(1)先週末に、強気派にとって「ピンチがチャンスに逆転か」と思われるいくつかの兆候が現れた。
(2)第一に、ヨーロッパでギリシャ国債の売りたたきに成功した弱気筋が、余勢を駆って大国スペインの国債を売り込んでいたが、週末にはEUがスペインの民間銀行に直接資本注入することによって民間の不良債権と政府債務とを切り離すことに成功した。今週は一転して窮地に追い込まれた空売り筋がスペイン国債やギリシャ国債の買い戻しを迫られる可能性がある。
(3)第二に、日本の生損保、銀行、パナソニック等が株価下落による保有株の損失を回避するために20%に上る保有株式の売却を決断し、6月末に目標を達成したと胸を張っていた。しかし機関投資家の大規模な集中売りが終われば、売り圧力が解消して株価が反騰に転じる可能性がある。
(4)例えば昨年、オリンパスが不祥事件を起こしたときにも、筆頭株主の日本生命が持ち株を大量にたたき売ったが、そこで記録した安値500円が歴史的な底値となった。今回も機関投資家が断行した株式の大量売りが安値叩きとなって裏目に出る可能性がある。
(5)テレビに登場するエコノミストやコメンテーターの解説も弱気一色であった。ギリシャ国債やスペイン国債の暴落をNHKの女性アナウンサーが自信満々で解説する一方で、「EUの金融当局が反撃に成功する」という強気のコメントは滅多に見かけなかった。
(6)優等生はみな切磋琢磨してよく勉強するから、弱気のトレンドが続けば続くほど弱気論が多数意見を形成しやすい。しかし相場の大逆転は多数意見が極まったときに起こる。
(7)欧米では相場の「大天井」をバイイングクライマックス、「大底」をセリングクライマックスと呼ぶ。大天井では強気論者が、大底では弱気論者が、圧倒的な多数派を形成して人気の頂点を形成するからである。
(8)日本の機関投資家は一般に集団で資金を運用するから、上がれば強気、下がれば弱気に傾きやすい。これに対して一人の責任運用が主流の欧米ではしばしば個性豊かなファンドマネージャーが現れる。
(9)例えばかつて世界最大の「マゼランファンド」を運用していたピーター・リンチは倒産の噂に包まれていたクライスラーを自ら訪問、取材し、断固として「死ぬほど」大量に買い向かった。
(10)クライスラーは20倍に大暴騰してピーター・リンチは「ツエンティ−バーガー(20階建てのハンバーグ)」の尊称を奉られた。当時は2階建てのハンバーグが売り出さて人気を集めていたから、ピーター・リンチは「株価を20倍にした男」として羨望(せんぼう)と尊敬を集めたのである。