2011/11/14

  2011年11月14日(月)
  オリンパス。「3空に売り無し」。

(一)チャートの格言、「3空に売り無し」。

オリンパス日足

(1)チャートの赤○の通り、オリンパスは先週4つの窓を開けて暴落した。
(2)「3空に売り無し(3空を売ってはいけない)」という相場の格言がある。3空はもちろん4空を演じたオリンパスの空売りは,格言に従えばリスクが高い。

(二)実態価値は不変。

(1)マスコミは粉飾決算で大騒ぎしているが、オリンパスの実態価値が損なわれたわけではない。
(2)ゴールドマン・サックスは10月26日付レポートで、オリンパスの内視鏡は負債を差し引いても4,100億円、デジカメ事業は300〜500億円の事業価値があると記載している。
(3)11月13日付日経は、主力の内視鏡とデジカメは現在も受注高、売上高とも減少していないと報じている。担当医がオリンパスの内視鏡を長年使い慣れており、デジカメの人気も高いからである。
(4)しかし事件が表面化する前に6〜7,000億円で安定していたオリンパスの時価総額は一方的に暴落し、1,300億円を割り込んだ。世界シェア70%、税引き利益600億円を上げるオリンパスの内視鏡事業を買収したい企業はいくらでも出てくる。買収競争の激化は必至だろう。
(5)日本の上場会社は200兆円に達する史上空前のキャッシュを蓄積しており、有望な買収対象の企業を鵜の目鷹の目で探している。買収ファンドにとっては介入の好機である。
(6)競り合いになれば、5,000億円を提示する企業も現れるだろう。

(三)上場廃止の可能性は低い。

(1)オリンパスは90年代に資金運用で1,500億円の赤字を出し、タックスヘイブンに隠していたが、3年前までに清算を完了している。新たに大きな赤字が発生する可能性は乏しい。
(2)赤字の発生から清算まで、事件のすべてを主導したのは野村證券と野村證券の元社員であることが判明した。さもありなん。赤字をタックヘイブンに隠し、買収を装って償却するような智恵はオリンパスにない。事実上の主犯は野村證券であり、オリンパスはむしろ被害者である。金融庁と東証は、野村證券の責任を明らかにしなければ片手落ちである。
(3)株主代表訴訟が予想されるが、訴訟の対象は歴代取締役、監査役と会計事務所であってオリンパスではない。まして株主にはいかなる責任もない。
(4)粉飾決算は上場廃止に該当するが、内容次第である。私は、上場廃止の可能性は低いと思う。

(四)「3空」の格言は生きているか。

(1)もし上場廃止とならなければ、或いは上場廃止となった場合でも、オリンパスが倒産しない限り、空売りした株は買い戻さなくてはならない。
(2)逆日歩が長期間継続している。1,500万株と推定される「借り株」も隠れた空売りである。実態価値を無視して売り込んだ巨大な空売りが踏み上げを迫られるリスクも小さくない。
(3)果たして「3空に売り無し」の相場格言は今回も生きるだろうか。注目したい。