2011/12/5

  2011年12月5日(月)
  I。モルフォとリブセンス。
  II。オリンパスをめぐる不可解な虚報、誤報、風説。

 I。モルフォとリブセンス。
   新規上場の大学ベンチャー2社に注目。

(1)12月7日に、転職・求人サイトや不動産情報サイトを運営するリブセンスが上場する。村上社長は早稲田大学在学中にリブセンスを創業し、25歳の史上最年少で上場を果たす。
(2)市場からの資金調達額は最大7.5億円と小額で、全株式を経営者が保有しており、株主にベンチャーキャピタルがいないから、需給関係が良い。
(3)今12月期は売上高10億7,500万円(前期比69%増)、経常利益4億5,600万円(前期比2倍)と小粒ながら、業績は鋭角的に伸びている。業態に新鮮さはないが、早稲田大学の巨大人口を背景に持つだけに成長力が期待できる。
(4)今年は先に東大ベンチャーのモルフォが上場した。モルフォは上場直後に株価が暴騰したが、前10月期の業績悪化で急落した。しかし11月30日付けでデジカメ「動画」の手ぶれを修正する新しい特許を発表。底入れ、反騰が鮮明となった。先週末に発表した今期決算予想も大幅増益であった。
(5)スマートフォンで誰でも簡単にベストの写真が撮れるようになったのはモルフォが次々に開発した革新的なノウハウの成果である。モルフォのノウハウは確実に世界市場を制覇するだろう。
(6)リブセンスの上場を契機として、大学ベンチャー2社は相互に株価を刺激しながら意外高を演じる可能性がある。

 II。オリンパスをめぐる不可解な虚報、誤報、風説。
(一)狂気か妄執か。ウッドフォード前社長の異常な言動。

(1)解任されたウッドフォード前社長が社長復帰をめざして取締役を辞任して臨時株主総会の開催を要求し、委任状集めに乗り出した。ウッドフォード氏の一連の言動は私には妄執としか見えない。辞書によれば「妄執」とは「妄想が高じてある特定の考えに捕らわれてしまう」という意である。
(2)第1に、ウッドフォード氏がオリンパスの過去の不透明な決算処理問題を告発した功績はきわめて大きい。
(3)第2に、しかし過去の決算処理に関するすべての問題処理は公平を期して第三者委員会に委ねられた。
(4)第3に、バブル時代に発生した赤字の清算は3年前に完了しており、新たな赤字が発生する可能性はない。
(5)第4に、オリンパスは売上高、収益力ともに現在も高水準を維持しているが、時価総額と株価が暴落から立ち直れていない。経営者が株価をこのままに放置すれば、必ず世界的な買収合戦が噴出するだろう。
(6)ウッドフォード氏は、過去の経営について不満があれば第三者委員会に申し立てるべきである。また業績を発展させる構想があれば取締役会で開陳するべきである。取締役会がその構想を評価し、支持すれば、ウッドフォード氏はいつでも社長に復帰することができる。
(7)しかるにウッドフォード氏は、取締役を辞任し、臨時株主総会の開催を要求し、委任状の争奪戦に乗り出す、という。その言動からは自分を解任した取締役会に報復したいという、異常な妄執しか見えない。
(8)今となっては、ウッドフォード氏の言動はオリンパスの業績と株価にとって百害あって一利もない。大多数の株主はウッドフォード氏を支持しないだろう。

(三)誤報と虚報と風説に振り回された株価。

(1)第1回は11月21日。ニューヨークタイムズとロイターがオリンパスから3,750億円がヤクザ社会に流れたと報道。株価が一時急落したが、オリンパスの第三者委員会が即座に事実無根と否定した。
(2)第2回は11月25日。ロイターが「オリンパスに対して」新たな株主代表訴訟が準備されていると報道。株価が一時急落したが事実は正反対であった。すなわち代表訴訟の対象は不正を働いたオリンパスの取締役37名と不正を見落とした2監査法人で、オリンパスはその賠償金を取得する側である。オリンパス自身が訴訟の詳細を開示すると株価は回復した。
(3)第3回は11月30日。ウォールストリートジャーナルが4〜9月期の決算報告書が法定提出期限の12月14日に間に合わないと報道。上場廃止の噂で株価が急落した。オリンパスが決算報告書は予定通りに提出すると発表し、株価はプラスに転じた。
(4)欧米の一流紙や通信社が予断を持ってオリンパスの悪材料を探し回っているから根拠のない誤報、虚報、風説が乱れ飛ぶ。
(5)その結果、信用取引の空売りと借り株による空売りは推定1,800万株に達し、オリンパス株は仕手相場の様相を深めている。
(6)投資家は自分の目で情報の虚実を冷静に見きわめる必要がある。