2011/1/17

  2011年1月7日(月)
 プロミスが仕手人気の焦点に浮上。

1月11日付クラブ9で、私はプロミスの強弱感が鋭く対立している、要注意だと指摘した。果たしてその後の1週間に出来高が激増し、仕手人気の様相が鮮明となった。急変した相場の背景を検証しておきたい。
(一)アナリストの強弱感が極端に対立。
表1・アナリストの目標株価
会社名
 
目標株価(円)
更新日
 メリルリンチ   売り 
380 
 2011/01/07 
 シティ  中立 
490 
 2010/12/08 
 UBS  中立 
500 
 2010/12/02 
 野村  買い 
1030 
 2010/11/15 
 大和  売り 
− 
 2010/11/05 
 JPモルガン  売り 
350 
 2010/11/05 
 みずほ  売り 
600 
 2010/11/04 

(1)大手証券のアナリストによる評価は極端に別れている。買い推奨は野村證券のみで、他社は売り、又は中立である。
(2)目標株価は野村證券の1,030円を除けば、6社が380円から600円に集中している。先週末には6社の目標株価を時価が大幅に上回った。各社のコメントについて私見を述べておきたい。
(3)メリルリンチを除く6社のレポートはサラ金最大手の武富士が倒産した直後の昨年11月に作成しており、プロミスとアコムが急落して悲観人気が頂点に達した状況に引きずられている。弱気に傾き過ぎていたといわざるを得ない。
(4)その中で野村證券だけは利息返還請求件数がピークを過ぎたと見て、強い買い推奨を掲げた。野村證券はさらに12月に追加レポートを出した。武富士倒産の影響を受けて11月の利息返還件数が前月比で20.4%も急増したが、それでも前年同月比で13.8%改善した点を評価し、最悪期を脱したことをあらためて確認している。私は野村證券のアナリストの見識に敬意を表したい。
(5)不可解をきわめたのは1月7日付メリルリンチの超弱気レポートである。1月7日には三井住友銀行の社長がプロミス支援を言明し、株価がストップ高を演じていたにもかかわらず、時価を30%以上も下回る380円という極端な売り目標を掲げた。あえて私見を述べれば、外資系証券はしばしば買いたいときに弱気を述べ、売りたいときに強気を述べる。勘ぐれば、今回も空売りを勧めた自社の大手客の買い戻しを援護するために異常な弱気レポートを作成したと思われる。

(二)三井住友銀行が全面支援を言明。

(1)昨年末に、三井住友銀行の社長がプロミスの第3社割り当て増資を引き受けて全面的支援に乗り出すと言明した。この発言を受けてプロミスは大発会でいきなりストップ高を演じた。
(2)この時から相場が一変した。先週は株価が上放れた一方、信用取引は株不足、逆日歩が続き、出来高が急増し、日に日に仕手相場の様相を深めていった。
(3)プロミス支援を表明した三井住友銀行自身にもプロミスを必要とする状況変化が進行していた。第1に、送金や振り込み業務がパソコンやコンビニエンスストアに奪われて、銀行の手数料収入が減少した。第2に、企業が潤沢なキャッシュを蓄積し、銀行借り入れを必要としなくなった。大手銀行の貸し出しは預金残高の80%を下回っており、有力な融資先としてプロミスを確保する必要が生じた。 
(4)第3に、プロミスはすでに三井住友銀行との間で顧客斡旋契約を交わし、銀行に紹介手数料を支払って、共同で融資する業務を始めている。
(5)三井住友銀行はプロミスの大株主、メーンバンクとして利息返還訴訟の推移や収益力や財務内容を熟知し得る立場にある。十分な成算をもって全面的支援に乗り出したと見ておくべきだろう。

(三)武富士支援に14社が名乗り。

(1)13日付各紙は会社更生手続き中の武富士のスポンサーの最終選考に5社を絞り込んだと報じている。応募した企業数が前例を見ない14社に達したという情報も株価を刺激した。
(2)さもありなん。武富士は債権債務を確定するために利息返還訴訟の受付を2月27日に締め切ると宣言している。実質的な期間利益は黒字だから、訴訟による債務が確定すれば再建のめどが立つ。
(3)武富士再建の情報が早耳で伝わった12日朝かプロミスの出来高が急増し、値動きが急となった。

(四)プロミスの業績予想。
表2
   
10.3 
11.3予
12.3予
13.3予
 営業収益(億円)
 3390 
 2536 
 2188 
 1994 
 純利益 (億円)
146 
-155 
286 
239 
 1株利益 (円)
115 
-1094 
202 
168 

(1)業績予想のデータは野村證券のレポートから引用した。
(2)プロミスの上半期の営業利益は58億円の黒字であった。野村證券は利息返還訴訟に伴う引当金の積み増しが急減する来期以降は黒字に転換すると予想している。
(3)プロミスは最盛期には年間1,000億円以上の利益を上げて、株価は1万円を超えていた。しかし昨年から融資金額が年収の3分の1以内と決められたから、営業収益の回復には限界がある。しかし同時に不良債権も縮小する。
(4)表2で1株利益が来期202円、来々期168円の黒字となる点に注目されたい。野村證券が目標株価を最低1,030円とし、株価は次第に「騰勢を加速する(カタリスト)」と指摘した根拠である。
(5)少なくとも今日現在、野村證券のレポートは株価動向の変化をきわめて正確に予見している。

(五)1月28日の決算発表に注目。

(1)プロミスが1月28日に発表する第3四半期の決算と通期予想に注目したい。
(2)第1に、野村證券を除く6社は強気・弱気にかかわらず、決算発表を機にレポートを更新する責任がある。
(3)第2に、三井住友銀行がプロミスの決算発表後に、昨年末に予告した第3者割り当て増資を発表する可能性がある。

(六)短期的には信用取引の取り組みが最大の注目点。

(1)プロミスの浮動株式数は発行株式数1.3億株のうちわずか2.9%、400万株に過ぎない。にもかかわらず信用取引の空売りが浮動株の3倍近くに急増している。
(2)すなわち13日現在、3市場合算の取り組みは、売り1,147万株に対して買い826万株。うち日証金の取り組みは売り742万株に対して買い147万株である。大幅な売り越しの結果、連日逆日歩が点灯している。
(3)株不足の解消にはかなりの時間が必要だろう。
(4)低い目標株価を提示していた6社が、プロミスの第3四半期決算発表を受けてレポートをどう更新するかも注目点である。

(七)アコムの浮動株はたったの1%。

(1)三菱銀行傘下のアコムに至っては浮動株がたったの1%。160万株に過ぎない。
(2)アコムのオーナーである木下一族は上場以来1株も株を売っていないという。サラ金業界に逆風が吹いてもオーナーは全く動揺も悲観もしていないことを示す証左である。
(3)日証金は借り株の調達が不可能として新規の空売りを停止している。
(4)発行株式数は1.6億株でも、実態は160万株を巡る攻防だから、アコムの株価変動はあらっぽくなるだろう。