(1)1月28日の第3四半期決算の発表時に、日本ケミカルは通期の業績を「売上高で2億円、税引利益で1.7億円」と、小幅ながら増額修正した。 (2)キッセイ薬品は昨年7月に国内でエポエチンアルファの販売を開始した。今期の販売目標24.5億円に対して、12月末現在で病院の採用件数は目標を達成したが1件あたりの使用量が目標に届かなかった、と語っている。しかし共同で市場開拓に当たっている日本ケミカルは16億円の目標達成に自信を示しており、通期業績を上方修正した。
(3)エポエチンアルファは人工透析患者の90%が必要とする腎性貧血治療薬で、国内の市場規模は1,100億円、海外の市場規模は1兆円で、需要は毎年10%拡大している。人口超大国の中国でも透析治療の開始が近い。
(4)現在は国内、海外とも2社が寡占しており、日本ケミカルは第3の製薬会社として参入する。国内市場ではキッセイ薬品が、海外市場では製薬世界第2位のグラクソ・スミスクラインが販売権を取得した。
(5)世界の製薬業界はいまバイオ技術を用いた新薬の開発競争を演じているが、成功例はまれで、エポエチンアルファは日本唯一の成功例である。厚労省は日本ケミカルのバイオ技術を高く評価して後発薬としては異例の高い薬価を設定した。
(6)グラクソは昨年、エポエチンアルファの販売権を取得するために国内市場で特許料20億円を負担した。海外市場の特許料は販売認可を取得した時に支払う契約となっている。グラクソはさらに日本ケミカル株25%を取得して筆頭株主となり、グラクソの会長と技術部長が日本ケミカルの取締役に就任した。新薬の開発、販売でも全面的な提携契約を締結した。グラクソの一気呵成の急接近はエポエチンアルファの市場の巨大さと日本ケミカルの技術力に注目した結果である。
(7)グラクソの販売開始の時期と販売計画を、日本ケミカルは6月の株主総会で明らかにする予定である。
(8)ちなみに製薬業界世界第2位のグラクソの年間売上高は3兆円で、日本ケミカルの実に200倍である。グラクソが海外1兆円市場で販売を開始すれば、その販売網と販売力によって年間売上高145億円の日本ケミカルに革命的な業績変化をもたらすだろう。
(9)日本ケミカルの株価は、昨年「理想買い」で1,500円台を記録したが、先週には900円を割り込んだ。しかし今年は「業績買い」によって昨年の高値を大幅に更新するだろう。現在は押し目買いの好機だと私は思う。
|