2013/6/3

  2013年6月3日(月)

(一)急騰、乱舞する新興企業群。

(1)東京市場を全体としてみれば先週は日経平均株価が暴落し、個別に見ても急落銘柄が続出した。新聞、マスコミは大見出しで「株が暴落した」という報道を競っていた。東京市場は調整局面を迎えたと感じた投資家が多いだろう。
(2)しかしひとたび新興市場の小型株に眼を転じると、そこには全く別の、活気にあふれた相場が展開されている。最近になって、医療やインターネット関連の新規公開銘柄が急増し、それらのニューフェースが次々に暴騰し、乱舞し、ストップ高が続出していたのである。
(3)急騰銘柄の大半は創業以来日が浅く、赤字決算のまま上場し、現在も赤字で売上規模が小さい。それらの新興企業は業種や業態が多彩で上場後も新たな技術、新たな市場を求めて業態が変化する企業が多い。
(4)連日にわたり、これほど多くの銘柄がストップ高を演じた株式市場を私はこれまでに見たことがない。ストップ高銘柄には直近に公開した小型株、ニューフェース株が多く、赤字銘柄を交えていたから、株価が業績を無視して需給関係だけで乱高下する危うい相場のようにも見える。
(5)私の長い経験をもってしても、現在ほど多種多様の小型株が次々に台頭し、乱舞し、ストップ高を競う、過激で、華麗で、エキサイティングな株式市場は見たことがない。その活況ぶりは歴史が永いニューヨーク市場やナスダック市場でもめったに見ない現象だろう。
(6)大活況の背景を分析して、私は安倍政権のアベノミクスに反応して医療やインターネット市場で技術革新が起こり、若い経営者が次々に登場して新しい成長企業が輩出し、株式の公開ラッシュが起こった結果だと思い至った。
(7)大新聞やテレビを中心とするマスコミは「安倍政権のアベノミクスは一向に姿を見せない」「第三の矢はどうなったのか」と批判しているが、激しく変貌しつつある新興企業の姿が、老成し、時代遅れとなったマスコミには見えていないだけである。
(8)今や旧勢力に属するマスコミもまた肥大し、報道スタイルがマンネリ化し、時代の変化や世代交代から取り残されてしまった。その間にアベノミクスは多種多様な花々を咲かせた。若いネット世代が台頭し、産業構造は情報化の洗礼を受けて檄変した。ネット世代にはケータイ、パソコンが必需品となる一方、新聞はいらなくなった。ネット世代はもはや新聞を買わない、読まないのである。

(二)ナノキャリアの大変身を大胆予想。
ナノキャリア月足

(1)5月24日付でナノキャリアは定款を変更し、発行可能株式数を491,852株から、1,301,228株に拡大すると発表した。
(2)現在の発行株式数は287,000株だから増資後は4.5倍へ、一挙に、大幅に拡大する。
(3)割当先を一社に絞るとすれば、米国のファイザー以外に考えられないが、私は新株主が多業種、多企業にわたるのではないかと思う。
(4)増資新株の引受先を見ればナノキャリアの革命的な変化の行方が見えると思うので、以下に引受先企業の業種と企業を推理したい。
(5)ナノキャリアは東京市場に上場して5年を経過したが、依然として前例のない極端な技術開発先行型企業である。決算は現在も赤字で、売上高は3億円台に過ぎないにもかかわらず、研究開発に惜しみなく資金を投入しているから、綱渡りの資金繰りを続けていたが、信越化学との提携によってようやく一息ついた。
(6)それだけに今回の大型増資による自己資金の調達はナノキャリアの資金繰りに革命的な変化をもたらす。変化の行方を探るためには新株の割り当先企業の顔ぶれを推定する必要がある。
(7)ナノキャリアの傑出したナノ技術を導入したい企業は多い。しかもナノ技術の応用範囲が多業種、多企業にわたるため、新株の割当先もまた製薬業界の枠を超えて広範囲の産業界に及ぶ可能性がある。以下に候補企業を予想したい。
(8)第1に、米ファイザー。ナノキャリアは早くから世界の製薬最大手である米ファイザー社に隣接して米国の営業所を開設している。ファイザーは最有力の割り当て先となるだろう。
(9)第2に、昨年提携関係を樹立した信越化学。
(10)第3に、台湾で合弁会社を設立する相手先企業。
(11)第4に、すでに提携関係にあるコーワ、エーザイ,武田等の製薬会社と、複数の化粧品会社。
(12)第5に、目薬・貼り薬の企業。ナノキャリアはナノレベルの超微細粒子だから注射薬、飲み薬はもちろん、目薬のロートや貼り薬のサロンパスも新薬の有望な提携対象となる。
(13)上場会社の中でも、ナノキャリアほど情報開示を頻繁に行っている企業はない。その頻度は日進月歩の旺盛な開発力を示している。
(14)それゆえ大型増資の割当先が明らかになれば、ナノキャリアの技術開発力と新薬が目標とする市場の多様さ、スケールが見えてくると私は思う。
(15)旺盛な技術開発力に対して赤字決算と綱渡りの資金繰りはナノキャリアのアキレス腱である。今回の大型増資はそのアキレス腱を自力で解消するための突破口となりうる。今後の増資関連の情報開示に注目したい。