2011/3/7

  2011年3月7日(月)
 アコム、プロミス、アイフルの業績と株価に重要な転機。

(一)武富士が過去10年間に納めた税金の一部返還を国に請求した。

(1)3月5日付け日経は、武富士が昨年末、国に対して過去10年間に納めた税金の一部返還を求めたと報じた。
(2)最高裁は2006年の判決で、サラ金業界が利息制限法で定めた15〜20%の上限を超える金利を無効と判断し、「過払い利息を無制限にさかのぼって返済せよ」という判決を下した。
(3)これに対して武富士の小畑管財人は「最高裁が不当収益と判定した利益に国が課税したのはおかしい」と指摘、「過去10年間に顧客に返済した利息は課税所得から差し引かれるべきだとして、法人税の一部返還を国に求めた」のである。
(4)遡及期間を10年としたのは税法上の遡及期限に準じたのだろう。
(5)武富士は昨年9月に倒産しており、現状では過払い利息の請求訴訟の一部しか返済できないことが明らかになったが、国から税金の還付を受ければ、債務の全額を返済することも可能となる。

(二)アコム、プロミス、アイフルも武富士に追随へ。

(1)最高裁はサラ金各社に対して顧客から取りすぎた利息は不当利益だから返せと命じた。
(2)これに対して武富士は、最高裁が不当利益と認定した利益に国が課税していたのは違法だから、顧客に返済した利息に見合う税金を還付せよと要請した。
(3)最高裁の判決と整合させるために、国は武富士の要求を受け入れざるを得ないのではないかと私は思う。
(4)この点に関して、私は上場を維持しているサラ金3社に質問し、すでに過払い税金の返還請求を起こす準備を進めている、という回答を得ていた。3社もまた、武富士と別途に過払い税金の返還請求を起こしている可能性がある。
(5)アイフル、アコム、プロミス3社はそろって株価が1万円を超える多額納税企業であったから、過去10年間の過払い税金の還付を受ければ余裕をもって過払い利息の返還請求に対処することができる。

(三)後出しジャンケンの日本のサラ金行政。

(1)そもそも日本のサラ金の上限金利15〜18%は世界各国の水準に比べると異常に低い。
(2)現在中国に進出中のサラ金各社の利息は年率50%だという。行政が整っていない中国の50%は割高としても、先進国では20%以上が常識である。
(3)新規に、借り手の金額を年収の3分の1以内と決めた点も非現実的で、申告所得の少ない主婦などをヤミ金融に追いやり、ヤクザを太らせる結果を招いている。
(4)サラ金は社会的弱者に必要な緊急融資で、多くの先進国で古くから日常生活に溶け込んでいる。
(5)しかし日本政府の対応は常に後手後手の後出しジャンケンで、報復的、感情的にルールを修正するから、社会的実態と最高裁判決との間に食い違いが生じた。

(四)サラ金3社は株価急変も。

(1)最高裁の判決は唯一絶対である。政府と国税庁は最高裁判決と武富士が提訴した過払い税金の返還請求とを早期に整合させる責任がある。
(2)武富士は昨年9月に倒産し、2月末をもって過払い利息返還請求の申し込みをしめ切った。現状では申し込みの一部しか返済できないが、過払い税金の還付を受ければ全額返済も可能となる。
(3)後出しジャンケンのサラ金行政が業界トップの武富士を倒産に追い込んだ。上場を維持しているサラ金3社の株価も乱高下している。
(4)今回突然表面化した過払い税金の返済問題はサラ金3社の業績と株価を激変させる重大事件となる。政府の対応に注目したい。