2012/12/10

  2012年12月10日(月)
  シャープ。大波乱の株価の行方を推理する。

(一)倒産を確信した空前の空売り。
シャープ日足

(1)チャートの日足をご覧頂きたい。シャープの株価は10月に急落を開始するや200円から一気に140円へ墜落した。
(2)しかし先週末には急反騰に転じ、わずか3日間で220円台を回復した。
(3)暴落した期間をピンク色で表示したのは、その期間にシャープが空前の、巨大な空売りを飲み込んだからである。
(4)第一に、11月30日現在、三市場の取り組みは買い8,146万株に対して、売りは7,506万株に達している。
(5)第二に、うち日証金残高は買い809万株に対して売りは3,421万株に達し、大幅な株不足から連日5銭の逆日歩が続いている。
(6)第三に、空売りは外資系証券が利用する借り株市場に及び、モルガン2,900万株、ドイツ証券1,790万株、ゴールドマン413万株、ノムラ861万株、UBS647万株等、大手5社だけで6,613万株の巨大な借り株を実弾で売り浴びせた。
(7)「三市場の空売り」と「借り株による実弾売り」を合計すると、シャープが二ヶ月間に浴びせられた空売り株式数は1億4,000万株を超えた。
(8)日本の株式市場で進行した嵐のような空売りは「シャープが倒産する」と確信したプロの機関投資家が介入しなければ起こり得なかっただろう。

(二)起死回生の株価。

(1)シャープ自身は株価暴落の悪夢をよそに、新技術の半導体「IGZO」を用いた高精細の液晶ディスプレー製品を次々に開発し、スマートフォン向けの小型製品だけでなく、32型の業務用モニターの開発にも成功していた。
(2)一方でシャープの液晶技術を買いたい有力企業も相次いだ。台湾のホンハイに続いて米国のクアルコムがシャープと資本・業務提携を締結した。シャープの今期赤字は4,500億円に上ると予想がされているが、両社はシャープの大赤字を十二分に承知した上で、傑出した液晶技術を求めて出資し、共同で新製品の大量生産に乗り出す構えである。シャープの技術力を信頼する両社にとって、株価急落は出資の好機となった。
(3)シャープが高精細の液晶を大量に供給している企業はインテル、アップル等、iPadやスマートフォンで世界市場を支配しているトップ企業である。
(4)そのシャープが経営危機に陥るとは不可解であったが、ついに奇跡が起こった。先週末の3日間にシャープは大反騰を演じ、2ヶ月間の大暴落を瞬時に埋めきった。
(5)これほどの集中買いを断行した投資主体は不明である。その意図も不明である。あえて推定すれば、新たな買い大手が出現した可能性がある。一部の売り大手がドテン買いに転じた可能性がある。新たな情報が出現した可能性もある。
(6)シャープが構築した特許技術は数多いが、中でも日本の家電業界が至宝とし、通産省が国益に基づいて死守しなくてはならない特許があると言われている。そのために日本の家電業界、金融界、通産省が結束してシャープ防衛策を講じた可能性もある。
(7)集中売りと同様に集中買いもまた確信ある判断、又は情報に基づいて行われたと推定される。
(8)株価大波乱の背後に潜む真実は時間の経過が明らかにするだろう。

(三)蘇れ、シャープ。蘇れ、ソニー。蘇れ、パナソニック。

(1)チャートをクールに見る限り、シャープは倒産の窮地を脱したと見える。
(2)ピンクで表示した巨大な空売りは完全に下値で取り残された。今後は空売り筋の買い戻しが株価を支援するだろう。
(3)シャープの苦境を放置すれば、経営危機がパナソニック、ソニーに波及する可能性があった。
(4)今回の苦難を奇貨として、シャープ、パナソニック、ソニーの家電大手三社は相互に切磋琢磨し、或いは世界最高の技術力を糾合して大合併し、名実共にサムソンを圧倒する家電王国日本を再興してほしい。
(5)韓国政府はサムソンの対日競争力を支援するために、なりふり構わず国家資金を投入し、為替相場をウォン安に誘導した。
(6)サムソンにはオリジナル技術が少ないが、日本の家電業界は裾野の部品業界に至るまで創造的な技術を蓄積している。政府は家電業界の再興を支援せずして日本の景気と雇用を維持することは不可能だろう。家電業界自身の奮起と政府の支援を期待したい。