2011/1/24

  2011年1月24日(月)
 劇的に好転したプロミスとアコムの経営環境。

(一)チャート。プロミスとアコムの日足。

プロミスとアコム

註1。プロミスの下段は日証金貸借の取り組み推移。赤線の空売りが青線の買いを大幅に上回っている。
註2。2010年の年末に三井住友銀行社長がプロミスの第3者割り当て増資を引き受けて全面的に支援すると表明。2011年の大発会にストップ高を演じた。
註3。日証金はアコムの新規売りを停止しているから、空売りはゼロである。
註4。1月21日付け朝刊で、三菱UFJ銀行頭取がアコムを全面的に支援すると表明して、株価が高値で寄りついた。

(二)プロミスとアコムに強力な支援。

(1)先週、三井住友銀行は全店に設置しているATMのうち700台余りのローン貸し出し機をプロミスに開放すると発表した。
(2)プロミスの久保社長は三井住友銀行出身で、かねてから全店舗の無人化を目指すと表明していた。三井住友銀行はその要請に応えたと思われる。
(3)21日には、三菱UFJ銀行の頭取が傘下のアコム支援を表明した。
(4)三菱銀行はアコム株36.8%を保有する筆頭大株主である。
(5)三井住友銀行はプロミス株20.75を保有する筆頭大株主であるが、さらなる買い増しを表明している。新規に取得する株数と株価は1月28日のプロミスの決算発表後に、開示する可能性が高い。
(6)三井住友銀行はプロミスの、三菱UFJはアコムの、筆頭大株主、メーンバンクとして、利息返還訴訟の推移、財務内容、収益力等を熟知しうる立場にある。その銀行トップが太鼓判を押したのだから、倒産の可能性は皆無になったと考えるべきだろう。

(三)アコムとプロミスの純資産と予想赤字額。

(1)2011年1月20日現在のアコムの純資産は4,393億円、プロミスは2,996億円である。(会社四季報CD-ROM 2011年1集 TOYO KEIZAI INC.より)
(2)一方、四季報2011年1集は、2011年3月期の予想赤字額をアコム509億円、プロミス600億円と予想している。プロミスの赤字予想は10月1日付三洋信販合併に伴う引当金を含んでいる。
(3)もし今期の赤字がこの程度に収まるとすれば、両社が蓄積した純資産の毀損は軽微で、経営状態はびくともしない。
(4)三井住友銀行と三菱UFJ銀行が傘下の消費者金融に対して全面的支援を言明したが、現実には支援によって新たにリスクを負う必要はなかったのである。

(四)アコムとプロミスの浮動株。

(1)アコムは発行株式数1.6億株に対して浮動株は0.6%だから、株式市場における流通株式は100万株に過ぎない。日証金は借り株の調達が困難であるとして空売りを停止しており、売り残高はゼロである。
(2)浮動株100万株といえば店頭株並みである。そこへ大口の資金が流入したから値動きが荒くなったのは当然である。
(3)プロミスもまた発行株式1.35億株に対して浮動株は2.9%だから株式市場における流通株式は400万株である。これに対して空売りが1,200万株に達したから、相場は仕手戦の様相を深めている。
(4)ちなみに東証一部市場に新規に上場又は昇格する企業は、浮動株基準に従って35%以上の株式を市場に放出する必要がある。
(5)しかし上場後にはこの規制が適用されない。特にアコムとプロミスはメーンバンクの買い付けで浮動株が極端に減少し、株価の急落、急騰を増幅している。

(五)新しい利益水準と株価水準を模索。

(1)ともあれ、三井住友銀行と三菱UFJ銀行が傘下の消費者金融の全面的支援を表明したことによって、両社の経営危機説は事実上否定された。
(2)逆に銀行の側に、1. 消費者金融と顧客を共有し、2. 大口の貸出先を確保する、という新たな必要性が生じている。
(3)銀行と消費者金融の間には相互支援の新しい関係が生まれつつある。
(4)プロミスは今上半期の営業利益が58億円、経常利益が71億円の黒字であった。利息返還訴訟がピークを過ぎれば、来期以降の期間損益は四季報予想通り、黒字に転換するだろう。
(5)アコムとプロミスは潤沢な純資産を蓄積しており、累積損失を来期に持ち越す懸念は全くない。
(6)昨年10月にサラ金最大手の武富士が倒産し、そのあおりを受けてプロミスとアコムが急落したが、両社の株価は今年に入って急反発した。
(7)今や消費者金融の大手2社は大手銀行傘下で連結決算の一翼を担い、新しい利益水準と株価水準を模索する動きを見せ始めた。
(8)両社がこれからどのように変身して行くかに注目したい。