2012/1/23

  2012年1月23日(月)
  新しい上昇相場がスタートした。

(一)仕手株、小型株が日経平均の底入れを先導。

チャート。高騰、乱舞する仕手株、小型株。
日特建
日本橋梁
五洋建
不動テトラ
若築建
ナノキャリア
虹技
新日本理化
三井海洋
海洋掘削
鉱研工業

(1)一連のチャートを見れば一目瞭然。エコノミスト、マスコミ、大証券の弱気論をあざ笑うかのように、仕手株、小型株が乱舞している。
(2)仕手株の高騰を私は異常だと思わない。株式市場が総弱気の沈滞局面から脱出するときには、仕手株が先導する場合が多いからである。
(3)仕手相場に介入する資金はリスクを恐れない投機資金である。年初に私は新日本理化、オリンパス、富士フイルムを「新春上放れ期待の3銘柄」に上げた。先週には空売りが多い新日本理化が鮮やかに新値を切った。空前の空売りを飲み込んだオリンパスは歴史的な大踏み上げが必至と見る。優良株の中では材料豊富の富士フイルムが2,000円大台更新を目前にしている。
(4)冒頭の一連のチャートは年初に急進した銘柄から拾い出した。
(5)第1に、昨年3月に東北大震災が発生したとき、土木、建設、港湾、橋梁、セメント等の復興関連株が一斉に動意付いたが、この時は理想買いであったから短命に終わった。しかし待望の財政出動がようやく本格化し、実需が盛り上がってきたから、理想買いの高値を一斉に更新した。
(6)こうなると昨年3月にリスクを取った投機的資金が利食いとなり、資金量を一回りも二回りも膨らませて新たなリスクに挑戦する余力を蓄えた。
(7)ナノキャリアのように技術革新を評価して暴騰する小型株も出た。
(8)新日本理化のように空売りをテコとして高値を更新する銘柄も出た。
(9)海洋開発関連株として、海洋掘削、三井海洋、鉱研工業が連鎖して買われた。
(10)新しい銘柄の台頭に参加した投機筋は、常にリスクを恐れず先見性に資金を賭ける投機的資金である。投機資金は勝てば急速に勢いを増す。

(二)弱気論を大合唱していた優等生たち。

(1)黙ってリスクに挑戦した投機資金に対して、エコノミストと証券、銀行、生損保の優等生たちはマスコミを占拠して弱気論を大合唱していた。
(2)彼らは常に群れをなして同じ意見を大合唱する。彼らの意見は世界の景気と金融を分析した結果論だから、説得力はあるが、個性も意外性もない。
(3)彼らの論理は自らの財産を賭けて先見性を競う投資家の相場観とは無縁の結果論、解説に過ぎないが、マスコミは解説者を珍重する。
(4)現に大手の証券、銀行が売り出した新興国ファンド、中国ファンド、ブラジルファンド等の金融商品は優等生が現実を精緻に分析してリスクを徹底的に排除したにもかかわらず、ことごとく高値づかみとなり、大幅に値下がりしたファンドが少なくない。
(5)優等生は「リスクのないところに利益はない」という資本主義社会のビジネスと相場の鉄則を知らない。「人の行く、裏に道あり、花の山」という相場の格言も知らないらしい。彼らはリスク回避を重視するあまり、個性を失い、金儲けの機会を捨てたのである。
(6)22日付日経ヴェリタスは、機関投資家が暴落したオリンパスを買わない理由を監督官庁の規制のせいにしているが、すべて言い訳に過ぎない。現にタワー投資顧問は筆頭株主の日本生命が底値圏でたたき売ったオリンパスを猛然と買い向かい、巨利を博したが、監督官庁のクレームがついた形跡がない。両者の優劣は、優等生の合議による運用と1人の責任運用との差にある。

(三)新しい上昇相場が始まった。

(1)クラブ9は20年来、コラムの冒頭に2カ条の投資原則を掲げている。
(2)第1条「相場の世界では常に少数意見が勝つ」。第2条「相場とは少数意見が多数意見に変わる課程である」。
(3)リスクを恐れない投機筋が仕手株、小型株の一角に切り込んで、沈滞した相場に風穴を空けた。少数意見が新しい上場相場の突破口を開いたのである。
(4)仕手株、小型株に始まった上昇相場は参加する投資家が増えるにつれて優良株、大型株に拡大し、少数意見は多数意見に変わって行くだろう。
(5)その場合でも、永い弱気局面で積み上がった空売りが、相場の仕手的側面を刺激し続けるだろう。
(6)弱気論を主張して出遅れた機関投資家が出動するまでは、個人投資家の出番、チャンスが続く。

(四)オリンパスは2,000円大台回復を目指す。

(1)東証は20日、オリンパスの上場維持を正式に決定した。しかし上場維持は一件落着ではなく、新たな仕手人気の出発点になると私は思う。
(2)20日付日経は1面の特集記事「日本の企業力」で、オリンパスが赤字隠しでマスコミの袋だたきに遭っていた最中に、日本のソニーやパナソニックばかりか、独シーメンスや米GMの買収チームから「どうすればオリンパスに出資できるか」、「キーパーソンに会えないか」など、電話が鳴り続けたと報じている。
(3)オリンパスは、内視鏡で世界シェア70%以上を独占しているが、同時に世界中の病院と医師に対してメンテナンスとサービスとトレーニングのネットワークを構築し、永年にわたって太い人脈を育ててきた。内視鏡市場に進出を狙う後発企業はオリンパスが構築した人脈を切り崩すことができなかったから、オリンパスの不祥事は、後発各社にとってオリンパスを買収して有望市場を奪取する千載一遇の好機となったのである。
(4)しかしオリンパスの株価を取り巻く環境は急速に好転している。
(5)第1に、オリンパスが毀損(きそん)した自己資本を補填するために発行する優先株の前人気が高い。優先株を取得した企業が経営権を取得する可能性が高くなったから、優先株の発行条件が好転し、転換株価が高くなる。
(6)第2に、オリンパスを買収したい巨大企業が多い上に、業績の落ち込みが軽微であることが明らかとなった。予想される買収株価は暴落前の2,300〜2,400円を上回る可能性がある。
(7)第3に、一方で巨大な空売りと借り株が安値圏で取り残された。株式の需給関係については先週の具体的な分析を参照されたい。
(8)かくして業績動向、買収問題、需給関係のいずれを見ても、株価は2,000円大台回復をめざすと私は思う。