2011/10/3

  2011年10月3日(月)
 サラ金新時代。
 アイフル、ポケットC、アコムは株価急騰も。

週足
(一)プロミス買収で乱れ飛んだ怪情報。

(1)日経は30日付け朝刊で、「三井住友銀行がTOBによってプロミスを買収し、さらに第三者割り当て増資で自己資本を大幅に拡大する」と報じた。
(2)プロミスはストップ高の659円で引けた。引け後に三井住友銀行がTOBを発表した。買収価格は780円であった。
(3)しかし突然の大型買収に沸いた株式市場では、不可解な情報が入り乱れた。
(4)第1に、主幹事証券が「プロミスの1株当たり純資産1,249円から推定したTOB価格は900円以上」と述べたという情報が流れて、6,000万株を超える成り行き買いが殺到した。一時はTOBの値決めが不可能になるのではないかという噂が広がった。
(5)第2に、ところが午後2時に三井住友銀行が「プロミスの今期決算は1,950億円の大赤字に転落する」と発表したという情報が流れると、冷水を浴びせられて買い玉が激減した。
(6)株価は結局ストップ高で、大量の買い玉を残して引けた。もし三井住友銀行が本当に1,950億円という巨大な赤字決算説を流布したとすれば、TOB価格を引き下げるための株価操作だと考えざるを得ない。
(7)第3に、私は最新刊の「四季報・秋号」が記載した「最終利益175億円、1株利益138円、10円復配」という黒字転換予想が正しいと思っていた。
(8)私はプロミスを強く推奨していたから、過去数ヶ月間にプロミスのIR担当者に何度も業績推移を確認し、四季報に近い業績を予想していた。
(9)プロミスに社長を送り込んでいた三井住友銀行が今期の黒字大転換を誰よりも正確に把握していたことは言うまでもあるまい。

(二)プロミスを買収した三井住友銀行の真の狙い。

(1)今日では、誰でもパソコンやコンビニで送金出来るようになったから、銀行の店頭は閑古鳥が鳴いている。一方、サラ金は年収の3分の1以上を融資出来なくなったから、貸し出し残高が縮小傾向をたどっている。
(2)そこで三井住友銀行は、傘下のプロミスが500万円しか融資できない個人客に銀行が500万円を追加融資するという一体貸し出しを行って、融資先を確保する作戦を展開してきた。
(3)さらに中国初のサラ金進出に成功したプロミスを完全買収し、三井住友銀行が自ら中国の巨大市場で大量出店する構想を固めた。
(4)中国市場のサラ金はまだ夜明け前で、法律も規制もなく、金利は年率50%近い高率である。三井住友銀行が中国でサラ金市場の開拓に成功すれば、大きな先行者利益を確保するだろう。

(三)過払い請求急減で、大幅黒字へ大転換。

(1)昨年10月の武富士倒産を契機として,サラ金各社に対する過払い利息の返還請求が激増した。
(2)月次の支払いが高水準で推移したためにサラ金各社は前2011年3月期に巨額の貸し倒れ準備金を積んで赤字決算に転落した。
(3)しかし現在は、9月を分岐点に過払い金の支払いが急減することが鮮明となった。
(4)その結果、2012年3月決算には、積み過ぎていた貸し倒れ引当金が戻されて業績が急回復することが確実となった。
(5)四季報秋号はその変化を見てプロミスの黒字転換と復配予想を出したが、同時にプロミス以外のサラ金3社についても大幅に上方修正している。

(四)注目株はアイフルとポケットカード。

(1)アイフルは公認会計士の指導に従って最も過酷な引当金を計上していために前期決算で大きな赤字(319億円)を計上したが、今3月期には引当金の戻入によって最も大幅な増益(60億円)に転換する。
(2)アイフルは住友信託銀行をメーンバンクとしているが、住友信託の持ち株はゼロである。住友信託が三井住友銀行と同様に第三者割り当て増資を引き受ければ,大きな人気材料となる。
(3)黒字転換で現在アイフルが借り入れている資金の金利が大幅に下がるから、業績はさらに好転する。
(4)株価は現在113円に低迷しているが、四季報は税引き利益60億円、1株利益25円を予想しており、割安が鮮明である。株価は現在が底値となるだろう。
(5)ポケットカードも要注目株である。
(6)ポケットカードはファミリーマートが発行するクレジットカードで、ショッピングローンとキャッシングの2本立てである。ショッピングローンの安定成長で黒字決算を維持し、8.5円配当を継続している。キャッシングも利息返還訴訟の急減で営業利益は16億円から24億円に急増する。
(7)今年の3月に第三者割り当て増資を行い、ファミリーマートの筆頭株主である伊藤忠がポケットカードでも筆頭株主となった。三井住友銀行もプロミスの持ち株を肩代わりして第2位の大株主となった。
(8)利益は急増するが、株価は第三者割り当て増資の325円を大幅に下回っている。押し目買いの好機だろう。

(五)新たな利益成長期を迎えた日本のサラ金。

(1)三井住友銀行による突然のプロミス買収によって、見落とされていたサラ金業界の大幅な業績回復が表面化した。
(2)サラ金は無担保、即時融資だから、金利が高いのは当然である。世界のサラ金業界の平均的貸し出し金利は20%前後である。サラ金を規制する法律がない中国では50%の高利が当たり前である。
(3)しかし三井住友銀行は100万円超の貸出利息が15%以下に規制された現実を熟知した上で、プロミスを買収し、銀行本体の機能をあげてサラ金市場に打って出る。
(4)今や日米の長期国債の金利が3%を割り込む時代となった。構造的な超低金利、超過剰流動性の時代を迎えて、資金調達コストが大幅に低下するサラ金は新たな利益成長期を迎えた。

(六)過去最高値はアイフル 23,420円、ポケットC 6,210円、
   アコム 14,830円。

(1)三井住友銀行がプロミスの完全買収を急いだのは、業績の大転換を確認したからである。
(2)三井住友銀行の買収価格は780円。プロミスの前日引け値は569円。買収プレミアムは211円、37%であった。
(3)ちなみにプロミスの過去最高値は10,850円である。
(4)武富士、SFCG、ロプロが倒産し、プロミスが買収された現在では、自動車ローンを除いたサラ金の上場会社はアコム、ポケットカード、アイフル3社となった。
(5)中でもアイフルは業績好転で資金調達コストが大幅に低下し、利益がさらに増えるという過去の成長期の好循環が復活するだろう。
(6)3社の過去最高値はアコム 14,830円、ポケットC 6,210円、アイフルに至っては23,420円と驚異的に高い。
(7)株価は過去の高値をめざす習性があるとはいえ、最高値の奪還は夢のまた夢だろう。
(8)それでも短期的にプロミスの買収プレミアムと同じ37%高程度の株価修正は十分期待できるのではないか。