2009/4/13

  2009年4月13日(月)
  金融不況脱出の指標・シティとAIG。
  不景気の株高は本格反騰の突破口。

(一)金融不況脱出の指標・シティとAIG。

<チャート1>
シティ
<チャート2>
AIG

(1)今回の世界的株価大暴落は金融市場の破たんから始まった。中でも最大の暴落銘柄はシティグループとAIGであった。
(2)世界最大の銀行であるシティグループは60兆円に達する証券化商品を保有し、60兆円の保有商品が暴落したために株価は5,000円台から100円まで。50分の1にたたき売られた。
(3)AIGは世界1の保険会社であるが、新規事業のCDS(先週のクラブ9参照)の保証料の負担が激増し、倒産の危機に追い込まれた。株価は7,000円台から36円まで、実に200分の1に大暴落した。
(4)両社は共に米政府とFRBの支援を受けてかろうじて命脈を保っていたが、3月初旬に株価がようやく底値圏からはい上がり、先週末には両社を倒産の瀬戸際に追いつめた悪材料が解消に向かう徴候を折り込んだ。
(5)シティは1〜3月決算の黒字期待に加えて時価会計基準の緩和が決定し、保有証券の評価損が評価益に逆転する可能性が濃厚になった。
(6)4月10日付日経によれば、AIGを追いつめたCDSの保証料が2月の底値から40%も急回復した。
(7)両社は借り株を用いた組織的な売り崩しによって大暴落し、大暴落が倒産説を沸騰させた。米国の証券取引委員会は、「借り株を用いた売りたたき」を禁止するカラ売り規制に乗り出す方針を固めた。実施されれば需給面から株価の反騰を支援するだろう。
(8)両社を倒産の瀬戸際に追い込んだ悪材料が縮小するにつれて、株価は高値奪回を目指すだろう。ちなみに昨年の高値は、シティ 3,250円、AIG 6,500円である。また第1四半期の決算発表はシティ 4月17日、AIG 5月8日である。
(9)もちろんリスクはある。4月12日付日経ヴェリタスは「政府の管理下にあるシティは第1四半期も赤字を予想する向きが多い」と報じている。評価損益の修整が、4−6月期に繰り延べされる可能性もある。
(10)私の強気は少数意見であるが、少数意見であればあるほど的中した場合のインパクトが大きい。2銘柄は暴落局面の指標となったが、反騰局面でも指標株となるだろう。

(二)「不景気の株高」は本格反騰の突破口。

(1)私は「不景気の株高」が始まるのは時間の問題だと予想してきた。景気が悪くても、業績が不振でも、主要国の政府と中央銀行が結束して財政投融資を急拡大し、金融をジャブジャブに緩和すれば株価が高騰する。これが「不景気の株高」である。
(2)しかしIMFは先週、金融機関の不良債権をまたしても400兆円に増額した。エコノミストは、来年はもっと不況になると大合唱している。悲観論者は「景気と業績が回復しないのに株価が回復するはずがない」から、今回の株価急騰は中間反騰に過ぎないと主張する。
(3)そんな時に与謝野大臣は「私は財政均衡論者であるが、現在は非常事態である」と宣言し、誰も予想しなかった超大型の景気刺激策をまとめた。
(4)小泉政権下で辣腕を振るった竹中大臣の陰湿で高圧的な政治手法と比べれば、与謝野大臣の政治手法には、市場重視、誠実さ、明るさ、暖かさが感じられる。特に竹中大臣は株式と不動産の即時売却を強制して株価と地価を大暴落させたが、与謝野大臣は50兆円に達する超大型の株価対策、地価対策を準備した。
(5)麻生首相は最高、最強の参謀に恵まれて、15兆円の補正予算と最大56兆円の景気下支え策を提示し、国民とエコノミストとマスコミのど肝を抜いた。
(6)私は再三、民主党の小沢代表は政権奪取を叫ぶばかりで、政権を取って何をするかという肝心の構想が見えないと指摘したが、果たして麻生・与謝野政権の活気あふれる構想力の前に存在感を失った。
(7)私は、麻生政権やオバマ政権の巨大化一途の景気対策こそ「不景気の株高」の最大の特徴だと思う。株価は急騰したが景気と業績は最悪状況にあえいでいるから、政府は株高を追い風に、猛然と景気刺激策を打ち出す。米国でも民間企業に対する政府支援、不良資産の政府買い上げ、減税等で100兆円単位の財政資金を今から本格的に支出する。
(8)私は「不景気の株高」は本格反騰に発展すると思うが、弱気論者は「中間反騰」に過ぎないと見て売り向かうから、日証金の貸借倍率は前例のない売り越しが続き、逆日歩銘柄が続出している。
(9)需給面から見てもカラ売りが株価を下支えする傾向が続くだろう。これも「不景気の株高」の特徴である。