2010/12/6

  2010年12月6日(月)
  強気の指標が優勢となった日本の株式市場。

(一)円安は日本企業を救う。

(1)円は11月1日に高値80円23銭を記録した後、11月29日に84円40銭まで急落し、その後は84円前後で推移している。
(2)日本の企業は9月中間決算で大幅増益を記録したにもかかわらず、輸出関連企業はみな通期の利益予想を据え置いた。下期の為替を80円と見て、為替差損の急増を予想したからである。
(3)しかし、直近の円安が神風となった。先週末に円相場が急騰したが、輸出企業はすでに3月末までの為替予約を84円前後で完了した、と私は思う。
(4)製造業が生産コストを1%切り下げるのは至難であるが、為替が1円下がれば1%強の増益となる。輸出企業が下期の為替を80円と想定したからには、84円前後でヘッジしなかったとは考えられない。
(5)よって大半の輸出企業は下期の業績が予想を大幅に上回ると私は思う。
(6)かりに再度円高に転じたとしても、緩やかであれば日本企業は十二分に対応する能力を備えている。
(7)ユーロが低迷したためにヨーロッパ向けの輸出採算は好転していないが、今後に反騰が期待できる。

(二)ヘッジファンドがインサイダー情報で荒稼ぎ。

(1)米国では、SEC(金融監督庁)の銀行検査で、投資銀行と傘下のヘッジファンドが結託したインサイダー取引が次々に摘発された。米国のマスコミは年内に多数の逮捕者が出ると報じている。
(2)日本では先週、米投資銀行系ヘッジファンドのインサイダー取引疑惑がようやく一挙に表面化した。
(3)彼らは増資情報をキャッチすると借り株を動員して売り浴びせ、安値で売り出した増資新株を買って現渡しする手法を繰り返し、巨額の利益を積み上げた。彼らの売り崩しで増資銘柄が軒並みに大暴落し、既存の株主は大きな損害を受けた。
(4)監督官庁である金融庁はヘッジファンドの明々白々たるインサイダー取引を長期間黙認してきた。証券業協会とマスコミは金融庁の怠慢と責任を厳しく追及するべきである。
(5)日米で彼らのインサイダー疑惑が噴出したからには、米投資銀行はヘッジファンドを隠れ蓑とした証券業務から撤退せざるをえなくなるだろう。
(6)彼らは株式や国債を借りて実弾で売るから、空売りの実態が見えない。取引所が借り株の情報を公平に開示すればインサイダー取引の実態がリアルタイムで明らかとなる。日本の投資家が不利な戦いを強いられる状況も改善する。
(7)彼らの資金量が縮小すれば売り圧力が後退し、世界の株式市場の価格形成が正常化するだろう。

(三)ヨーロッパの中央銀行が反撃に出た。

(1)ヨーロッパではアイルランドの財政危機に乗じて、投機筋のユーロ売り、国債売りが進行した。
(2)しかしECB中央銀行が買い向かい、英、独、仏の株価が反騰に転じた。
(3)つれてユーロも反騰に転じるだろう。

(四)短期的には反落の指標も。

(1)短期的には調整を示唆するテクニカル指標が出ている。
(2)最近の株価急騰で、騰落指数が加熱している。
(3)移動平均線と日足の乖離幅が拡大した。
(4)ヘッジファンドの買い戻しが一巡した。
(5)ドル建ての日経平均が新値圏に達した。
(6)しかしこれらは短期的な指標で、中期的な上昇トレンドを妨げる懸念は乏しい。

(五)世界の株式相場は強気の条件が優勢。

(1)日米とも、中央銀行が金融市場に大きな過剰流動性を供給している。
(2)日本は、円の独歩高がひとまず終息し、3月決算の大幅な上方修正が必至である。
(3)米国は、中古住宅の販売好転を示す指標が出た。米国では住宅関連指数の好転は、失業者の減少、景気好転の重要な先行指標である。
(4)ヨーロッパは、ECB中央銀行が投機筋に買い向かい、英独仏の株価が反騰に転じた。ユーロの反騰も近いだろう。
(5)米投資銀行系ヘッジファンドの資金量が縮小し、売り圧力が後退しつつある。
(6)かくして総じて強気の指標が出そろってきた。世界の株価は短期的な調整を交えながら、上昇傾向を維持するだろう。