(1)往年の値がさ優良株を代表するソニーやパナソニックは本業の家電が構造的不況に直面し、未だ業績回復のめどさえ立たない。それでもさすがに1,000円割れのソニーを買いたいという声が出始めた。
(2)富士フイルムもまたチャート上では、ソニーやパナソニックと同様の下降傾向をたどり、株価は新安値を更新中である。しかし肝心の業績面では、収益力、財務内容が好転一途で、すでに日本を代表する優良企業に変身している。
(3)世界の家電業界はケータイやiPad等の革新的な新製品を次々に開発し、一貫して拡大成長を続けているが、日本の家電は韓国、台湾との国際的競合に敗退し、未だに復活の気配が見えない。
(4)富士フイルムは主力業務のフィルム事業がデジタル革命に遭遇して完全に消滅するという、家電業界よりもはるかに厳しい経営危機に直面した。世界屈指の超優良企業であった米コダックはとっくに倒産した。
(5)しかし富士フイルムは医療画像、内視鏡、液晶フィルム等の新規事業に大転換し、現在もナノ技術をベースにした化粧品・薬品の開発等、ニュービジネスを次々に立ち上げて、みごとに復活再生を果たした。2兆円の利益剰余金を積み上げた財務内容もまた日本を代表する優良株の証明である。
(6)一方で、富士フイルムはオリンパス支援に対する強い意欲を隠そうとしない。資金力、技術力、経営力のどの点を見ても、他のいかなる企業よりも大きな提携効果を実現するだろう。
(7)あえて私見を述べれば、富士フイルムは優柔不断のオリンパスをTOBによって即座に傘下に収めるべきである。米国市場であれば、オリンパスの再建問題はTOBによってとっくに決着がついていただろう。
(8)もし富士フイルムが敵対的買収に踏み切れば、日本の上場企業の経営者に与えるインパクトはきわめて大きい。日本の株式市場はその英断を大歓迎するだろう。
(9)いずれにせよ、東京市場が本格的に底入れする時には富士フイルムが新しい指標株になっていると私は思う。