2010/11/2

  2010年11月2日(火)
  クラブ9スペシャル
   『日本ケミカルの決算発表から』

(一)エポエチンアルファの売上高は7億円。

(1)10月29日発表の日本ケミカルの第2四半期決算について三浦総務部長は次のように語った。
(2)待望の超大型新薬・エポエチンアルファが初めて売上高7億円を計上した。
(3)7〜8月は神戸第1工場の生産が遅れたために出荷を制限していたが、9月にほぼ供給体制が整った。10月以降は売上高が漸増し、神戸第2工場が稼働する12月以降は国内、海外市場の需要に無制限に対応できる。
(4)グラクソが担当する海外販売は来年以降になるだろう。
(5)国内販売を担当するキッセイ薬品は日本ケミカルの出荷価格に自社の手数料を加えて販売するから、8日発表の第2四半期決算で10億円以上の売上高を計上すると見込まれる。

(二)エポエチンアルファの通期売上高。

(1)エポエチンアルファの通期の売上高予想について三浦部長は明言を避けたが、話しぶりから私は最低30億円(営業利益9億円)、順調に行けば50億円(営業利益15億円)と推定した。
(2)売上高を最低の30億円、粗利を30%と想定すれば、日本ケミカル自身の今期予想売上高144億円を20%、予想営業利益13.2億円を68%、上回る数字となる。
(3)日本ケミカル自身は通期見通しを据え置いたが、その業績予想は常に異常に保守的で、投資家の誤解を招きやすい。例えば前2010年3月期決算でも期首予想と実績が次表の通り極端にかい離していた。

2010年3月期の期首予想と実績
 
売  上
営業利益
経常利益
利  益
期首予想
11,500
300
480
250
実  績
14,384
2007
1861
1302
単位:百万円 

(3)今期は前期になかった超大型新薬エポエチンアルファが初めて寄与するから、下期に売上高が月を追って増加するのは当然である。来期以降は海外1兆円の巨大市場が射程に入る。
(4)私は、三浦部長の談話を数値化して新薬寄与を通期30〜50億円と推定した。実際には予想の上限に近づくと思う。

(三)第2四半期は特許料収入7億円が減少。

(1)第2四半期決算では、第1四半期に計上したグラクソからの特許収入7億円がなくなった。
(2)しかしエポエチンアルファの売上高7億円を計上したから、第1四半期と第2四半期の売上高と利益はほぼ横ばいとなった。
(3)グラクソからの特許収入は国内分については終了したが、今後は海外での新市場開拓に伴う特許料とマイルストン条項に基づく特許料を逐次計上する。これも大きな上ぶれ要因となる。

(四)強気の芦田会長。

(1)芦田会長は6月の株主総会でエポエチンアルファの販売目標を国内、海外とも腎性貧血薬市場の20%、粗利は30%以上と語っている。
(2)これまでは海外1兆円、国内1,100億円市場を2社が寡占して来た。その巨大市場に日本ケミカルは第3の製薬会社として参入した。
(3)芦田会長の販売目標をそのまま数字にすれば余りにも巨大となるが、会長は熟慮した上で本音を語ったと私は感じた。
(4)日本ケミカルはバイオ技術によって新薬を開発したから、牛の血清を用いて抽出する先行2社に比べて品質が安定して生産コストが安く、競争力が強い。7月以降の9ヶ月で国内1,100億円市場の5%、50億円程度を狙うのは当然だと私は思う。