2011/6/6

  2011年6月6日(月)
 I  あまりにも狡猾で自ら墓穴を掘った菅総理。
 II  次期総理と初代復興庁長官の人事に注目。
 III 昭和電線電纜が変身。中国の富通集団に第3者割り当て
   増資。
 IV 原発危機救済の旗手に急浮上した日阪製作所。

 I  あまりにも狡猾で自ら墓穴を掘った菅総理。

(1)菅総理はあまりにも狡猾で、あまりにも権謀術数を弄(ろう)し過ぎたために、自ら退路を断ち、自ら墓穴を掘った。
(2)菅総理は死んだふりをして内閣不信任案を否決したが、一度辞任を口にすれば、その瞬間に総理の命脈が尽きる。気がつかなかったのは総理自身だけである。
(3)辞任する総理にすり寄る国会議員はいない。辞任する総理と国交を論じる外国政府はない。菅総理はすでに過去の人となった。
(4)国会議員は与野党を超えて、次の総理は誰か、新政権は大連立か単独か、を模索する。すべての政治家は次期政権の主流に参加したい。
(5)民主党内で真っ先に菅総理を見限ったのは枝野官房長官であった。本来側近として総理を支えるべき官房長官がテレビで「総理の真意は早期退任にある」「総理は地位に執着しない」と明言すれば、その発言が総理の意志ではなく、官房長官の独断であっても、早期辞任は既成事実となる。
(6)共和制のローマで初代皇帝への就任を目前としたジュリアス・シーザーは元老院の嫉妬を浴びて暗殺された。止めを刺したのブルータスは、シーザーが誰よりも信頼した側近であった。
(7)「ブルータス、おまえもか」という悲痛なセリフによってシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」は不滅の歴史ドラマとなった。
(8)菅総理は今、「枝野、おまえもか」とつぶやいているだろう。
(9)シーザーの養子アウグストスはシーザーの志を継いで政敵を討ち果たし、ローマ帝国の初代皇帝となったが、菅総理の側近はみな菅総理と距離を置き、その志を継ごうとしない。

 II  次期総理と初代復興庁長官の人事に注目。

(1)内閣不信任案の成立が必至と見えた2日、中小建設株が一斉にピン付いた。しかし昼休みに不信任案否決の観測が伝わると株価は行って来いとなった。この日の建設株の乱高下は投資家が政治に何を期待し、何に失望したかを明快に表現した。
(2)先に災害復旧のための第1次予算4兆円が議会で成立した時にも、4兆円の配分先を巡る宝探し、銘柄探しが全く起こらなかった。予算は成立したが責任を持って4兆円の使途を決断する人物がいなかったからである。管政権の災害対策は現在も迷走し、まともに機能していない。
(3)私は角栄の再来を待望している。田中角栄は戦後日本の政界が生んだ不世出の天才政治家である。日本列島改造を政治目標に掲げ、高速道路網と新幹線網を日本列島に張り巡らせた。日本経済は高度成長期を迎え、税収入が急増して財政黒字が定着した。
(4)田中角栄は目黒に大豪邸を新築した。金持ちになった田中角栄を国民は今太閤、豊臣秀吉の再来と賞賛した。日本に巨万の富をもたらした田中角栄の蓄財を非難する世論は皆無であった。
(5)日本は今、史上空前の非常事態に直面している。第一次、第二次を合わせて14兆円に達する巨額の復興予算を縦横に駆使して被災地を再建し、日本経済の活力をよみがえらせることができる政治家は、並外れた度胸と大局観を求められる。
(6)クリーンであっても、狡猾極まる裏技を用いた総理は百害あって一利もない。
(7)新総理は災害復興庁を新設し、その名前を聞いただけで株価が上がる人材を災害復興担当大臣に起用して欲しい。
(8)米国の政治を見れば一目瞭然、株価を上昇させることが資本主義国家を繁栄に導く王道であるという思想が一貫している。

 III 昭和電線が大変身。中国の富通集団に第3者割り当て増資。

(1)中国第2位の光ファイバーメーカー富通集団が昭和電線の第3者割り当て増資(1株105円、5,714万株、60億円、払い込み6月17日〜9月20日)を引き受ける。
(2)資金使途は富通集団との合弁による銅線(無酸素銅)設備に30億円、国内でリニア新幹線向け超伝導素材や熱電変換素子などの研究開発投資に30億円を予定している。
(3)光ファイバー部門は富通集団との提携で価格競争力が高まる。
(4)一方で電線をつなぐ樹脂製のコネクター(サイコネックス)を開発した。国内ではまだセラミック製の碍子(がいし)が用いられているが、欧米では樹脂コネクターへの転換が急速に進んでいる。日本でも5月に東北電力がコスト削減のため碍子から樹脂コネクターに切り替えると発表した。関西電力も検討中である。
(5)業績は回復期に入った。営業利益ベースでみると、前期に25億円を計上。今期は40億円、中期計画を策定した13年3月期は55億円を予定している。
(6)株価が二桁を脱出する条件が出そろったと私は思う。

 IV 原発危機救済の旗手に急浮上した日阪製作所。

(1)東電は3日、福島原発2号機の使用済み核燃料を貯蔵したプールの冷却装置が稼働後わずか2日間で目標の40度に低下したと発表した。当初の目標は1ヶ月後の6月末であったから、日阪製作所の熱交換器は圧倒的な威力を証明した。
(2)東電は2号機に次いで1・3・4号機の使用済み核燃料の貯蔵プールにも日阪のプレート式熱交換器を設置中で、6月中の稼働を目指している。
(3)しかし炉心に直接注入している海水の貯蔵場所が限界に近づいている。海水注入を続ける限り、貯蔵タンクをいくら増設しても問題は解決しないから、東電は炉心についても6月16日を目標に、放射能の除去と循環冷却を同時に行うための設備を構築している。
(4)日阪は二次系タービンや一次系炉心についても高温高圧対応のプレート式熱交換器を開発しているから、冷却済み燃料棒貯蔵プールに続いて、炉心の循環冷却でも東電は日阪の熱交換器を採用したと推定される。
(5)電力各社に原子力関連機器をシステムとして納入しているのは東芝、日立、三菱重工である。日阪はその下請けだから姿が見えにくいが、使用済み核燃料の冷却プールでは東電が、日阪製作所のプレート式熱交換器が圧倒的な威力を示したことを正式に発表した。
(6)さらに日本の原発は現在54基のうち29基が定期点検のために操業を停止しているが、29基を抱える自治体は稼働再開の条件として、新規にバックアップ用の「免震機能を備えた冷却装置」の増設を要求している。福島原発の想定外の破たんに直面した電力各社は、地元住民の要求を受け入れざるを得ない。
(7)免震構造を備えた熱交換器は日阪のプレート式熱交換器が唯一、対応可能機種である。29基の受注が日阪に集中する可能性はきわめて高い。
(8)染色、医薬、食品等の生活関連市場で日阪の市場シェアは圧倒的に高いが、風力発電や地熱発電でもプレート式熱交換器は重要な役割を分担する。
(9)日本の原発危機救済の旗手に急浮上した日阪製作所の業績変化に注目したい。