2012/7/30

  2012年7月30日(月)

(一)久々に「天神底」か。

(1)北浜には「天神底」という一種の格言がある。
(2)大阪天満宮の天神祭は7月25日、菅原道真の命日に行われる。午後には市内の交通が遮断されて、夕方になると浴衣姿の市民が続々と大川(淀川)端に集まる。大川では無数のドンコ船を連ねた船渡御がにぎやかに行進し、盛大な打ち上げ花火が夏の夜空をこがす。
(3)「天神祭り」の1週間後には甲子園で夏の全国高校野球が始まる。その頃が酷暑のピークで、酷暑に耐えながら夏枯れ相場の底入れを期待して「天神底」の格言が生まれたのだろう。
(4)今年は悲観論が優勢であるが、天神底に期待したい。

(二)知らずにインサイダー事件に巻き込まれた野村證券。

(1)野村證券で増資がらみのインサイダー事件が続発した。
(2)問題は、関係した多数の野村證券の社員が、社長から担当者まで、増資新株の販売手法が「インサイダー取引」に抵触するとは知らなかったと推定されるところにある。野村證券は発行市場で幹事証券としての地位と信頼を失ったが、まじめな営業努力が、知識不足のために違法行為となった、残念なケースだと私は思う。
(3)一方で、元野村證券社員が、きわめて悪質な違法行為を行い、巨額の損失を発生させた事件も続発した。
(4)第1に、オリンパス事件の実行犯である中川昭夫。第2に、AIJ事件を引き起こした浅川社和彦。第3に、巨額の利益操作を疑われているSBI証券社長北尾吉孝である。
(5)この3人はインサイダー事件の関係者とは根本的に違い、法令違反を熟知した上で法令の裏をかいた確信犯である。3人とも共通して厚顔無知の金儲け至上主義で、善悪の意識が欠落している。まじめな営業努力が知識不足のためにインサイダー取引となったケースと峻別する必要がある。
(6)私は1990年に「『円』世界制覇の秘密(講談社)」を出版し、野村證券の社員が将来このような不祥事を起こす可能性があると指摘した。すなわち「日本証券業協会会長・田淵節也氏への期待」という小見出しで、「今にして野村證券・田淵会長が利益至上主義のノルマ営業を改めなければ、将来に禍根を残すだろう」と直言したのである。
(7)田淵会長は当時野村證券社長として年間利益3,000億円を計上し、「大田淵」と讃えられて、日本の証券界に君臨した巨人であった。
(8)田淵会長は当時、社員にセブンイレブン(朝7時から夜11時まで)の肉体労働を課したことを自ら誇りとしていた。私はこれを批判し、「世界中で最も知的な仕事である証券業務を田淵会長は肉体労働に変えてしまった。これでは野村證券の社員は勉強する閑も考える閑もない」と批判した。
(9)私は和光証券(現みずほ証券)常務を退任して、ようやく大田淵氏を批判する決心がついたが、それほど田淵会長は偉大であった。
(10)ノルマ営業育ちの野村證券の社員は、法人部員から社長に至るまで、日常業務の一貫である公募株の売り出しがインサイダー事件に抵触するとは夢にも思わなかったのではないだろうか。
(11)ただし、東京証券取引所の斉藤理事長は元野村證券副社長である。職責によって野村證券のインサイダー取引を監視していたのだから、事前に後輩に注意すれば問題を未然に防ぐことができたはずである。しかし斉藤理事長もまたノルマ営業育ちで、インサイダーが何たるかを知らなかったのかも知れない。
(12)最近の一連の野村證券がらみの不正事件は、社員を手数料至上主義のノルマ営業に駆り立てた大田淵時代に起因している。しかしインサイダー事件に関する限り、私はまじめな営業努力が意図せざる法令違反に抵触した気の毒な事件であったと思う。

(三)一目均衡表の雲。

(1)このところ一目均衡表の雲を下から上へ突き抜けた銘柄を取り上げてきたので、今回はその後の経過をご覧頂きたい。
(2)先週末には新規にアコムが雲を突破した。
(3)力強さでナノキャリアに注目。

アコム

ナノキャリア

オリンパス

JCR

海洋掘削

三井海洋