2012/8/6

  2012年8月6日(月)
  大波乱必至のオリンパス。

(一)空売り1,000万株。大踏み上げも。
オリンパス

(1)チャートを見れば一目瞭然。7月以降に三市場の売残が急増し、株不足は増勢一途をたどっている。
(2)7月27日現在、買残168万株に対して売残は377万株。0.45倍という極端な株不足である。
(3)さらにチャートに現れていないもっと巨大な空売りがある。すなわち貸株市場で外資系証券が600万株を借りて、実弾で空売りしているのである。8月1日発表の借り株上位3社は、UBS365万株、モルガン・スタンレー94万株、メリル・リンチ82万株である。
(4)三市場の売残に借り株を加えた空売りの合計はおよそ1,000万株で、168万株の買残に対する売残が6倍に達する空前の売り越しとなった。
(5)一方、空売りが激増した期間に米投資会社ハリス・アソシエイツが5.9%、1,600万株を取得し、第2位の大株主に急浮上した。
(6)売り方がハリスの1,600万株に及ぶ巨大な実弾買いに気づかずに1,000万株を空売りしたとすれば大事件で、大仕手戦が必至となる。ハリスは鍋に入った1,000万株の空売りをこれから好きなように料理することができる。
(7)もっとも、ハリスの大量買いの目標が純投資か、買い占めか、或いは第3者の依頼を受けた株集めかは不明であるが、ハリスがさらに買い上がり、売り方を担保切れから凄惨な踏み上げへ、追い込む可能性が高い。

(二)優柔不断で見識と器量に欠けるオリンパス社長。

(1)オリンパスは不正な利益操作によって毀損(きそん)した自己資本を補填するためにかねてから1,000億円の第3者割り当て増資の引受先を求めている。
(2)これまでに富士フイルム、パナソニック、テルモ、ソニーの4社が増資新株の引受を表明したが、肝心のオリンパスは未だに依頼先企業を決定しない。
(3)私は以下の理由から、オリンパスの優柔不断の原因は笹宏行社長の見識と器量不足にあると思う。笹社長は損失隠し事件の発生を受けて全取締役が引責辞任した後を受けて執行役員から新社長に大抜擢された。しかし棚ぼたで社長に就任した笹社長のこれまでの言動には疑問点が多い。
(4)第1に、笹社長はパナソニックに対して「将来株式の買い増しを行わない」という条件をつけた。つまり「出資を頼むが経営権は渡さない」と主張したのである。これでは敗者が勝者に「社長の将来の地位保全」を要求したのも同然で、パナソニックはあきれて交渉を打ち切った。
(5)さもありなん。そもそも社長が将来にわたって地位を維持できるかどうかは社長自身の器量と力量次第である。笹社長の要求は非常識で人格が疑われる。
(6)第2に、笹社長はこれまでに富士フイルム、パナソニック、ソニー、テルモの4社から出資の申し入れを受けたが、一向に決断を下そうとしない。笹社長は格上の大企業各社を面接し、いたずらに権力の行使を楽しんでいるように見える。
(7)第3に、オリンパスの取締役会には再建を急ぐ責任があるにもかかわらず、社長の優柔不断を咎めた形跡がない。再建の第一歩である自己資本の補填さえ決まらない状況は経営者不在と言わざるをえない。

(三)オリンパスを革新するTOBに期待。

(1)そんな状況下で、テルモがオリンパスに対して全面的な資本・業務提携を含む経営統合を提案し、その内容をマスコミに開示した。
(2)テルモは現経営陣の優柔不断を許さないために、マスコミと株主と投資家の監視を求めたのだ、と私は理解した。
(3)ここまで来ると、公開市場におけるTOBまではあと一歩である。事実、テルモの経営者はオリンパスの経営者がこれまで通りの優柔不断を続ければ、TOBによる完全買収を辞さない決意を言外に示している。投資家、株主はテルモの決断を期待し、全面的に支持するだろう。
(4)富士フイルムもまた、オリンパス支援を再三明快に表明しているから、私はテルモと富士フイルムによる公開市場での買収合戦を期待したい。経営力、資金力、現在業務との相乗効果等を含めて、両社はオリンパス再建の実力が傑出している。
(5)日本の株式市場では、未だ公開市場における本格的な企業買収が行われていない。
(6)実現すればすべての上場企業はTOB時代に対応して経営手法を革新する必要に迫られる。世界中の投資家がオリンパスのTOBを大歓迎し、日本の株式市場に活力がよみがえるだろう。

 ※次回の「クラブ9・Q&A」は、8月20日(月)掲載予定です。