2013/3/11

  2013年3月11日(月)
  iPSと不動産で経営革新を起こしたニッピ。

ニッピ日足

(1)ニッピは大倉財閥の優良企業で、ゼラチン、コラーゲン、化粧品を主力製品としてきた。しかし今、新たに二つの事業分野に進出し、創業以来の業態革命が始まった。
(2)第1に、iPS細胞関連分野に進出した。
(3)第2に、東京千住と大阪難波で保有する推定時価330億円の工場跡地を再開発する大事業に着手した。
(4)堅実で安定した経営が今年に入って急速に躍動し始めたから、株価にも革命的な変化の兆候が現れている。
(5)最近では免疫生物研究所がカイコを用いてヒト由来のコラーゲンを開発し、化粧品原料として販売活動を始めると発表して株価が暴騰したが、ニッピは動物由来のコラーゲンを生産して早くから化粧品に展開している。
(6)2月25日付日経ビジネスは、ニッピのiPS関連事業への進出を次のように報じている。
(7)「ニッピは大阪大学と京都大学から技術使用権を得て、iPS細胞の培養効率が従来の200倍になるタンパク質を年内に発売する。このタンパク質を用いると生産効率が高くなるため、大量のiPS細胞を必要とする企業や研究機関でコストを下げることができる」。
(8)「ニッピは研究用途だけではなく、将来の再生医療用途をにらみ、タンパク質を臨床レベルの高品質で製造するラインを新設した。ニッピのバイオマトリックス研究所・服部所長は『当社の企業規模からするとかなりの経営資源を割いた』と話す。当面の売上は1〜2億円であるが、京都大学が選定するiPS細胞の作製法に採用されれば、規模が拡大するだけでなく息の永い商売に発展する」。
(9)先週には赤字決算の新日本科学がiPS細胞の前臨床(動物臨床)と臨床試験を受注したと発表して株価が暴騰した。免疫生物研究所もヒト由来のコラーゲンを生産すると発表して株価が暴騰した。
(10)新日本科学と免疫生物研究所が新規にiPS関連市場に参入するのに対して、ニッピはすでに臨床レベルの高品質タンパク質を製造するラインを新設しており、年内にはiPS細胞の培養を助けるタンパク質を発売し、売上高の急増も視野に入れている。
(11)ニッピは同時に330億円に上る保有不動産の再開発事業に着手した。
(12)iPS細胞は先行投資の期間が必要であるが、不動産の再開発事業は本格化するにつれて収益構造が大きく変化する。
(13)iPS関連として急騰した銘柄の多くが赤字決算であるのに対して、四季報はニッピの1株当たり利益を前期193円、今期186円と予想しており、収益力は一貫して高水準を維持している。
(14)株価は今年に入って急上昇したとはいえ、PERは7.5倍で、上場銘柄平均の15.4倍に比べると依然として半値に過小評価されている。
(15)ニッピはマスコミからも投資家からも久しく忘れ去られた存在であったから株式市場では新規上場のニューフェースも同然で、人気に意外性があり、材料の鮮度も高い。

追記:ニッピは2月6日付で、今期予想1株利益を88円へ下方修正している。