懸念は後退するだろう。
(3)第2の理由は保有する証券化商品の評価損の拡大懸念であるが、この点については悪材料が好材料に逆転する可能性がある。
(4)すなわち、米国政府は大手銀行が保有する証券化商品の買い上げに100兆円の資金を準備していたが、今では応募金額が4兆円に満たないと推定されており、買い上げ構想自体が消滅する可能性がある。自己資本を充実した大手銀行が期日まで保有して償還金を受け取った方が得だと考えているからである。
(5)これらの状況変化を受けて、直近のシティの株価は上昇に転じた。株価は2番底を確認したのではないか。

(二)AIG。

(1)先週日本の大手銀行3社が4〜6月期の決算を発表した。意外にも企業倒産のリスクをヘッジするために買っていたCDSが評価益から評価損に逆転し、三井住友は100億円、三菱UFJは200億円、みずほに至っては600億円の評価損を計上した。
(2)リーマン・ブラザーズの倒産直後にCDS指数が暴騰して大手3行は前期に評価益を計上したが、4〜6月にはCDS指数がピークの半値以下に反落し、評価益の半分が評価損に逆転したのである。
(3)AIGは世界1の保険会社であるが、「CDS」売りの最大手であったから、昨年末には評価損が激増し、米国政府の支援を受けてようやく窮地を脱した。
(4)しかしCDS指数が半値以下に反落すれば、日本の大手3行とは反対に評価損が半分以下に縮小する。
(5)私の判断が間違いでなければ、株価の回復が期待できる。

(三)負け犬の思想を排する。

(1)シティグループは世界1の銀行、AIGは世界1の保険会社である。金融市場の大混乱に直面して両社は昨年巨額の評価損を計上し、国家の救済を仰いだ。しかし金融市場が安定し、株価が上昇すれば、評価損は順次評価益に大逆転する。
(2)8月1日にNHKテレビは「NHKスペシャル・金融工学はなぜ暴走したか」でCDS指数の大暴落を特集した。しかし現実にはNHKの特集は時代遅れで、金融恐慌の不安は消滅し、CDS指数は急回復しており、シティとAIGは政府の救済資金を返済する準備に入った。
(3)金融市場の変化はNHKが追いつけないほど速い。昨日までエコノミストが大合唱していた金融市場崩壊論は昔話となり、今や世界中の株式市場が景気回復期待をはやして戻り高値を次々に更新している。
(4)NHKが報道したとおり、行き過ぎた金融工学が金融市場を破たんの瀬戸際に追い込んだのは事実である。中でも最先端の金融工学を駆使して新型金融商品を開発し、ヘッジファンドや金融機関に売りまくったゴールドマン・サックスは昨年、巨額の赤字を計上してFRBの救済融資を仰いだが、すでに融資資金を全額返済したばかりか、4〜6月決算では史上最高益を更新した。
(5)金融工学は金融市場を破たんの危機に陥れたが、私が再三予測したように、危機に陥った金融市場を救済するのもまた金融工学である。先端技術を追求する人類の英知は止まることを知らない。
(6)私はいかなる局面でも、負け犬の思想に組みしない。

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