2010/10/25

  2010年10月25日(月)
  日本ケミカルの株価と業績。

(一)日本ケミカルのチャート。

JCR

 注1.10月29日に4月高値の6ヶ月期日が到来する。
 注2.第2四半期決算の発表は10月29日である。

(二)バイオ医薬品と後発医薬品。

(1)10月21日付日経はゾロ品(後発医薬品)メーカーを含む世界中の製薬会社が入り乱れてバイオ医薬品の開発競争を展開している状況を詳しく報じている。
(2)ゾロ品の開発競争は大型薬品の特許期限切れが集中する2010年を目標として激化したが、すでに特許期限切れ薬品が一巡して、新たにゾロ品を開発するネタがなくなった。
(3)そこで、現在はゾロ品の開発競争に代わってバイオ医薬品の開発が製薬業界全体の新たな開発競争の目標となった。すなわち特許期限が切れていなくても、バイオや遺伝子組み換えの先端技術を活用して、先発薬と同等か先発薬以上の薬効を持つ薬品を開発する競争が主戦場となった。
(4)ゾロ品は厚労省の審査を受ける必要がないが、バイオ医薬品は通常の医薬品と同様に厚労省の審査をクリアする必要がある。そのため平均開発コストはゾロ品の1億円に対してバイオ医薬品は50倍の50億円。さらに永い開発期間も必要で、開発に成功する保証はない。
(5)資本と開発力を持たないゾロ品メーカーが単独で開発するのは困難だから、世界的な資本提携が急増している。沢井製薬が突然杏林製薬の株集めに乗り出して拒否されたのはその余波である。
(6)現在までに世界中で開発に成功したバイオ医薬品はまれで、日本で厚労省が認可したのはドイツのサンド社が開発した成長ホルモン治療薬と日本ケミカルのエポエチンアルファの2例のみである。

(三)エポエチンアルファは超大型バイオ医薬品。

(1)エポエチンアルファは今年5月27日に販売を開始した。薬価は先発薬の77%で、予想の70%を大幅に上回った。厚労省に提出した臨床データが高い評価を受けた結果である。
(2)腎性貧血治療薬はこれまで牛の血清を用いて精製し、精製後に血清を除去するという複雑な工程が必要であったが、エポエチンアルファはタンク内で科学的に培養するから生産コストが低く、品質の安定性が高い。日本ケミカルは12月に稼働する神戸第2工場をもって大量生産に備えた大型の設備投資が一巡する。
(3)エポエチンアルファは透析患者の90%が必要とする腎性貧血治療薬で、患者数は毎年10%増加している。国内1,100億円、海外1兆円の巨大市場で、これまでは内外とも2社が独占して来た。大証2部、年間売上高144億円の弱小日本ケミカルが第3勢力として宝の山に踏み込んだのである。
(4)日本ケミカルは従業員340人中40%が開発に従事する開発型企業だから、販売提携と資本提携が進んだ。国内の販売権を取得したキッセイ薬品は15%を出資、海外の販売権を取得したグラクソ・スミスクラインは25%を出資し、さらに33%に引き上げる合意がある。これまでにグラクソが支払った特許料は20億円で、今後もマイルストン条項に従って売上高の一定比率を支払う。
(5)グラクソはさらに日本ケミカルと全面的な包括提携契約を締結し、新たにグラクソの会長と技術担当を取締役に送り込んだ。世界第3位の巨大製薬会社であるグラクソの日本ケミカルを飲み込まんばかりの急接近はエポエチンアルファにかける期待の大きさを示している。

(四)株価は二番底入れを経て業績買いへ。

(1)芦田会長はエポエチンアルファで市場シェア20%取得をめざす、粗利は30%を確保できると語っている。12月には神戸第2工場が稼働し、エポエチンアルファの生産能力を5倍に拡大する。これで大量販売に備えた設備投資が一巡する。来期には特に利益面で革命的な変化が期待できるだろう。
(2)10月29日発表の第2四半期決算では、国内市場の立ち上がりの3ヶ月が、初めて売上に立つ。
(3)海外は、米国、欧州それぞれ5,000億円市場であるが、米国市場の販売は2012年以降、欧州市場は来年以降に販売開始の予定という。本格的な業績変化は2012年3月期以降で、今期は下期に国内1,100億円市場でキッセイ薬品がどこまで食い込めるかというところである。
(4)株価は目先2番底を確認した後、今、来期の業績変化を買う相場に発展するだろう。