2007/6/25

  2007年6月25日(月)
  続・続々・加ト吉の研究。
  クラブ9参考銘柄一口メモ。

(一)株式相場は短期的な調整も。

(1)世界の株式相場は短期的な調整を必要としているかもしれない。
(2)日本株についても、これまで相場を牽引してきた鉄鋼、海運、造船、非鉄、不動産等の主力大型株に買い疲れが見える。
(3)かといって、銀行株が主役に復活するためには収益力が足りない。銀行の収益力が上昇するためには、日銀の金融政策が大転換する必要がある。
(4)日銀の金融政策が大転換するのは時間の問題であるが、その時には円が急騰して、任天堂を筆頭に日本の輸出関連株の円安利益がはげ落ちる。
(5)商品市況は高値圏のもみ合いとなっているが、まだ次の方向性が鮮明ではない。
(6)しかし一方で、新興市場、二部市場の小型株が底入れし、新しい人気株、仕手株が生まれる気配が濃厚となった。
(7)新しい人気株の可能性として、次項に再度加ト吉を取り上げてみた。

(二)続・加ト吉の研究。(6月4日付け「加ト吉の研究」参照)。

(1)循環取引、決算修正、決算発表の遅延、手形詐欺、食肉偽装、等々。これほどどろどろした大事件が一挙に噴出した上場企業を、私は見たことがない。オーナー、創業社長の加藤氏は一代で加ト吉を世界一の冷凍食品会社に成長させたが、その限界をも露呈した。
(2)しかし、新社長に就任した金森氏は噴出する大事件を逃げず、臆せず、誠実に、真正面から立ち向かい、孤軍奮闘して息の乱れを感じさせない。危機に遭遇してこれほど力量を発揮した社長を、私は見たことがない。
(3)責任者を果断に処分した結果、残った取締役はJT出身の2名と人事担当の1名を残すのみとなった。
(4)内部情報が筒抜けで、空売りが殺到し、マスコミが群がって悪口雑言を浴びせた。しかし暴落は限定的で、加ト吉のブランドイメージが崩壊したとは見えない。
(5)6月28日の株主総会を乗り切れば、上場廃止懸念は消滅する。
(6)その日を境に、悪材料は出つくしとなり、株価が反転上昇する可能性がある。
(7)金森社長がいなければ、加ト吉は間違いなく空中分解していただろう。
(8)金森社長の決断力と行動力と人柄は、泥中に咲いた蓮の花のように、大輪で、美しい。私は強い感銘を受けた。

(三)加ト吉の研究(続々)。

(1)加ト吉の再建は金森社長の手腕に託されている。
(2)金森社長の手腕はJTの支援体制に託されている。
(3)私は金森社長とJTが一体となって加ト吉を再生、復活、成長させると思う。
(4)JTは元専売公社で、日本のたばこの製造販売を独占する官僚機構であった。しかしその経営力は大胆、積極的で、世界の有名たばこブランドを次々に買収し、売上高6.2兆円、世界第3位の超巨大企業に躍進させた。その間に世界のたばこ会社は1兆円単位の訴訟に直面し、敗訴し、苦難の歴史をたどり、乗り越えた。欧米ではたばこの箱に大きな文字で「DIE!(死ぬぞ)」と警告しており、新たな訴訟が起こる余地は乏しくなった。
(5)しかしたばこ産業の斜陽化は必然である。JTは活路を医薬、農業、食品に求めた。
(6)金森氏はJTで食品部門を担当し、累進して食品担当専務となり、加ト吉に5%を出資するや、自ら副社長として乗り込んだ。今回ナンバー2となった小林専務もまたJT出身で、終始一貫金森氏を支えた腹心、盟友である。
(7)以上の経過と背景から、私はJTが加ト吉を傘下に収めて食品部門の拠点とするまで、一気呵成だと思う。
(8)株主総会後には、第3社割り当て増資、TOB等による買収が次の課題となるだろう。株主はJTを白馬の旗手として大歓迎するだろう。オーナーの加藤氏は安心して後事をJTに託するだろう。
(9)加ト吉の売上高は3,400億円で、6.2兆円のJTとはケタが違うが、冷凍食品で世界一である。冷凍食品は世界の食糧事情から見て有望で、有益な事業である。加ト吉がJTの一翼を担うためには、さらなる拡大成長が必要である。
(10)次項は金森社長に対する私の夢想である。

(四)「釣れますか、などと文王言い」。

(1)表題は江戸時代の川柳を集めた柳多留(やなぎだる)中の一句である。句は歴史上有名な太公望の故事を下敷きにしており、私は太公望から金森社長を連想した。
(2)3000年昔の古代中国で、武王は呂尚を軍師に迎えて殷を滅ぼし、周を興した。周は孔子が理想の国と讃えた礼節の国家である。
(3)武王は父親である太公(文王)から「西北に人材あり」と聞かされていたところ、渭水のほとりで魚釣りをしている呂尚に出会った。呂尚こそ太公(文王)が待ち望んでいた人物であったという意味で太公望(たいこうぼう)と呼ばれた。太公望呂尚は天下を統一した後、武王から斉一国を賜り、子孫が大いに栄えた。
(4)太公望の故事にちなんで、今でも釣り人を太公望と呼ぶ。
(5)さて、表題の句は釣り人が太公望気取りならば、「釣れますか」と声をかけた見物人も文王気取りだ、と見立てた。一介の釣り人とその見物人を天下取りの両雄に見立てた所が大げさで、おかしい。
(6)加ト吉も元はといえば魚釣りの会社である。私は、加藤会長は金森社長を釣り上げた文王、金森社長は文王にスカウトされた太公望と見立てた。
(7)加ト吉騒動はあまりにもどろどろして重苦しいが、私は太公望の故事を思い出して一服の清涼剤とした。
(8)私は、株式市場はどんなときでも戦国乱世だと思う。
(9)宮城谷昌光の小説『太公望』はスケールの大きな天下取りの物語である。一読を勧めたい。

閑話休題。
(五)参考銘柄一口メモ。

(1)クラブ9の参考銘柄はこれまでと変わらない。その中で、
(2)クリーンエネルギー、原子力関連で、東芝プラントが新値をうかがっている。
(3)アジアメディアは動きがあわただしい。上放れも。
(4)富山化学は材料の表面化待ち。
(5)加ト吉は6月28日の株主総会が攻防の分岐点。
(6)T-ZONEはぼつぼつ仕込み場。
(7)鈴木金属は、新しい四季報で売上高が急増している。画期的な新製品の値上げが通り、前期に投資した設備がフル操業となれば、利益は更に急増する。増額修正は必至だろう。