2012/10/22

  2012年10月22日(月)
  続・アコム。先週末に大きな波乱。

(1)アコムが先週末に大きな波乱を演じたので、今週もコメントを補足したい。
(2)朝方はモルガン・スタンレーの世界株価指数「MSCSI」が新たにアコムを構成銘柄に採用すると報じられて株価が急伸した。
(3)その後、野村総研がアコムのレポートを更新し、目標株価を1,370円から1,900円に更新したと伝わり、反落に転じた。
(4)野村総研は目標株価を530円も上方修正したが、それでも時価より大幅に低かったから、利食い売りを誘った可能性もあるが、もともと前回レポートであまりにも大幅に予測を誤り、今回やむを得ず修正はしたものの、依然として将来の業績を過小評価しているという印象を受けた。
(5)野村レポートには重要な間違いもある。利益を税引き後で予想しているが、アコムには税務上の損金が7,000億円以上あり、向こう5年間は非課税である。その結果、現在2,700億円の純資産が年率300〜500億円ベースで拡大する。
(6)一昨年にはサラ金最大手の武富士が倒産し、昨年はプロミスが倒産の噂に包まれていた。外資系証券を筆頭に大半のレポートが弱気論一色であったが、クラブ9は唯一強気を貫いた。
(7)果たして三井住友銀行がプロミスを買収し、今では全行員がプロミスのカードを持って融資拡大に注力するほどの成長部門に大化けした。
(8)直近では三菱東京UFJ銀行がアコムの、三井住友銀行がプロミスのサラ金をテレビで大々的に宣伝し、サラ金と銀行自身の個人ローンをセットで売り込んでいる。メーンバンクを持たないアイフルもテレビコマーシャルを復活した。サラ金各社は大不況を克服し、一斉に攻めの経営に転じている。中でもアコムとプロミスは海外に進出し、東南アジア各国で拠点を拡大している。
(9)10月15日付けクラブ9は、アコムのIR担当者に再三取材し、業績好転を細部まで確認した。
(10)株式の需給関係も株価を予測する上で重要な要因である。この点でアコムは大型株の中でも最も安定株主の比率が高い。創業者一族とメーンバンクの持ち株だけで77.5%を維持しており、生損保を加えた安定株主は80%を大幅に上回っている。今後も需給関係が悪化する要因は乏しい。日証金の信用残は長期にわたって株不足が続いている。3市場合計でも売り買いの比率は1.25倍と接近している。
(11)株価が急上昇して25日移動平均線とのかいり幅が15%に拡大した点が唯一の悪材料であるが、25日線は上昇傾向をたどり、下値支持水準を切り上げているから、調整は限定的だろう。
(12)今後の株価に影響すると思われる材料を挙げておきたい。
(13)第1に、モルガン・スタンレーが予想通り11月中旬にアコムをMSCSI指数に採用すれば、同指数を指標とする機関投資家が一斉に組み入れるから、タイトな需給関係がさらに逼迫する。
(14)第2に、構造不況に直面した弁護士が残された数少ない収益源であるサラ金の過払い利息返還訴訟をテレビ広告で募集しているが、サラ金業界では高水準の訴訟件数が急減する時期が近いと分析している。訴訟の急減は利益の急増に直結する。
(15)第3に、自民党はサラ金に対する規制を緩和すべしと主張している。過剰な規制がヤミ金融をはびこらせているからである。
(16)サラ金業界は円高とも貿易摩擦とも無縁である。業績好転が鮮明な内需株であるアコムの人気が衰える要因は乏しい。