2011/7/19

  2011年7月19日(火)
 底値を離脱した日本ケミカル。
 日本海洋掘削と三井海洋開発。
 海洋温度差発電と日阪製作所。

(一)底値圏を脱出した日本ケミカル(JCR)。

(1)JCRの日足。
株価は半値押しの水準で低迷していたが、底値圏離脱を鮮明にした。

JCR日足

(2)JCRの全面広告。
業績については日経に掲載した全面広告を参照されたい。JCR自身が技術と業績に強い自身を表明している。

(2011年6月30日(木)日本経済新聞 全面広告より)
JCR広告

(3)最大の材料は製薬世界第2位のグラクソ・スミスクラインとの全面的提携関係の樹立である。JCRの売上高は150億円に満たないが、グラクソは製薬世界第2位、売上高3.7兆円の超巨大企業である。
(4)JCRはグラクソとの全面提携によって、世界市場で日本のいかなる大手製薬会社をも上回る販売力を取得し、世界企業に飛躍する足がかりを得た。
(5)例えば、エポエチンアルファの海外販売権を取得したグラクソが、欧米1兆円の巨大市場で販売を開始すればJCRに年間100億円単位の売上高と大型の特許料収入をもたらすだろう。
(6)例えば、JCRが開発中の希少疾病治療薬は日本では患者数が希少であるが、グラクソの世界的販売網を活用すれば売上高は数倍に拡大する。
(7)エポエチンアルファは国内では昨年の6月に販売を開始したが、海外ではグラクソがいつ販売認可を取得するかが不明である。不明ではあるが認可を受けることは確実で、株価は業績変化を先見し始めたと見える。

(二)日本海洋掘削と三井海洋開発。

(1)7月17日付日経ヴェリタスは「眠れる宝300兆円」の大見出しで海底資源の大特集を組んだ。
(2)注目点は7月11日付クラブ9と同じである。第1に、青山博士(政治評論家青山繁晴夫人)が日本が年間に輸入する天然ガスの96年分に相当するメタンハイドレード(固形天然ガス)を日本海で発見した。第2に、東大加藤准教授と海洋開発機構などが太平洋のハワイ沖で陸上の1000倍に達するレアメタルの巨大鉱床を発見した。
(3)さらに「海で稼ぐ日本の底力」、「高い海洋技術、世界が評価」の見出しで日本海洋掘削と三井海洋開発を取り上げている。
(4)私は先週のクラブ9で小型株ながら躊躇なく日本海洋掘削を本命に挙げた。同社の筆頭株主は石油資源開発で、石油資源開発の筆頭株主は経産省である。つまり同社は経産省傘下で海洋における「試掘」「探鉱」から「井戸の掘削」までの第1段階を担当しているからである。
(5)対抗は三井海洋開発である。同社は三井造船の子会社で、生産設備を担当し、第二段階で活躍する。
(6)さらに鉱研工業も独自の海底地質調査の技術を構築している。
(7)メタンハイドレードとレアメタルの海底資源開発は、いずれも日本が資源大国に変身する可能性を秘めた巨大事業に発展するだろう。

(三)海洋温度差発電と日阪製作所。

(1)日経ヴェリタスは同じ特集で「温度差発電の粋、佐賀にあり」を取り上げている。
(2)経済産業省は新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じて今年度から5年間、海洋温度差発電に資金援助を再開した。2020年までに実用化し、30年までに海外展開を図るロードマップを作成するという力の入れ方である。
(3)20年前に佐賀大学の上原教授が沖縄県久米島で実証プラントを構築した後も、佐賀大学海洋エネルギーセンター伊万里サテライトでは世界最高水準の実証試験設備を構築し、研究を継続してきた。
(4)海洋温度差発電は海洋の表面と深海の20度の温度差を利用して発電するシステムである。当初は発電した電力の80%を深海の海水を汲み上げるために消費し、正味電力が20%しか残らなかったが、昨年の実験では作動流体にアンモニアと水の混合液を使い、プレート式熱交換器を改良する等によって70%の正味電力を確認したという。
(5)海洋温度差発電の中核機器はプレート式熱交換器で、世界の市場シェア70%を占める日阪製作所の技術力が成否の鍵を握っている。経産省の計画通り実用化にめどが立てば、新たに再生エネルギーの大型市場が誕生する。
(6)中長期の投資家には持続をおすすめしたい。