2011/12/12

  2011年12月12日(月)
  オリンパス。
  全員参加の雄渾な仕手相場。

(一)大仕手戦に発展。

(1)雄渾(ゆうこん)とは「力強く、勢いがあって雄大なこと」の意である。オリンパス相場を表現するのに最適の言葉だろう。
(2)11月14日以来、私は毎週オリンパスを取り上げているが、チャートを見れば一目瞭然、オリンパスほどスケールが雄大で、強弱観が対立し、出来高と値動きが群を抜いて雄渾な銘柄は滅多に出現しない。私は今回のオリンパス相場を後世に残る大仕手相場と見て、その盛衰を追跡し、記録したいと思っている。
(3)ニューヨークダウや日経平均やトヨタやソニーに関する論評は株式市場にあふれているが、個性的な意見が見えない。しかしオリンパス相場は毎日、時間と共に変化し、プロもまた相場観が試される。
(4)例えば、日本生命や東京三菱銀行はオリンパスの大株主として業績の変化を誰よりも熟知しうる立場にある。その2社が株価の最安値圏で保有株を大量に売却した。粉飾決算が表面化した当初ならば売却した理由が説明できたが、最安値に暴落した時点でのたたき売りは相場観を間違ったと批判せざるをえない。両社が誇るエコノミストや資産運用のプロは一体何をどう判断したのだろうか。

(二)第三者委員会による疑惑解明が進んだ。

(1)オリンパスの粉飾決算が表面化して以来、オリンパス疑惑は日本の企業経営全体に対する疑惑となり、日経はもちろん、フィナンシャルタイムズやニューヨークタイムズ、ロイター通信等、世界の一流新聞や通信社が争って批判した。
(2)しかし疑惑を報道した世界の一流紙や通信社もまた平気で誤報、虚報、風説を流布しているとコラムで指摘したところ、第三者委員会が次々に私の指摘の正当性を裏付ける発表を行った。
(3)オリンパスの粉飾決算は日本の全上場企業の管理体制の不備に由来しているという批判が多いが、そんなことはない。米国ではもっと大きな不正や粉飾が問題となっている。
(4)第三者委員会は先週記者会見を開き、疑惑の全容をほぼ解明したと発表した。
(5)第1に、野村証券の3名の元社員の実名を公表し、1. オリンパスが資金運用に失敗して発生した赤字、2. その赤字をタックスヘイブンへ飛ばし、3. 企業買収を装って赤字の補填と償却を行った、すべての疑惑に野村證券と元社員が関与していたと発表した。当初から私がオリンパスは被害者であり、加害者である野村證券の犯罪を裁かなければ片手落ちだ、と指摘した通りの事実が判明した。
(6)第2に、オリンパスの粉飾を1,300億円と特定し、粉飾にかかわった取締役、監査役30数名と、粉飾を見落とした監査法人2社の責任を明らかにした。これらの取締役・監査役と監査法人に対して、株主代表がオリンパスに代わって株主代表訴訟を起こすだろう。勝訴すればオリンパスが賠償金を取得する。
(7)この裁判によってオリンパス自身とオリンパスの株主は加害者ではなく、被害者であることが明らかとなる。
(8)第3に、過去の決算の修正については、第三者委員会と経営者が12月14日までに発表する予定である。

(三)上場維持の可能性が高い。

(1)東証はオリンパスを一旦監理ポストに入れた上で、第三者委員会が提出した修正決算報告の内容を見て判断する。
(2)最大の論点は、1,300億円の決算粉飾を行った時点でオリンパスの資産が1,300億円を下回り、債務超過に陥っていたか否かである。
(3)私は含み資産の厚さから、オリンパスは上場を維持する可能性が高いと思う。

(四)競争力・収益力と買収価格。

(1)ソニーやパナソニックはサムスンとの競争に敗退して赤字決算に転落し、時価総額が大逆転したが、オリンパスの主力部門である内視鏡の世界シェアは現在も70%を維持しており、利益予想も700億円と変わらない。
(2)にもかかわらず、株価は2,400円から500円に大暴落し、現在はようやく1,200円まで回復したに過ぎない。
(3)時価総額もまた5,500億円から1,150億円に激減し、現在は2,750億円まで回復したに過ぎない。
(4)しかし実態価値は買収競争が表面化すれば具体化するだろう。日本の富士フイルムを始め世界の超優良企業がオリンパスに強い買収意欲を示している。

(五)主役なき全員参加の仕手相場。

オリンパス週足

(1)オリンパス相場の大きな特徴は、出来高、取り組み、値動きのすべてで大仕手戦の様相を深めているにもかかわらず、新日本理化における加藤氏のように仕手相場に特有の主役が見当たらない点にある。
(2)それゆえ、私は相場観の拠り所をチャートに求めて来たが、チャート上でもあまり見かけない「格言」が連続して出現した。
(3)すなわち、私が紹介した「『3空』に売り無し」、「『アイランド』を下値で形成すれば株価は上放れる」という二つの格言は、指摘した直後に現実となった。
(4)株価は先週1,220円台を回復したが、これも変化の前兆として注目されたい。株価がチャートの赤線で表示した戻り高値1,276円を突破すれば、青線で表示した2,030円まで、750円に及ぶ広大な真空地帯に突入する。
(5)10月に大きな窓を開けて一直線に暴落した株価は、一転して真空地帯を駆け上がり,窓を埋める可能性がある。
(6)オリンパスは主役不在のまま、全員参加型仕手相場の様相を深めている。