2013/5/13

  2013年5月13日(月)
  シャープは大踏み上げも。

シャープ
(一)空売りは空前の1億1千万株。
(1)シャープの決算発表予定は14日である。直近では倒産説、赤字決算説が消えて黒字決算への転換説が有力となった。マスコミ報道に対する株価は、悪材料は折り込み済みとなり、好材料に反応しやすくなった。
(2)しかし株価が長期にわたって倒産説にさらされた結果、巨大な空売りが下値で堆積し、大仕手戦に発展する条件が成熟している。
(3)クラブ9は終始一貫シャープの倒産説を否定してきた。株価が150円割れに暴落したときにも断固として買い推奨を継続した。
(4)これに対して多くの外資系証券が倒産必至のリポートを競い合っていたから、外国人投資家の借り株を用いた空売りは5,000万株に達している。以下は外国人投資家の空売りの推移である。
(5)昨年12月10日付けクラブ9で私は、外資系証券の借り株による空売りをモルガン2,900万株、ドイツ証券1,790万株、ゴールドマン413万株、ノムラ861万株、UBS 647万株等、大手5社で6,613万株と報じた。
(6)今年の4月15日付けでは、外資系証券の借り株合計が7,800万株に増加したと報じた。
(7)5月10日現在、外資系証券上位3社の借り株は依然として4,000万株を維持している。その内訳はモルガン2,800万株、UBS 600万株、ゴールドマン550万株である。
(8)日証金と自己融資を含む信用取引の取り組みも、買い5,426万株に対して売り6,027万株と、売り越しが続いている。
(9)その結果、信用取引による空売りと借り株による空売りを合計した正味の空売りは1億株となり、貸借倍率は買い5,400万株に対して売りが2倍近くに達している。
(二)窮地に追い込まれた売り方。

(1)チャートを見れば一目瞭然、株価は昨年10月の150円割れを底値に、先週末には474円へ、3倍以上に急騰し、戻り高値を一気に更新した。
(2)さらに昨年12月4日から現在まで、半年以上にわたって連日五銭の逆日歩が継続し、売り方が買い方に支払う逆日歩は累計18円60銭に達した。
(3)安値を売り込んだ信用取引の空売りは5,000万株に達し、売り方は200〜400円の値上がり損と、長期にわたる逆日歩と、相次ぐ追い証請求に責め立てられて、資金繰りが苦しくなっているだろう。
(4)クラブ9が度々予想した通り、シャープの大踏み上げが始まる条件が次第に成熟している。

(三)シャープに関する論評を再録。

 クラブ9はこれまでにしばしばシャープが大仕手戦に発展する可能性があると指摘してきたから、次に主要な論評を再録してご参考に供したい。

(1)2012年12月10日付クラブ9
      「大波乱の株価の行方を推理する」。

(一)倒産を確信した空前の空売り。

シャープ日足
(1)チャートの日足をご覧頂きたい。シャープの株価は10月に急落を開始するや200円から一気に140円へ墜落した。
(2)しかし先週末には急反騰に転じ、わずか3日間で220円台を回復した。
(3)暴落した期間をピンク色で表示したのは、その期間にシャープが空前の、巨大な空売りを飲み込んだからである。
(4)第一に、11月30日現在、三市場の取り組みは買い8,146万株に対して、売りは7,506万株に達している。
(5)第二に、うち日証金残高は買い809万株に対して売りは3,421万株に達し、大幅な株不足から連日5銭の逆日歩が続いている。
(6)第三に、空売りは外資系証券が利用する借り株市場に及び、モルガン2,900万株、ドイツ証券1,790万株、ゴールドマン413万株、ノムラ861万株、UBS647万株等、大手5社だけで6,613万株の巨大な借り株を実弾で売り浴びせた。
(7)「三市場の空売り」と「借り株による実弾売り」を合計すると、シャープが二ヶ月間に浴びせられた空売り株式数は1億4,000万株を超えた。
(8)日本の株式市場で進行した嵐のような空売りは「シャープが倒産する」と確信したプロの機関投資家が介入しなければ起こり得なかっただろう。
(二)起死回生の株価。

(1)シャープ自身は株価暴落の悪夢をよそに、新技術の半導体「IGZO」を用いた高精細の液晶ディスプレー製品を次々に開発し、スマートフォン向けの小型製品だけでなく、32型の業務用モニターの開発にも成功していた。
(2)一方でシャープの液晶技術を買いたい有力企業も相次いだ。台湾のホンハイに続いて米国のクアルコムがシャープと資本・業務提携を締結した。シャープの今期赤字は4,500億円に上ると予想がされているが、両社はシャープの大赤字を十二分に承知した上で、傑出した液晶技術を求めて出資し、共同で新製品の大量生産に乗り出す構えである。シャープの技術力を信頼する両社にとって、株価急落は出資の好機となった。
(3)シャープが高精細の液晶を大量に供給している企業はインテル、アップル等、iPadやスマートフォンで世界市場を支配しているトップ企業である。
(4)そのシャープが経営危機に陥るとは不可解であったが、ついに奇跡が起こった。先週末の3日間にシャープは大反騰を演じ、2ヶ月間の大暴落を瞬時に埋めきった。
(5)これほどの集中買いを断行した投資主体は不明である。その意図も不明である。あえて推定すれば、新たな買い大手が出現した可能性がある。一部の売り大手がドテン買いに転じた可能性がある。新たな情報が出現した可能性もある。
(6)シャープが構築した特許技術は数多いが、中でも日本の家電業界が至宝とし、通産省が国益に基づいて死守しなくてはならない特許があると言われている。そのために日本の家電業界、金融界、通産省が結束してシャープ防衛策を講じた可能性もある。
(7)集中売りと同様に集中買いもまた確信ある判断、又は情報に基づいて行われたと推定される。
(8)株価大波乱の背後に潜む真実は時間の経過が明らかにするだろう。

(三)蘇れ、シャープ。蘇れ、ソニー。蘇れ、パナソニック。

(1)チャートをクールに見る限り、シャープは倒産の窮地を脱したと見える。
(2)ピンクで表示した巨大な空売りは完全に下値で取り残された。今後は空売り筋の買い戻しが株価を支援するだろう。
(3)シャープの苦境を放置すれば、経営危機がパナソニック、ソニーに波及する可能性があった。
(4)今回の苦難を奇貨として、シャープ、パナソニック、ソニーの家電大手三社は相互に切磋琢磨し、或いは世界最高の技術力を糾合して大合併し、名実共にサムソンを圧倒する家電王国日本を再興してほしい。
(5)韓国政府はサムソンの対日競争力を支援するために、なりふり構わず国家資金を投入し、為替相場をウォン安に誘導した。
(6)サムソンにはオリジナル技術が少ないが、日本の家電業界は裾野の部品業界に至るまで創造的な技術を蓄積している。政府は家電業界の再興を支援せずして日本の景気と雇用を維持することは不可能だろう。家電業界自身の奮起と政府の支援を期待したい。

(2)2013年4月15日付クラブ9
      「シャープは大踏み上げに発展も」。

(1)シャープは先週末、13年3月期の連結決算予想を発表し、営業利益を200億円の黒字とした。円安を背景に大幅な赤字予想は月を追って解消し、ついに黒字に大転換した。
(2)9月に償還期日が到来する転換社債2,000億円についても自力の資金調達が可能となり、倒産の噂も可能性も消滅した。
(3)株式市場における今後の注目点は安値を売り込んだ巨大な空売りの行方に移るだろう。
(4)三市場合計の信用残は現在、買い5,600万株に対して売り7,090万株。貸借倍率は1.27倍の売り越しである。
(5)さらに別途、外資系証券を中心に7,800万株に上る借り株を用いた実弾売りがある。これを加えたカラ売りの合計は1.6億株に達し、正味の貸借倍率は2倍を超える大幅な売り越しとなっている。
(6)業績見通しが赤字から黒字へ大逆転した結果、株価は先週末に一気に300円大台を回復し、335円へ急騰した。
(7)株価が350円台の壁を突破すればすべての売り方に評価損が発生し、追い証の請求、逆日歩責め、決済期日の到来等が追い打ちをかける。
(8)チャート下段の赤線は信用売り、青線は信用買いである。大取り組みを形成した攻防戦は先週の大陽線をもって、一気に買い方有利に傾いた。
(9)大踏み上げに発展する可能性もある。