2011/2/7

  2011年2月7日(月)
 注目銘柄の決算発表から。
  日本ケミカルは理想買いから業績買いへ。
  窮地に追い込まれたプロミス弱気論。
  イー・ガーディアンの業績と株価。

(一)日本ケミカルは理想買いから業績買いへ。

(1)1月28日の第3四半期決算の発表時に、日本ケミカルは通期の業績を「売上高で2億円、税引利益で1.7億円」と、小幅ながら増額修正した。
(2)キッセイ薬品は昨年7月に国内でエポエチンアルファの販売を開始した。今期の販売目標24.5億円に対して、12月末現在で病院の採用件数は目標を達成したが1件あたりの使用量が目標に届かなかった、と語っている。しかし共同で市場開拓に当たっている日本ケミカルは16億円の目標達成に自信を示しており、通期業績を上方修正した。
(3)エポエチンアルファは人工透析患者の90%が必要とする腎性貧血治療薬で、国内の市場規模は1,100億円、海外の市場規模は1兆円で、需要は毎年10%拡大している。人口超大国の中国でも透析治療の開始が近い。
(4)現在は国内、海外とも2社が寡占しており、日本ケミカルは第3の製薬会社として参入する。国内市場ではキッセイ薬品が、海外市場では製薬世界第2位のグラクソ・スミスクラインが販売権を取得した。
(5)世界の製薬業界はいまバイオ技術を用いた新薬の開発競争を演じているが、成功例はまれで、エポエチンアルファは日本唯一の成功例である。厚労省は日本ケミカルのバイオ技術を高く評価して後発薬としては異例の高い薬価を設定した。
(6)グラクソは昨年、エポエチンアルファの販売権を取得するために国内市場で特許料20億円を負担した。海外市場の特許料は販売認可を取得した時に支払う契約となっている。グラクソはさらに日本ケミカル株25%を取得して筆頭株主となり、グラクソの会長と技術部長が日本ケミカルの取締役に就任した。新薬の開発、販売でも全面的な提携契約を締結した。グラクソの一気呵成の急接近はエポエチンアルファの市場の巨大さと日本ケミカルの技術力に注目した結果である。
(7)グラクソの販売開始の時期と販売計画を、日本ケミカルは6月の株主総会で明らかにする予定である。
(8)ちなみに製薬業界世界第2位のグラクソの年間売上高は3兆円で、日本ケミカルの実に200倍である。グラクソが海外1兆円市場で販売を開始すれば、その販売網と販売力によって年間売上高145億円の日本ケミカルに革命的な業績変化をもたらすだろう。
(9)日本ケミカルの株価は、昨年「理想買い」で1,500円台を記録したが、先週には900円を割り込んだ。しかし今年は「業績買い」によって昨年の高値を大幅に更新するだろう。現在は押し目買いの好機だと私は思う。

(二)窮地に追い込まれたプロミス弱気論。
表1・大手7社の目標株価の推移
 
前回(昨年11〜12月)
今回(1月末)
 メリルリンチ
380 
380 
 シティグループ
490 
780 
 UBS
500 
500 
 野村
1030 
1030 
 大和
売り 
売り 
 JPモルガン
350 
350 
 みずほ
600 
600 

(1)野村が強気目標を堅持し、シティグループが目標株価を引き上げた以外は、5社が売り推奨を継続し、目標株価を据え置いた。
(2)しかし現実の株価は弱気5社の売り目標を大幅に上回っており、レポートの内容にも重要な変化が現れた。
(3)例えばメリルリンチは目標株価を380円に据え置いたが、過払い請求がピークアウトする時期と金額、三井住友銀行の支援内容等によっては、アップサイドリスクが発生すると述べている。
(4)つまり株価が上放れてしまうかもしれないという本音を注記して、裏目が出た場合に備えたのである。
(5)大和証券も弱気論を堅持する一方で、上放れのリスクを注記している。
(6)武富士は利息返還請求を2月末で締め切り、不良債権を確定する。プロミスとアコムに対する利息返還請求も武富士に準じて進行しており、3月には利息返還訴訟の大勢が判明するだろう。
(7)プロミスの決算発表当日に三井住友銀行の新頭取が記者会見し、プロミスを連結決算の対象子会社にすると言明したから、近々に持ち株を大幅に増やすだろう。
(8)プロミスは第3四半期決算でも小幅ながら黒字を計上し、2,800億円の純資産を維持した。
(9)好転一途の事実を見て、弱気の5社は浮き足だっているように見える。

(三)イー・ガーディアンの業績と株価。

(1)上場後まだ日が浅いから、決算内容は上場時の目論見書と大差がなかった。新たな増額修正を期待していた投資家は失望したかもしれない。
(2)しかしデジタルハーツと提携するなど、業務領域が急速に拡大しており、9月本決算の業績の大幅な上方修正は必至だろう。
(3)株価は上場直後から成長力の高さを評価して一直線に上昇し、現在は初の調整期を迎えている。そうなると筆頭株主のドリームインキュベータが全株式を売却し、グリーが持ち株の一部を売却したことによる浮動株の急増が気になる。
(4)経営者にとっても、過大な浮動株を放置すれば乗っ取りや買収を誘発する恐れがあるから、株価の押し目を好機とみて株式の安定工作に乗り出す可能性がある。その後に株式を分割する可能性もある。
(5)旺盛な成長力から見てこれ以上の深押しは考えにくい。ここからは業績の上方修正と株式安定工作に注目しておきたい。