2010/11/29

  2010年11月29日(月)
  投資銀行系ヘッジファンドと相場の研究。

(一)東京市場を支配した米投資銀行系ヘッジファンド。

日経平均/ドル円 週足

(1)チャート1を見れば一目瞭然、日経平均とドル/円相場の連動性はきわめて高い。その理由ははっきりしている。
(2)第1に、米投資銀行系ヘッジファンド(以下、彼らと呼ぶ)が事実上日本の証券市場を支配し、彼らの投資動向が日本の為替相場と株式相場に大きな影響を与えてきた。
(3)第2に、彼らは4月以降、円買い・日本株売りを主導して連戦連勝していたが、11月に入って円相場が大天井を形成したとみるや、急遽損失覚悟で円売り、日本株買いに転換し、ポートフォリオの巻き戻しを急いだ。
(4)このような彼らの投資行動を裏付けるデータがある。今月に入って大半の大型株で信用取引の買い残が急減し、株不足が6〜700銘柄に達した。彼らは大量の借り株を用いて実弾で日本株を売り崩していたから、売れば売るほど信用取引の買い残が急増したが、一旦借り株の買い戻しに転じると、買えば買うほど信用取引の買い残が急減したのである。

(二)米ヘッジファンドにインサイダー疑惑。

(1)彼らは今、もう一つの困難に直面している。
(2)米SEC(証券取引委員会)が投資銀行と投資銀行系ヘッジファンドに大がかりな立ち入り検査を継続しており、インサイダー取引の疑惑が噴出する可能性が高まっている。
(3)3年間に及ぶSECの不正取引の摘発は最終段階を迎えており、年内にゴールドマンサックス等から多数の逮捕者が出るといううわさがある。
(4)ヘッジファンドの中でも、米投資銀行と傘下のヘッジファンドの関係はきわめて深い。彼らは投資銀行から資金と情報とノウハウの提供を受けて、株式、為替、商品等にまたがる売り建てと買い建てをコンピューターを駆使して同時に執行するシステムを構築した。両社の人脈と情報網を経由してインサイダー情報が飛び交っていたと見られる。
(5)投機性が高い彼らの資金が野放図に拡大すればリーマン事件の再来を招くリスクが高まるという批判もあり、オバマ政権は内部検査を強化していた。投資銀行が傘下のヘッジファンドから資金を引き上げているという噂もある。

(三)投資銀行系ヘッジファンド固有の手法。

(1)5月にギリシャ問題が噴出したとき、彼らはヨーロッパ市場で通貨ユーロとギリシャ、スペイン、ポルトガルの国債、株式を売りまくり、危機を増幅した。しかしこの時はECB中央銀行が50兆円の資金を準備して買い向かい、撃退した。
(2)同時に、ドイツのメルケル首相は投資銀行経由で国債や株式を借りて売り崩す彼らの手法に激怒して即座に借り株、借り債の規制案をまとめた。今EC圏でアイルランドの財政破綻説が浮上したが、彼らの介入度は小さい。
(3)彼らの資金量が縮小すれば、彼らの独壇場である借り株を用いた株価の売り崩しの手法が後退し、日本における不可解な株価形成が正常化するかもしれない。

(四)円の二段安で、株価は二段上げへ。

ドル円 日足

(1)先週末、円ドル為替と日経平均のチャートで強気の指標が現れた。
(2)<チャート2>の印の通り、先週末に円相場は一目均衡の雲を下から上に突き抜けた。これは強い円安の指標である。
(3)<チャート1>の印の通り、13週移動平均が26週移動平均を下から上へ突き抜けるゴールデンクロスが実現した。これは株高の指標である。
(4)景気や業績でも強気指標が目立ってきた。
(5)米国では、景気好転の予測が優勢となった。
(6)日本では、円安進行で、3月決算の増額修正が続出する。
(7)株価は短期的な調整を経て。再騰を開始するだろう。