2008/7/22

  2008年7月22日(月)

(一)天井を形成した石油、穀物相場。

【チャート1(7/18現在)】

(二)大底を形成した住宅抵当公社。

【チャート2(7/18現在)】

(三)二番底を形成した株式相場。

(1)チャートを見れば一目瞭然、石油と穀物は天井を形成し、住宅抵当公社2社は大底を形成した。
(2)石油の天井形成と金融株の底値形成は一つの相場の表裏である。すなわちインフレの危機の回避と金融危機の回避が同時に実現した。
(3)その経過はほぼ私が予想した通りに進行した。よって私は、ニューヨークダウは2番底を入れたと思う。相場の決定的な転換点を明快に予測し得たことを誇りとしたい。
(4)住宅供給公社2社の格付けはAAAを維持している。その格付けは米国国債と同格で、日本国債よりも高い。またリーマンブラザースはニューヨーク連銀に直接取引の口座を開き、FRBが無制限融資を保証した。倒産するはずがない3社に倒産の風説を流布して株価を暴落させたのは投機筋のおごりである。
(5)年金は石油や穀物の小さな市場になだれ込んで、相場を狂騰させた。資金運用は彼らの本業であるが、人類の日常生活を破壊した年金の罪は重い。
(6)年金が規制を受ける前に、投機が極まって自壊作用を起こした。日経は、金融市場を取り巻く環境は変わらないと主張しているが、私は大いに変わると思う。
 第1に、インフレ懸念が後退する。ガソリン価格は早くも下落に転じた。
 第2に、インフレ懸念が後退すれば、商品市場に逃避していたマネーが株式市場に回帰し、株価が上昇する。
 第3に、株価が上昇すれば、金融不安が後退する。
(7)私は、景気と業績の回復が確認できないのに、株価が上がるはずがないという弱気論にも賛成しない。
 第1に、私は株価を決定する最大の要因は景気や業績よりも需給関係だと思う。後述するように、世界の株式の時価総額の2倍に達する巨大なオイルマネーが株式市場に参入するのは時間の問題である。
 第2に、株価には先見性がある。エコノミストやマスコミが重視する統計データは過去の遺物で、相場には折り込み済みである。投資家は3〜6ヶ月先の景気と業績の予測に勝負を賭ける。

(四)世界の株式の時価総額の2倍に大膨張したオイルマネー。

(1)米国のバロンズ誌は見識の高さと先見性ゆえに、プロの機関投資家にとっても必読の株式情報誌である。そのバロンズが13日付で「オイルマネーの資金量を全世界の上場株式の時価総額の2倍」と試算し、オイルマネーは今買い出動のタイミングを計っていると述べている。
(2)私もオイルマネーと政府系ファンドの動向に注目を怠っていない。オイルマネーの一部が政府系ファンドに流れて、その資金量が昨年500兆円に達した。しかも年率200兆円のハイペースで激増している。オイルマネーと政府系ファンドを併せた資金量は1,000兆円単位の巨額である。
(3)弱気論者は株式の買い手がいないと主張しているが、石油相場が大暴騰している時にオイルマネーを除外して株式の需給関係を予測しても意味がない。

(五)シティバンクの評価損。

(1)シティバンクが赤字決算を発表したが、予想通り織り込み済みとして株価が急騰した。
(2)7月19日付日経は、住宅市況が悪化し、サブプライム破綻が続くから、金融機関の評価損は増え続けると解説しているが、私は7〜9月期にも評価損が評価益に大逆転する可能性があると思う。
(3)第1に、住宅価格は底入れの徴候が点滅している。この点については次項を参照されたい。
(4)第2に、サブプライムの破たん処理は最終段階に入った。遅まきながら米国政府による支援策が決まるだろう。
(5)第3に、サブプライム破綻は住宅ローン、自動車ローン、銀行ローン等で組成した証券の下落を誘発し、モノライン関連の評価損を拡大させた。しかしサブプライム破綻の終息が判明するにつれて、すべての派生証券の相場が底入れし、反騰に転じる。
(6)そのとき評価損は評価益に大逆転するから、最大の評価損を計上したシティバンクは脱金融不況の指標株となるだろう。

(六)底入れした米国の住宅。

(1)米国の住宅市場で注目するべき変化が現れている。第1に、住宅ローンが増勢に転じた。第2に、中古住宅の在庫が急減した。第3に、住宅価格が上昇に転じた。第4に、6月には新規着工件数が増加した。バロンズ誌はこのうち2と3を住宅不況底入れの徴候に上げている。
(2)日本では米国の正常な住宅ローンと異常なサブプライムローンを混同した住宅不況論が横行している。
(3)持ち家促進は米国政府の伝統的、基本的政策である。ローンを組んで住宅を買えば税金がそっくり還付されるアメリカでは住宅ほど有利な貯蓄はない。平均的なアメリカ人は節税制度を利用して住宅ローンの3倍に達する含み益を蓄積しており、その含み益が豊かな消費生活の源泉となっている。
(4)しかしカリフォルニアやフロリダやラスベガスではメキシコやカリブ海諸国から多数の不法越境移民が流入し、人口が急増して住宅価格が高騰した。不法移民は税金を払わず、節税メリットを受けないにもかかわらず、住宅ブームにあやかろうと高利のサブプライムローンに飛びついたから、前記の3地域で住宅価格が暴騰し、暴落したのである。
(5)サブプライムローンの総額は30兆円である。財務省は30兆円の資金枠を準備して救済策を講じたが、投機の失敗を国民の税金で救済するべきではないとする反対論が強かった。米国の議会は今ようやく救済策を承認しようとしているが、現実にはサブプライムローンの大半はすでに破たんし、その赤字を地方銀行がかぶったために、倒産銀行が出たのである。
(6)カリフォルニア、フロリダ、ラスベガス以外では、住宅の暴騰もなかった代わりに暴落もない。住宅価格が底値圏に達したと見た納税者が節税ローンに取り組むのは当然の成り行きである。
(7)担保処分された住宅は時価の半値だから、飛ぶように売れる。売れた住宅は家賃も安いから、すぐに入居者が集まる。日本のテレビは一つ覚えで同じ住宅の「フォアセール」の看板をいつまでも放映してが、それらはとっくに完売となっている。マスコミは事実を正確、公平に報道する責任がある。