2012/1/30

  2012年1月30日(月)
  I。日本ケミカル。世界屈指の遺伝子組み換え技術。
  II。仕手相場の今昔。

 I。日本ケミカル。世界屈指の遺伝子組み換え技術。
(一)英グラクソと提携、バイオ新薬開発へ。

(1)日本ケミカル(以下JCR)は1月27日、英グラクソ・スミスクライン(以下GSK)とバイオ新薬の共同開発で合意した。
(2)GSKは前々期にJCRの株式25%を取得して筆頭株主となり、さらに推定20億円の特許料を支払ってJCRが開発したバイオ医薬品・エポエチンアルファの海外販売権を取得した。
(3)エポエチンアルファは人工透析患者に不可欠の腎性貧血治療薬で、市場規模は国内1,300億円、海外1兆4,000億円の巨大市場である。これまで2社が独占していた市場に、JCRが参入した。国内ではキッセイ薬品が昨年販売を開始した。
(4)エポエチンアルファは「バイオ後発薬」であったが、今回の提携目標は難病のライソゾーム病治療薬等、「バイオ新薬」の開発である。
(5)GSKはJCRに開発費を支払い、販売権の取得時に特許料も支払う。
(6)さらにJCRはGSKに対する治験薬の供給を拡大するため、神戸工場に15〜20億円を投入して遺伝子組み換え酵素培養タンクの生産能力を5倍に拡大する。
(7)売上高3.2兆円、世界第5位の製薬大手GSKの買収に近い親密化は、JCRが世界最高水準の遺伝子組み換え技術を蓄積していることを証明している。

(二)前期、今期は減益も、来期以降は利益激増期へ。

(1)JCRは同日第3四半期決算を発表し、今期の予想利益を19%減益とした。2期連続減益の主たる原因は、前々期にGSKから取得した特許料20億円がなくなったからである。
(2)しかし来期以降の収益構造は革命的に好転する。GSKが2年前に世界各国で認可を申請したエポエチンアルファの販売が今年は相次いで認可されると見込まれるからである。
(3)現在先発2社が寡占している1.4兆円の巨大市場にGSKが参入すれば、シェア1%を取得するごとに、JCRの年間売上高145億円が倍々で激増する。
(4)利益は、GSKが世界各国で販売認可を取得する度に特許料を取得するほか、売上高の一定比率を特許料として取得するから、増益率は桁違いに急拡大する。

(三)株価の予想。

日本ケミカル

(1)チャートの日足は、ようやく底値圏を脱出したところである。
(2)JCRは1月5日から4億円、50万株の自社株買いを開始した。現在までに目標の半分弱を買ったところである。3月までに予定株式を取得すれば1,000円大台回復も可能だろう。自社株買いは、GSKとの相次ぐ提携強化に伴う中期的な利益成長を予想した上で株価てこ入れを図ったと思われる。
(3)2年前にGSKがJCRの発行株式の25%を取得した時に、株価は高値1,590円を記録した。
(4)当時は理想買いであったが、今年は相次ぐ提携が実を結び、息の永い業績相場に発展するだろう。
(5)GSKが海外各国で申請中のアポエチンアルファの販売認可を取得する度に株価が上昇し、2,000円大台乗せを目指すと私は思う。

 II。仕手相場の今昔。
(一)指標株は新日本理化。

(1)新日本理化の突然の急騰は一連の加藤銘柄の急騰をもたらしたばかりか、弱気論一色のマスコミなんてくそ食らえとばかりに、仕手株の一斉蜂起を誘発した。
(2)仕手相場は業績とは無縁の投機的相場で、エコノミストの論評や大証券の調査レポートは役に立たない。
(3)あえて現在の仕手相場の特徴を探れば、長期間人気の圏外にあったために完全に忘れ去られて、もはや誰も株を持っていないような小型株が特に暴騰した。
(4)言うまでもなく今回の仕手相場の指標株は新日本理化だろう。指標株は簡単には崩れない。反落も最後になるだろう。
(5)例えば海運株では明治海運が暴騰して海運株全体を牽引したから、明治海運は終始海運株の指標となるだろう。
(6)かつては株式市場を代表する人気株は常に仕手株であった。中でも中山製鋼と平和不動産は、仕手株としてしばしば大相場を演じた。
(7)古典的な仕手戦はあたかも源平合戦の絵巻物を見るように強気派と弱気派の大将が名乗りを上げて、満場注視の中で一騎打ちを演じ、ちょうちん筋がいずれかの陣営に与(くみ)して市場人気を二分した。
(8)昔も今も、仕手相場は大阪が主導し、エコノミストや大証券が東京のマスコミを占拠して弱気論を大合唱しているような沈滞局面で、突発しやすい。
(9)新しい上昇相場の突破口を開くのは常に少数の勇敢な投機資金であるが、次第に大口資金を呼び込んで人気が優良株、大型株に広がり、最後に機関投資家が参加して息の永い上昇局面に発展する場合が多い。

(二)中山製鋼の大仕手戦。

(1)私は若い頃に中山製鋼の買い方主力筋の注文を一手に受けた時期がある。
(2)当時中山製鋼は資本金10億円、発行株式数2,000万株で、中山一族が80%を保有していたから、浮動株は400万株に過ぎなかった。その浮動株の過半数を買えば、ちょうちん筋が群がって仕手戦に発展した。
(3)私が関係した時は、主力の買い方はパチンコや高利貸し等、数人の新興成金で、リスクを恐れない度胸と資金と勢いがあった。
(4)作戦会議では大きなチャートを広げてここで3角保ち合いを造り、このあたりで上放れさせようなどと、作戦を検討し、その通りに実行した。浮動株の大半を支配していた最盛期には明日の株不足が38万3,000株と読めば、1,000株も狂わなかった。
(5)しかし,最重要の課題はいつ、どこで、どのようにして、評価益を実現益に替えるかであった。間違えば先陣の功を一気に欠く結果となる。
(6)もっとも、現在は時価発行増資の時代となって株式の時価総額が桁違いに大きくなり、個人の資金力で相場を支配することは困難となった。
(7)さらに仕手筋に代わってヘッジファンドが先物市場を支配し、コンピュータを活用して瞬時に相場のさやを取るノウハウを構築している。
(8)何はともあれ、機関投資家が支配する無味乾燥な株式投資に飽き飽きしてそっぽを向いていた投資家が、仕手相場の復活を見て勇躍参戦している。
(9)古くさい仕手相場が不思議なほど新鮮に見えて、私もまた往事を回想して久々に血が騒いでいる。

(三)オリンパスは仕手株中の仕手株。

(1)オリンパスは文句なしに優良株であるが、優良株としてはめずらしく仕手株の主役を演じる条件を備えている。
(2)1. 出来高,取り組みがダントツで、2. 強弱観が鋭く対立し、3. 逆日歩は連続3ヶ月に及んでいるが、4. 記録的な空売りを飲み込んだ大取り組みが、5. 長期間全く解消していない。6. しかし主役の姿が見えない点で十分とはいえない。
(3)予想される仕手戦の第1の山場は日証金の670万株の空売りが期日を迎える3月に来るだろう。
(4)期日を迎えて売り方の買い戻しが集中すれば株価が上昇し、株価の上昇によって自己融資を含む1,560万株の空売りに追い証が発生する。そこが仕手戦の第2の山場となるだろう。
(5)仕手相場の参考指標として注目したい。