2011/12/19

  2011年12月19日(月)
  オリンパスの資本提携策を批判する。
  富士フイルムによる買収こそ唯一最善の解決策。

(一)経営陣は資本提携を模索。

(1)過年度の決算修正に加えて、今期の上半期決算でも139億円の減損処理を行うなど、異常に保守的な決算処理を断行した結果、オリンパスは323億円の赤字を計上した。自己資本は前期末の11%から4.5%に縮小した。
(2)株価は予想外の赤字転落に驚いて下落したが、監査査法人は「適正」と認定し、上場維持が事実上確定した。
(3)取締役会は、新たに経営改革監委員会を設置し、改革委員に旭化成元社長・蛭田氏ら3名を迎えて不祥事の再発に備えた。
(4)日経は「取締役会は資本提携を模索する意向」だと報じている。
(5)しかし私は、株価大暴落の被害者である株主の視点から、資本提携よりも富士フイルムによる買収を期待したい。
(6)資本提携は株価と企業価値を損なうだけである。
(7)過去の買収実績で、富士フイルムは常に株主有利の条件を提示し、買収後も大いに事業価値を高めている。
(8)粉飾決算による株価暴落でオリンパスの株主は大きな損害を受けた。今こそ株主が結束して旧経営陣を追放し、最強の経営者を選択する時である。
(9)以下に私見を述べて、投資家・株主の参考に供したい。

(二)富士フイルムの傑出した経営力。

(1)富士フイルムは医薬品、医療機器事業へ、業態転換を推進しており、潤沢な自己資本のうち1兆円を企業買収の資金に引き当てている。
(2)富士フイルムはすでに医薬品部門で富山化学、Jティッシュを買収した。医療機器部門では自力で内視鏡に進出したがオリンパスの牙城攻略に難航し、かねてから買収の機会をうかがっている。
(3)そんな時にオリンパスの粉飾決算問題が浮上した。富士フイルムの社長は買収の意向を問われて「まだ機は熟していないのではないか」と答えたが、買収への意欲を隠さかった。
(4)その富士フイルムが先週、米医療機器大手・ソノサイト(ナスダック)を770億円で買収した。
(5)ソノサイトは携帯用超音波診断装置のメーカーであるが、2010年12月期の売上高は210億円、営業利益は21億円に過ぎない。富士フイルムは独自の技術を投入して市場拡大を図ると見られる。
(6)しかし私はソノサイト程度の事業に770億円を投資した富士フイルムは、オリンパス買収に巨費を投入する準備を整えていると感じた。
(7)ちなみにオリンパスの高山社長は今期の税引き利益を内視鏡部門700億円、カメラ部門マイナス100億円、差し引き600億円と予想している。その収益力はソノサイトの数十倍に達する。

(三)富士フイルムの決断を期待。

(1)私は富士フイルムによるオリンパス買収を両社の株主が大歓迎すると思う。
(2)富士フイルムが買収した富山化学は今年3月、厚労省にT-705の製造認可を申請した。T-705は年商1兆円が期待される超大型新薬で、認可されれば医薬品部門における先行投資が開花する。
(3)医療機器分野においても、米ソノサイトに次いでオリンパス買収に成功すれば、世界最強の競争力を確立する。
(4)オリンパスは第3者の手を借りてようやく粉飾決算問題に決着をつけたが、ウッドフォード元社長との間で確執を抱えており、取締役会が経営権を掌握したとは言えない。
(5)これに対して富士フイルムがオリンパスを買収すれば、オリンパスは経営上の汚点・混乱と決別し、斜陽のカメラ部門でも最強の後ろ盾を得ることができる。
(6)ちなみに富士フイルムは主力のフィルム部門がデジタル革命で壊滅的な打撃を受けたが、液晶フィルム、医療画像・内視鏡、医薬品に転身し、鮮やかに企業再生を果たした。フィルムで世界1を誇った米コダックが倒産の危機に瀕している状況と比べれば傑出した経営力が鮮明である。
(7)ソノサイト買収に770億円を投じた富士フイルムは、オリンパスに対して他のいかなる企業よりも大型の買収価格を提示するだろう。
(8)資本提携は1株の価値を薄める結果を招くだけである。オリンパスの株主にとっては富士フイルムによる買収こそ、唯一最善の解決策となる。