2012/9/3

  2012年9月3日(月)
  韓国の政治経済に潜在する特異性の研究。

(一)サムスン1人勝ちで国民が貧困に陥る政治。

(1)韓国の政治と経済が内包する歴史的なワイロ体質は、韓国の歴代大統領の悲劇的な末路に鮮明に表れている。
(2)ノーベル平和賞を受賞したキム・デジュン大統領を除くすべての大統領が汚職を糾弾されて退陣し、或いは退陣後に逮捕されている。ノ・ムヒョン大統領に至っては自殺に追い込まれた。新大統領が自ら指揮して前大統領を告発し、徹底的に責任を追求する過激な政治手法も異常である。
(3)現職のイ・ミョンバク大統領は実兄がすでに汚職で逮捕されており、多くのマスコミが大統領自身も逮捕は必至だと論評している。突然大統領が対日強硬姿勢を露わにし、強い愛国心を国民に訴えているのは、自らに迫った政治的危機を回避するための自衛策だと見る向きが多い。
(4)しかし意外にも、国民の最大の不満は大統領のカンバン政策であったウォン安に向けられている。大幅なウォン安は一握りの財閥系企業の輸出を強力に支援したが、一方で輸入物価の高騰を招き、国民生活を貧困に陥れているからである。
(5)現実を見れば国民の不満は当然である。ウォン安で大もうけしたのは一握りの財閥企業だけで、韓国の国民は輸入物価の高騰で生活苦を強いられている。
(6)為替政策に限らず、すべての政策には光と影がある。光と影を公平に見なければ政治を正しく評価することはできない。

(二)歴代大統領のせい惨な末路。

(1)韓国の歴代大統領は、南北会談を実現してノーベル平和賞を受賞した第16代キム・デジョン大統領を除くすべての大統領が、せい惨な末路をたどっている。
(2)以下に歴代大統領の最終経歴を事実に即して一覧しておきたい。
 1. 1〜3代大統領。イ・スンマン。ハワイに亡命、客死。
 2. 4代大統領。ユン・ボソン。クーデターで失脚、懲役3年。
 3. 5〜9代大統領。パク・チョンヒ。大統領婦人と大統領が暗殺された。
 4. 10代大統領。チェ・ギュハ。光州事件を受けて、8ヶ月で退任。
 5. 11、12代大統領。チョン・ドゥファン。光州事件首謀で死刑、後恩赦。
 6. 13代大統領。ノ・テウ。懲役17年、後恩赦。
 7. 14代大統領。キム・ヨンサム。次男が収賄で逮捕。
 8. 15代大統領。キム・デジュン。南北会談でノーベル平和賞。
 9. 16代大統領。ノ・ムヒョン。弾劾を受けて、自殺。
 10. 17代大統領。イ・ミョンバク。現職。退任後に逮捕の噂。
(3)歴代大統領が悲劇的な末路をたどった背景を要約すれば次のごとくだろう。
(4)第1に、大統領が為替操作や許認可で強大な権限を握っているために、ワイロが集まりやすい。
(5)第2に、民間サイドにも情報や利権を金銭で買おうとする癒着体質がある。
(6)第3に、企業には時間をかけて人材を育成し、技術を開発するよりも、ワイロで政府から情報や許認可を取得し、或いはライバル企業のノウハウを盗んだ方が手っ取り早いと考える性急さがある。
(7)第4に、韓国は国連事務総長を始め国際機関に多くの人材を送り出している。ゴルフ、サッカー、野球等のスポーツでも傑出した人材が多い。個人的な才能の豊かさと社会的な倫理観の間に落差がある。

(三)スマートフォンの特許紛争でサムスンが敗訴。

(1)米アップルと韓国サムスンがスマートフォン(高機能携帯電話)で争ってきた特許訴訟は、緒戦のデザインでアップルが完勝した。
(2)米カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所の陪審は24日、サムスンがアップルの一部特許を侵害したとの評決を言い渡した。アップルの損害を10.5億ドル(830億円)と認定、サムスンに支払いを命じた。
(3)陪審判決を受けて、判事が製品販売の差し止めを含む最終的な命令を出す。審問は9月20日。
(4)サムスンはかねてから敗訴に備えて製品のモデルチェンジを急いでおり、敗訴の損害を最小限に食い止める準備を進めている。
(5)アップルとサムスンは世界各国で多様な特許訴訟を起こしており、米国の裁判で決着がついたわけではない。

(四)「サムスンはコピーキャット(ものまね屋)」か。

(1)スマートフォンを開発したアップル会長の故スティーブ・ジョブス氏は、サムスンを「コピーキャット(ものまね屋)」だと厳しく批判していた。
(2)サムスンはアップルのスマートフォンが韓国市場に出回った後に、デザインが酷似したスマートフォンを発売したのだから、外観やコンセプトに関する限り、サムスンが逆転勝訴する可能性はないだろう。
(3)韓国企業のコピーキャットを批判したのはジョブス氏だけではなかったから、今回の判決を受けてマスコミのサムスン批判が世界各地で表面化した。
(4)日本の新日鐵も4月に韓国ポスコを「方向性電磁鋼板のノウハウを盗んだ」として1,000億円の損害賠償請求の訴訟を起こしている。
(5)この事件は新日鐵の元社員が新日鐵から盗み出したノウハウを韓国の2社に売却したために、韓国2社の間で所有権をめぐる裁判が進行し、法定に証拠として提出されたデータを見て、新日鐵が始めて自社の重要技術が盗まれていたことに気がついた。
(6)韓国企業が日本企業に多数の産業スパイを送り込んでいることは周知の事実である。最近では日本の電機業界の人員整理に乗じて韓国企業が技術者を高給でスカウトし、ノウハウを吸収してしまうとすぐに切り捨てて、ノウハウ取得を効率化している。韓国企業に転職する日本人にもそれなりの覚悟が求められる。
(7)韓国企業に比べれば、台湾ホンハイによるシャープへの出資交渉はガラス張りで陰湿さがない。業務提携の成功率も台湾資本の方が断然高い。誠実な下請けに徹する台湾企業の競争力が高まる可能性がある。

(五)ウォン安政策の副作用が表面化。
ウォン/円 月足

(1)日本の企業は第二次世界大戦後の復興過程でアメリカの主力産業である家電や自動車を追跡して高度成長時代への足がかりを築いた。
(2)その間にドル円為替は1ドル360円から80円へ、3.5倍に大暴騰したが、日本企業は技術者を育成して新技術、新製品の開発に注力する一方、多国籍化によって円相場の高騰を克服した。国際社会は日本企業の努力と実力を「奇跡の経済成長」として賞賛した。
(3)これに対して韓国は日本の高度成長の軌跡を追って、鉄鋼、造船、電気、自動車等の主要産業を追跡したが、大半は日本製品の模倣で、日本企業を脅かすような新たな技術開発は乏しかった。
(4)しかし韓国政府は企業の国際競争力を支援するために公然と為替市場に介入し、ウォン安によって韓国企業を支援したのである。ウォン安政策ではイ・ミョンバク大統領とサムスンを初めとする財閥系企業の利害が完全に一致した。利害が一致してワイロが動いた事実を大統領の実兄逮捕が明快に証明している。
(5)<チャート・円/ウォン為替>をご覧頂きたい。過去21年間にウォンの対円相場は4分の1に暴落した。日本の高度成長時代にドル円相場が3.5倍に暴騰したのとは正反対に、韓国政府はなりふり構わぬウォン安政策によって韓国企業をおおっぴらに支援した。
(6)円高を克服するために日本企業は先端技術を開発し、多国籍化を推進したのに対して、サムスンは短期間に世界市場を席巻したが、ウォン安の恩恵を享受するためには生産拠点を海外に移転することができない。ノウハウの盗用も表面化した。
(7)今では、官民一体のウォン安政策に対する副作用が鮮明となった。韓国の国民はウォン安がもたらす輸入物価の高騰に反発している。ウォン安政策の裏でワイロが働いたことも判明した。大統領は激化する批判を受けて苦境に追い込まれている。
(8)年末に任期満了を控えたイ・ミョンバク大統領が歴代大統領の轍(わだち)を踏むかどうかに注目されたい。