2011/10/20クラブ9スペシャル

  2011年10月20日(木)クラブ9スペシャル
  オリンパスの株価に関する大胆な私見。

(一)ウッドフォード前社長と菊川現会長の主張。

(1)10月17日以降、オリンパスの株価が暴落した。
(2)出来高は連日全上場銘柄中ダントツで、強弱観が鋭く対立し、沈滞した日本の株式市場で唯一、相場らしい相場を演じている。
(3)あえて大胆に私見を述べて、ご参考に供したい。
(4)先ず、ウッドフォード前社長(以下前社長)の主張と、ウッドフォード前社長を解任した菊川現会長兼社長(以下現会長)の主張の、主要な論点を整理しておきたい。

(二)ウッドフォード前社長の主張。

(1)オリンパスは08年に英医療機器メーカー「ジャイラス」を買収した際、買収金額の3分の1に達する手数料700億円を、買収を仲介したAXAM社に支払った。その金額は過大で、異常である。
(2)AXAM社の本社所在地がタックスヘイブンとして有名なケイマン諸島にある点も、裏金作り等のうさんくささを感じさせる。

(三)菊川現会長の主張。

(1)ジャイラスの買収金額は2,000億円。AXAMに支払った手数料は600億円。うち300億円は株式取得の係わる費用、300億円はAXAMに支払った手数料である。300億円の手数料が過大であったとは思わない。
(2)10月19日付日経は、買収手数料に対する外資系証券のコメントを、「2,000億円の買収に対する手数料は、通常ならば10〜30億円で、300億円は過大である」と紹介している。

(四)日本の雑誌、FACTAが7月にすでに不正を指摘していた。

(1)FACTAは7月に、オリンパスの菊川現会長が06〜08年に国内企業3社の買収で支払った金額も割高であったと報道している。
(2)すなわち、08年3月期に、1. 医療関連の産業廃棄物処理会社、2. 電子レンジ用容器の企画販売会社、3. 健康食品の通販会社、の非上場3社を、まとめて700億円で買収し、しかも翌年には全額を減損処理した。
(3)700億円に達する企業買収と減損処理について、オリンパスは有価証券報告書で何も触れていない。
(4)FACTAの報道を契機として、オリンパスの株価は徐々に下落し始めていたが、取締役会を率いる菊川前会長がウッドフォード社長を解任したことによって、問題点が一気に表面化した。
(5)現会長は、1. 買収した企業の業績不振については自分に責任があるが、2. 買収金額は適正で、3. 公認会計士の承認を得て適切に会計処理した、と述べている。
(6)700億円の減損処理を問題視した一連のマスコミ報道に対してオリンパスは19日、「リーマンショックで外部環境が悪化したために保守的に減損処理した」と釈明した。

(五)法廷闘争へ。

(1)菊川現会長は、ウッドフォード前社長が公認会計士や監査役会ではなく、いきなり外部の英フィナンシャルタイムズ紙に社内情報を漏らした点を背任行為と見て、法的処置を取ると述べた。
(2)これに対してウッドフォード前社長は、1. 公認会計士が抱き込まれており、内部告発には限界があった。2. 訴訟は望むところで、英国の当局に内部資料を提出し、第三者の立ち場から公平な判断を仰ぎたい、と述べている。
(3)事ここに至れば、問題が法廷に持ち込まれる可能性が高い。

(六)対立する主張に関する私見。

(1)マスコミ報道を通して得た私の理解には多少の間違いがあるかもしれないが、大筋においてウッドフォード前社長の主張が正しく、菊川現会長の釈明に無理があると私は思う。
(2)経営トップには企業のリスク管理に責任がある。社長に就任した英国人の前社長はリスク管理の立場から当然の経営責任を果たした。この点で、日本の上場企業企業では取締役会がリスク管理のチェック機能を果たさない傾向がある。
(3)しかしだからといって私は新たな問題が表面化しない限り、オリンパスの業績がさらに大幅に下方修正される可能性は乏しいと思う。
(4)700億円で買収した赤字会社3社についてもすでに全額を減損処理している。
(5)むしろタックスヘイブンのケイマン諸島に支払い済みの手数料の一部がプールされている可能性がある。
(6)今回の社内紛争が倒産や上場廃止に発展する可能性もまた乏しいと思われる。
(7)最大の問題はオリンパスの企業価値がどこまで損なわれたかにある。

(七)株価は下げすぎの領域か。

(1)オリンパスの株価を、7月頃の2,500円を地相場とみれば、昨日の引け値1,389円までの急落で、時価総額は6,700億円から3,700億円へ、3,000億円、45%の大暴落を演じた。
(2)オリンパスの株価は、さらなる不正が噴出しないない限り、これまでに表面化した一連の悪材料を暴落によって折り込んだ、と私は思う。
(3)例えば、東電は政府のさじ加減いかんで現在も倒産の可能性をはらんでいるが、オリンパスは医療機械と精密機械で強力な国際競争力を備えた優良企業である。この程度の赤字で破たんする可能性は皆無だろう。
(4)例えば、企業買収を重ねて着々と医療分野への進出を進めている富士フィルムはオリンパスを買収したいだろう。もし可能と見れば、オリンパス買収に名乗りを上げる内外の企業はいくらでもある。
(5)私は、現在の株価は下げ過ぎの領域にあり、買いに分があると思う。
(6)株価は大波乱の渦中にあるが、あえて大胆に私見を述べた。