2008/8/8

  2008年8月8日(金)
  石油買い・株式売りから、石油売り・株式買いへ。
  相場観。
  富士フイルム(富山化学)の近況。

(一)チャート1。ニューヨークダウとニューヨーク石油の日足。

(1)チャートを見れば「石油買い・株式売り」から「株式買い・石油売り」へ、大逆転が鮮明である。
(2)石油相場はヘッジファンドの投機的買いで急騰し、投機が極まって急落した。
(3)ヘッジファンドを支えていた年金が、資金を引き揚げた。
(4)世界中でガソリンの需要が減少した。
(5)石油相場の暴落は穀物、非鉄、貴金属のすべての商品相場に波及し、シカゴ商品指数はまれに見る急落を演じた。
(6)欧米と日本では景気後退論が盛んだが、景気が後退すれば石油の需要が落ちる。
(7)短期的な巻き戻しがあっても、石油売り・株式買いの中期的なトレンドは変わらないだろう。

(二)チャート2。シティグループとトール・ブラザーズの日足。

(1)シティバンクは世界1の銀行である。トール・ブラザーズは全米1の住宅会社である。
(2)シティグループとトール・ブラザーズの株価はニューヨークダウの暴落を尻目に、抵抗力を示している。
(3)2銘柄は金融不況と住宅市場の底入れが近いことを先見している。
(4)私の強気の具体的な根拠は7月22日付でも述べているので、参照されたい。

(三)相場観。

(1)エコノミストは統計データを駆使して景気と業績が悪化し、株価が下がると主張するが、統計データは過去の遺物である。
(2)未来は必ずしも過去の延長ではない。景気と業績が悪化すれば優柔不断の福田内閣でさえ景気刺激策を模索し、日銀は金融緩和に転換する。それゆえに「不景気の株高」が出現するのである。
(3)7月に、ブッシュ大統領はポールソン財務大臣と議会が提出していた一連の金融不況対策に、一挙にサインした。「国民の血税を安易に使えない」という主張をひるがえしたのは、大統領選挙を控えて株高政策の採用を決断したためだろう。私はブッシュ大統領の決断を見て、ニューヨークダウの底入れが近いと思った。
(4)アメリカの政治は躍動している。オイルマネーがアメリカの株式と不動産を買い始めたという情報がある。

(四)富士フィルム(富山化学)の近況。
(一)鳥インフルエンザ特効薬(T-705)。

(1)富山化学は8月中旬に上場廃止となる。以下は富山化学と関係者に取材した。
(2)鳥インフルエンザ特効薬 T-705 は、日米でフェーズ2が同時に進行中。追加データの検証が終われば、欧米の製薬会社にライセンスを導出する。
(3)富士フイルムは富山化学を買収した時、今後はライセンスを導出しないと言明したが、パンデミック(世界的大流行)となれば T-705 を世界に供給する責任があり、導出やむなしとなった。
(4)現在はフェーズ2であるが、T-705 の新工場建設を決断した模様。
(5)新工場では日本とアジア向けに生産し、欧米には生産のみを委託して販売権を残すという意見もある。

(二)アルツハイマー治療薬(T-817MA)。

(1)アメリカでフェーズ2が進行中。現在まで、副作用の情報はない。
(2)アルツハイマーの進行を止める薬はあるが、治療薬はまだない。
(3)もし開発に成功すれば、巨大市場が期待できる。

(三)抗リュウマチ剤(T-5224)。

(1)世界初のリュウマチの根本治療薬。
(2)スイスのロシュ社へライセンスを導出した。
(3)特にヨーロッパの白人に患者が多い。現在は不治の病で、関節がボロボロになり、激痛を伴う。
(4)5月にフェーズ2に入った。

(四)抗生物質ジェニナック(T-3811)。

(1)昨年秋に国内で発売した。しかし広告宣伝は市販後に副作用の有無等を確認した上で今秋以降に始まる。
(2)アステラス製薬と大正富山が販売している。
(3)現在は400ミリの注射薬のみであるが、200ミリで十分効果があるという意見もある。
(4)肺炎等の呼吸器系感染症は耐性菌の出現で既存の抗生物質が効かなくなったが、ジェニナックは著効を示している。風邪にも著効がある。
(5)米国、欧州の販売権を導入したシェリングプラウ社の発売時期は未定であるが、経口薬になるという。

(五)私見。

(1)新薬開発に成功する確率はきわめて低い。それゆえ成功すれば大きな利益が約束されている。
(2)私は3年間、富山化学が開発中の主力4薬品を追跡しているが、昨秋にはジェニナックを発売した。残りの3品目もそろってフェーズ2に進んでいる。それだけでも製薬業界では奇跡的な成功である。
(3)特に T-705 と T-817MA は大型で、人類待望の新薬である。
(4)アウトサイダーの富士フイルムが富山化学の買収に踏み切ったのは新薬開発の可能性を評価したからだろう。
(5)リスクを取って持続できる投資家に勧めたい。