2013/7/8

  2013年7月8日(月)
  新日本科学。iPS細胞の臨床試験を受託。

新日本科学日足

(1)iPS細胞を用いて網膜細胞を再生するためには、iPS細胞自体が二つの臨床試験をクリアしておく必要がある。
(2)iPS細胞は全く新種の細胞だから、動物を用いた「前臨床試験」とヒトを用いた「臨床試験」をクリアしなくてはならない。
(3)例えばタカラバイオも外部企業の「臨床試験」を受託しているが、動物を用いた「前臨床試験」を受託しているのは新日本科学だけである。
(4)新日本科学はiPS細胞の「臨床試験」受託に備えて、2月に京都大学iPS細胞と共同研究の契約を締結した。4月に日本網膜研究所と資本提携し、さらに業務提携契約も締結した。
(5)また6月4日付で野村證券が新日本科学から新株予約権100億円を受託した。新株予約権は株価が上がれば上がるほど利幅が増えるが、下がれば権利を喪失するというリスクの高い証券である。
(6)野村證券は主幹事の大和証券に代わって新日本科学の新株予約権を自らのリスクで引き受けた。新日本科学も前臨床試験と臨床試験に失敗すれば100億円の資金調達ができなくなる。当然新日本科学と野村證券は臨床試験の成功に十二分の自信と成算を持っているだろう。
(7)このような経過を評価して新日本科学の株価は先週、急速に動意付いた。
(8)新日本科学は赤字無配であるが、オーナーである永田一族の持ち株比率が高く、浮動株が16%と極端に少ないために株価が乱高下しやすい。仕手色の強さも投資家の人気を集める要因となっている。
(9)新日本科学の周到な準備態勢の進展とは別に、日本ケミカルも網膜細胞の開発に注力している。
(10)日本ケミカルは1年前に網膜細胞の開発に着手したが、iPS細胞とは異なる既存の細胞を用いているから、新たな臨床試験の必要がない。またiPS細胞を使わないから、マスコミの注目を集めにくい。
(11)しかし日本ケミカルは傑出した技術開発力を備えたバイオ企業である。日本ケミカルの技術力を評価して世界第3位の製薬大手・英グラクソが全面的な包括提携餌関係を締結しており、手法は違うが網膜細胞の開発で新日本科学に先んじる可能性がある。
(12)網膜細胞開発への道筋は永く、多様であることを指摘した上で、私は野村證券の強い支援を得た新日本科学をiPS細胞関連、網膜細胞開発関連の注目銘柄にあげておきたい。