2011/2/28

  2011年2月28日(月)
 株価反騰の条件が整う。

 中近東情勢、石油相場、株式相場、商品相場、金融緩和の行方等をめぐり、強弱観が対立している。私は強気の視点から私見を述べておきたい。
(一)リビアの動乱は中近東波乱最大の山場。

(1)傭兵を用いて自国の国民を無差別に虐殺するカダフィ政権の崩壊は時間の問題となった。リビアのカダフィ大佐のような狂気の独裁者は滅多に現れない。チュニジア、エジプトに続く中近東の大波乱は最大の山場を通過しつつある。
(2)次はサウジかクウェートか、という意見が多いが、中近東に多少の土地勘がある私は反政府革命が両国に波及する可能性は殆どないと思う。
(3)両国では早くから社会保障が充実し、生活が保証されていた。今回も国家が素早く国民への支給額を増額している。
(4)中近東諸国では若年層の失業率が高い。サウジとクウェートも例外ではないが、失業の原因はリビアやエジプトとは全く異なる。すなわち両国では若者が酷熱の環境下の労働を忌避し、外国人の出稼ぎ労働者に頼っている。生活の豊かさが若者を怠惰にしたのである。
(5)また世界最大の産油国であるサウジアラビアは国土の大半が砂漠で、人口が希薄である。都市と都市の間は広大な酷熱の砂漠で隔てられているから、反政府運動が起こったとしても局地的とならざるを得ない。
(6)中東で次にもし反政府運動が起こるとすればイランだろう。イランは僧侶の独裁政権ゆえに女性にヴェールの着用を強制するなど男女差別が厳しく、女性の反発が強い。国内では石油以外の産業が乏しく、男性の多くは海外へ出稼ぎに出る。彼らは日本でも麻薬取引やカードの密造、密売などのアングラビジネスをケータイやメールを用いて行っており、反政府活運動の情報が拡散しやすい。

(二)石油相場は急騰より反落の可能性の方が高い。

(1)NYダウはチュニジアやエジプトの反政府暴動を無視して高騰し続けたが、先週、リビアの暴動が深刻化して石油相場が急騰するに及んでようやく急落した。
(2)しかしサウジアラビア政府が即座に石油増産を言明すると、石油相場は反落し、NYダウも反騰に転じた。
(3)事実の経過を見れば、NYダウの急落と反落をもたらしたのは石油相場の急騰と急落である。さもありなん。石油は燃料であるばかりか、プラスチック、繊維等、工業製品の圧倒的な主原料だから、その相場は世界の産業界と株価に大きな影響を与える。
(4)大産油国であるサウジ、クウェート、イラクは現在も十分な埋蔵量と操業余力を持っているが、現実には石油相場を維持するためにOPEC(石油輸出国機構)を結成して生産量を調整してきた。
(5)しかしその間にロシアやベネズエラ等、OPECに参加していないアウトサイダーが大増産してシェアを拡大し続けている点に不満があったから、サウジはすかさずリビアの減産分を肩代わりしますよと通告したのである。必要があればクウェート、イラクも追随するだろう。
(6)石油相場の安定は中東情勢の安定、ひいてはサウジアラビア自身の政治的安定に貢献する。
(7)宇宙衛星等を用いた探査技術が発展するにつれて、世界的な石油、天然ガスの確認された埋蔵量は急拡大しており、需給関係が逼迫して石油相場が高騰する可能性は乏しい。日本も尖閣列島や日本海で石油資源を確認済みであり、いつでも生産国に変身することができる。

(三)NYダウが再度世界の株価を牽引する。

(1)かくして中東情勢が沈静化すれば石油相場も安定するだろう。
(2)しかし民主主義、自由主義を求める革命運動は尾を引くだろう。
(3)一方、人口超大国の高度経済成長が続けば、資源相場の高騰は非鉄、貴金属、レアメタル、穀物、食料品に波及し、拡大するだろう。
(4)アメリカは、世界の民主主義、自由主義の守護神であり政治的リーダーであるが、経済、金融の実力も世界1である。さらに穀物や石油を含む資源供給能力も世界1である。
(5)米国のNYダウが世界の株式相場を牽引する条件と役割はかえって大きくなったと私は思う。

(四)日経平均はNYダウに追随する。

(1)S&Pとムーディーズが相次いで日本国債は「政治的安定を欠く」という理由で格付けを引き下げた。
(2)政治的安定を欠くのは事実であるが、だからといって菅内閣が明日倒れても日本人は誰も驚かない。政治的、経済的な波乱も起こらないだろう。
(3)民主主義、自由主義が行き過ぎた日本に比べると、共産党一党独裁の中国で反政府活動が表面化する可能性がないとは言えない。
(4)その中国は昨年度の税収入が137兆円に達し、日本の105兆円を大幅に上回る予想である。日中両国のGDPは昨年逆転したから、中国の財政余力はきわめて大きく、今年も財政投融資を大幅に拡大するだろう。
(5)政治的自由や所得格差に対する国内の不満を抑え込むためにも中国は8%以上の高度成長政策を堅持するだろう。
(6)中国を中心に記録的な経済成長を続けるアジア市場の追い風を受けて、日本企業は第3四半期で大幅増益を達成した。3月本決算も上方修正が必至だろう。
(7)唯一、最大の不安は円高であるが、ドル円相場が大きく円高に傾かないかぎり、株価の深押しはないだろう。
(8)日経平均はNYダウに追随して今週には上昇波動に回帰すると私は思う。