2011/10/31

  2011年10月31日(月)
  I。 クラブ9の投資作法。
  II。オリンパスの買収と買収価格。

 I。クラブ9の投資作法。
(一)自分の目で事実を見ないエコノミスト。

(1)9月はじめに、急騰していた金と石油が一転して急落した。私はこれを株価底入れの有力な指標と見て、強気に転換した。
(2)かねてから私はヘッジファンドが「株式売り、金・石油買い」のヘッジを組んでいると推測していたから、買っていた金と石油を利食いすれば当然売っていた株式を買い戻すに違いないと思った。
(3)金、石油の急落は,即座に貴金属全体、非鉄金属全体、穀物全体の急落を誘発した。さらに急騰していた新興国通貨が一斉に反落した。それらの資金は次第に株式市場に向かい始めていた。
(4)しかし日経やエコノミストの株価予想は弱気に傾き、世界的な株価下落が本格化するのはこれからだと主張した。弱気論者はマネーの流れの変化には無関心で、「ギリシャ問題の深刻化」と「米国の景気後退」ばかりを熱心に解説していた。
(5)10月に入ると米欧の株価底入れが次第に鮮明となったが、奇怪にも日経とエコノミストの論調はますます弱気に傾いて行った。
(6)果たして今回も相場の格言が的中した。すなわち格言に曰く。「弱気論者が理路整然と弱気論を主張するようになれば、相場は陰の極に達している」と。

(二)ヘッジファンドが支配する世界の金融市場。

(1)現在、世界の金融市場で相場を主導しているのはヘッジファンドである。ヘッジファンドの手法には他の機関投資家の追随を許さない傑出したノウハウがある。
(2)第1に、ヘッジファンドは資金量自体も大きいが、それ以上に、先物市場をテコとして資金量を何倍にも増幅し、活用するから、金融市場に与える影響力が圧倒的に大きい。
(3)第2に、ヘッジファンドは株式を売る際には借り株を調達して実弾で売るから,いくら売っても信用取引の取り組みは買い長となり、買い戻せば買い戻すほど空売りが増える。彼らは借り株を用いて株価の振幅を増幅している。(現在彼らは東京市場で大量の借り株を動員してオリンパスを売り込んでいる。取り組みと株価の相関関係の推移に注目されたい。)
(4)第3に、ヘッジファンドは株式以外の商品、為替、債権等、すべての金融商品を巨視的に把握し、何かを買えば何かを売ることによって、リスクをヘッジしながら、投資効率の極大化を追求する。
(5)第4に、ヘッジファンドはリスクを取って運用しているから、一つのアイデアに基づいた運用期間は短期である。他の投資家が追随した頃には利食いして次のステップに向かっている。
(6)第5に、ヘッジファンドの最大のスポンサーは欧米の巨大投資銀行である。投資銀行はコンピューターを用いた運用ノウハウや、金融市場の最先端情報をヘッジファンドに提供している。
(7)第6に、それゆえ米金融当局はリーマン・ブラザース倒産後も、投資銀行がヘッジファンドに提供するインサイダー情報や不正な情報操作について監視と追及の手をゆるめない。現在もゴールドマン・サックスから逮捕者が出るという噂がある。

(三)私の投資作法。

(1)8月まで、私はヘッジファンドの最大のヘッジ手法は、「金・石油買いと株式売り」の組み合わせが主流だと思っていたから、9月の金、石油の急落をみて、株式の買い戻しが始まるのは時間の問題だろうと指摘した。
(2)果たして、10月に入ると欧米の株価の底入れが鮮明となったが、日経とエコノミストの相場観はかえって弱気に傾いていった。
(3)エコノミストは事実を自分の目で見ようとせず、群れを作って同じ意見を大合唱する傾向が強い。
(4)私は「株式市場は先見性を競う勝負の世界」だと思っているから、オリジナリティを重視する。クラブ9の開設以来、コラムの冒頭に「クラブ9の投資原則2箇条」を掲げて自らを戒める投資作法としている。
(5)すなわち、 
   第1条・相場の世界では常に少数意見が勝つ。
   第2条・相場とは少数意見が多数意見に変わる課程である。

 II。オリンパスの買収と買収価格。

(1)オリンパスの経営を巡ってマスコミ報道が白熱しているが、私は「買収」の視点が欠落していると思う。
(2)以下に、オリンパスの買収価値と、買収企業出現の可能性を述べておきたい。
(3)オリンパスは内視鏡で世界シェア70%を占有する超優良企業である。
(4)売上高9,000億円、税引き利益500億円の実力を評価した理論的な時価総額は6,000億円を下回らないだろう。
(5)しかるに先週、時価総額は3,000億円に大暴落した。買収したい企業にとっては千載一遇の好機である。
(6)最有力候補は富士フイルムだろう。先に富山化学、J・ティッシュを買収して、着々と医療分野進出の布石を固めており、自らも内視鏡市場に参入した。財務内容は傑出しており、1兆円程度の買収資金はいつでも余裕裏に拠出できる。
(7)キャノン、HOYA、テルモなど、オリンパスと業態が近い企業はもちろんのこと、潤沢な現金を抱えて成長企業を買収したい企業は目白押しである。
(8)大株主と経営者の同意を得るためには大幅なプレミアムを上乗せする必要があるだろう。プレミアムを競う本格的な買収合戦に発展する可能性は十二分にある。