2011/4/11

  2011年4月11日(月)
  I 強気の指標が点滅し始めた。
  II 風力発電は投資採算に乗る。

 I 強気の指標が点滅し始めた。
(一)東電は簡単にはつぶせない。

(1)倒産必至と見た弱気筋の売り目標となって大暴落していた東電株が、先週末に抵抗力を示し始めた。
(2)第1に、東電が今10兆円の借入金を背負って倒産すれば、銀行、生損保を連鎖倒産に巻き込む危機が発生し、社債を買っている国民が損金をかぶる。
(3)第2に、誰が東電に代わって原子力発電所のメンテナンスを行い、農業、漁業補償に責任を持つのだろう。東電を責める声は巷にあふれているが、東電は日本最高の人材を集めている。怒りにまかせて国有化し、経営者と幹部社員を追放しても、政府に東電に勝る危機対応能力はない。
(4)第3に、東電の株価はすでに10分の1になり、株主はすでに倒産同然の損失を受けている。
(5)東電を今倒産させた場合の社会的、経済的混乱と損失はあまりにも大きい。
(6)東電をつぶすか、国有化するか、存続させるかの議論は放射能漏れの危機を脱出した後に持ち越さざるを得ないのではないか。

(二)災害復旧第1次予算は4兆円。

(1)与野党は4兆円の第1次災害復旧予算を5月の連休明けに成立させる方向でほぼ合意した。予算案が固まれば、予算配分の順序と方向が見えてくる。
(2)最初に発注を受ける業種は、土木、建築、建設資材、建設機械の順になるだろう。
(3)それらの業種、関連銘柄の行方に注目しておきたい。

(三)夏場の電力供給不安が解消。

(1)外国人投資家は、夏場の電力不足のために製造業の生産と業績の回復が遅れることを最も懸念している。
(2)しかし東電の大口需要先である大企業3,000社が25%、2,000kWの電力削減に合意し、電力不足を回避するめどが立った。
(3)財界は3,000社の業種別、企業別、地域別の需給調整に乗り出した。
(4)夏場の電力供給が決まれば計画生産が可能となり、設備復旧への投資も加速するだろう。

(四)円安時代が到来した。

対円 日足

(1)ECは先週、インフレ進行を阻止するために金利を引き上げた。米国も追随する可能性が高い。世界で唯一日銀だけが一段の金融緩和を言明している。
(2)チャートの通り、内外の金利差拡大を反映して対ユーロ、対ドルで円の下落が鮮明となった。
(3)韓国、中国を初めとするアジア諸国の通貨も、昨年の通貨安政策の反動が加わって軒並みに高騰している。
(4)円の独歩高に苦しめられていた日本の輸出産業は一転、独歩安の追い風を受けて國際競争力を回復し、大震災からの復興、復活を加速するだろう。
(5)今世界中で自動車、iPhone、iPad等の操業率が低下し始めている。
(6)今回の大震災は日本が世界唯一の供給元となっているハイテクパーツがいかに多く、多品種にわたっているかを浮き彫りにした。
(7)日本のパーツ業界は、独自の技術を持つ無数の中小企業が広大な裾野を広げて切磋琢磨している。日本のハイテク部品を肩代わりできる国は殆どない。
(8)例えば韓国で急成長している自動車、テレビ、iPhone等の巨大企業は、液晶と半導体を除くハイテク部品の大半を日本から調達している。韓国には30社余りの財閥系企業があって、中小企業は殆ど存在しない。

 II 風力発電は投資採算に乗る。
(一)続・クラブ9から電力会社への提言。
   東北3県に民間の善意を集めて風力発電のネットワークを構築しよう。

(1)先週表題の提言を掲載したところ、多くの読者から共感と励ましの言葉を頂いた。末尾に全文を再録したのでご参照頂きたい。
(2)風力発電はヨーロッパ各国で企業化されて十分採算に乗っている。
(3)燃費が要らない上に、メンテナンス費用が軽微だから、償却が終われば大幅な黒字が残る。
(4)以下に風力発電の世界的な開発状況を紹介しておきたい。

(二)日本最大・郡山布引発電所の勇姿。

(1)地震、津波、放射能漏れの被害が集中した福島県にはすでに日本一の郡山布引風力発電所が稼働している。
(2)今回の大震災でもびくともせず、33基のプラントはすべて順調に稼働している。
(3)エネルギーと環境の共生をめざして電源開発株式会社が開発した。
(4)高さ100メートルの風車33基を用いて66,000kWを発電している。
(5)立地は猪苗代湖に近く、布引大根の生産地で、郡山市は観光資源としての開発を進めている。
(6)インターネットで郡山布引風力発電所を検索すれば、林立する100メートル、33基の偉容を映像で見ることができる。
(7)郡山布引風力発電所は、大津波の大災害を受けた東北3県の海岸地帯の跡地再開発に最適のプロジェクトであることを証明した。

(三)風力発電は儲かる。

(1)ドイツでは農村単位で風力発電に投資するケースが多い。
(2)電力会社への売電によって過去10年間に投資資金を償却した結果、現在では村民1人当たり500万円の利益を稼ぎ出している村もある。過疎化していた村に若者が戻り始めたというおまけもついている。
(3)デンマークはすべての電力を風力発電でまかなっている。
(4)英国では風力発電から海上風力発電へと発展しており、日本の三菱重工が開発プロジェクトに参加している。
(5)ヨーロッパでは民間の風力発電投資が盛んであるが、広い面積と地代を必要とするから、農村や農民が自前の土地に投資する場合が多い。農村では風力発電と牧畜や農業を共存させることができるからである。
(6)海上に建設すれば地代は要らないという利点がある。

(四)「東北3県で風力発電」の国民運動を。

(1)政府は東北3県の被災地復旧に当たり、「住宅地を丘陵地帯で開発し、湾岸の農地に出かけて耕作する」という構想を発表している。
(2)私は政府の構想に加えて「風力発電会社と共同で発電と農業を同時に推進するプロジェクト」を提案したい。
(3)詳細は次項の「民間の善意を集めて東北3県に風力発電のプロジェクトを推進しよう」をご参照いただきたい。

(五)再録・クラブ9から電力会社へ提言。
   東北3県に民間の善意を集めて風力発電のネットワークを構築しよう。

(1)第1に、日本の電力会社は協力して東北3県の被災地に風力発電会社を設立する。
(2)第2に、風力発電会社の当初資本金には内外から寄せられた義援金をあてる。
(3)義援金を拠出した世界中の善意を風力発電会社の設立と発展に投入すれば、義援金が活用された姿を末永く見届けることができる。
(4)第3に、風力発電会社は民間の企業や個人から新たな「寄付金」を募る。政府は寄付金を非課税扱いとする。風力発電会社は寄付金を資本金に組み入れる。
(5)第4に、風力発電会社は企業や個人から「投資資金」を募る。風力発電会社は地域ごとの電力会社を経由して投資家の投資金額に見合う電力料金の90%を無料で供給する。
(6)投資額の10%はクリーンエネルギービジネスへの寄付金となり、90%は電力料金の前払いとなる。
(7)第5に、風力発電会社は東北3県で使用困難となった土地を買収し、風力発電のタワーを次々に建設する。
(8)かくして風力発電会社は義援金、寄付金、投資資金を結集して東北3県に風力発電タワーを林立させる。被災地に林立するタワーは日本のクリーンエネルギービジネスのシンボルとなる。
(9)政府と電力会社は風力発電会社の育成を国民参加の運動に発展させることによって、官民一体の復興事業のシンボルとする。
(10)第6に、風力発電会社が買収した用地は牧畜や農業に安価で解放する。
(11)第7に、風力発電会社はそれらの風景を新しい観光資源として開発する。
(12)私は風力発電が効率的な発電だとは思わない。しかし被災地に林立するタワーは日本国民の復興にかける意志と願望を象徴する風景となり、東北3県が遭遇した史上空前の悲劇的風景を未来志向に富んだ明るい風景に変えると思う。