2010/10/18

  2010年10月18日(月)
  21世紀最大の夢・EV革命を主導するパナソニック。 

(一)パナソニックの日足。

panasonic

(二)トヨタ参加で三洋電機陣営が圧勝。

(1)15日付日経は、トヨタ自動車が電気自動車(EV)用リチウムイオン電池を三洋電機から調達すると報じた。
(2)先にトヨタが支援に乗り出した米ステラも三洋電気製リチウムイオン電池を搭載するだろう。
(3)これで三洋電機陣営に参加する自動車メーカーはホンダ、フォード、フォルクスワーゲン、アウディ、スズキ、プジョーにトヨタ、ステラが加わって世界の主要メーカーを網羅した圧倒的多数派を形成する。
(4)ガソリンエンジンから電気モーターへという21世紀最大の技術革新を契機に、全方位販売の三洋電機・パナソニック陣営が自動車メーカーを支配する構図が鮮明となった。
(5)三洋電機は歴史的に乾電池で世界ダントツのシェアを維持して来た。その三洋電機を世界第2位のパナソニックが買収した。合併後は三洋電機が構築した世界1のリチウムイオン電池の生産体制をパナソニックの資金力と生産技術が補完する。
(6)三洋電機は2015年までに800億円を投入してリチウムイオン電池で月産1,000万セルの生産体制を確立するが、現実の需要はこれを上回ると見て、すでに投資額を1,000億円に拡大すると表明している。競合他社の10億円単位の設備投資と比べれば桁違いのスケールで、本格的な大量生産に入っている。

(三)トヨタが自力開発を断念した経過。

(1)同日付の日経は、トヨタが一時は三洋電機買収に傾いた経過にも触れている。「詳細な技術分析の結果は『三洋の買収価値あり』だった」という結論を得ながら、好機を逸した。
(2)第1回目のTOBでパナソニックは三洋電機の発行株式数の3分の2取得を目指したが、独禁法問題が浮上して取得株式数を2分の1に縮小した。この時私は過剰となった20億株をトヨタが取得して第2位の株主になるのではないかと述べたがトヨタは動かず、20億株が市場で売却されたために株価が急落するという予想外の事件が起こった。
(3)三洋電機が圧倒的なシェアを確立し、パナソニックが完全買収に成功した今となっては、トヨタはリチウムイオン電池を自力で開発する道を断たれた。
(4)トヨタはニッケル水素電池搭載のHV車で世界市場を制したが、技術革新のスピードは速い。人気は省スペース、高性能のリチウムイオン電池に向かっている。トヨタは来年初めに発売するミニバンタイプのHVに三洋電機のリチウムイオン電池を搭載する。
(5)本格的なEV時代が到来すると予想される2020年代には,トヨタが世界各地に構築したガソリンエンジンの工場が不要となる。そのとき世界の自動車市場の主役は確実にトヨタからパナソニックに代わる。トヨタが三洋電機買収の決断を躊躇した代償はあまりにも大きい。

(四)ライバル企業との格差は拡大一途。

(1)同日付日経はまた、「高性能の乾電池を1つだけ作るのはどのメーカーにも可能。同じ品質での大量生産には次元の異なる難しさがある」と解説している。
(2)そのために海外を含む競合他社の人材スカウトが激しいが、三洋電機は早くからこのことあるを予想して生産工程を細分化し、情報流出を防いでいる。また本間副社長は、技術開発は日進月歩で1年後には古くなるからスカウトの効果は限定的だと語っている。
(3)日本では三菱と日産がユアサ、三菱電機、NEC、東芝等と合弁会社を設立してリチウムイオン電池を生産し、EV車の販売で先行しているが、電池がEV車のコストの3分の2を占めるという難問が解決できないために採算が取れない。
(4)これに対して技術力と生産ノウハウに自信を持つ三洋電機は当初から全方位販売を表明し、世界の主要メーカーを結集して圧倒的な多数派を形成した。
(5)自力開発を目指して来たEVメーカーは、競争力を維持するために早晩調達先を三洋電機に切り替えざるを得なくなるだろう。
(6)ガソリンエンジンが電池モーターに代われば自動車1台の部品は10分の1に激減する。油まみれのガソリンエンジンがなくなれば、電機メーカーやファッション業界等のアウトサイダーが続々と自動車市場に参入する。
(7)三洋電機は当初からEV車市場の40%獲得を目指してきたが、すでに目標を大幅に上回るペースで進行している。さらにアウトサイダーがEV市場に参入すればするほど取引先が多様化し、市場シェアが拡大する。
(8)大量生産によるコスト競争力と技術競争力で、三洋電機を買収したパナソニックの優位が日に日に鮮明となるだろう。

(五)パナソニックはEV市場のマイクロソフトを目指せ。

(1)20世紀に急成長したコンピューター市場では、中核部品を開発したマイクロソフトとインテルが独占的な市場支配を確立し、現在もその収益力と支配力は揺るがない。
(2)パナソニックがEV車の技術革新を主導し、中核部品である電池で圧倒的な市場シェアを握れば、コンピューター市場で経験したと同様に、パナソニックが自動車市場を支配する可能性が高まる。
(3)早くからその日を期待して私は三洋電機を強く推奨した。三洋電機は期待通りに着々と市場支配力を強化したが、TOBを受けて高騰するべき株価が逆に急落するという前代未聞の事件が発生し、投資家に迷惑を掛けた。
(4)しかし今、パナソニックによる三洋電機買収は完了した。世界一の超巨大産業である自動車市場で始まった21世紀最大の技術革新は、私の想定を超えるスピードで現実となりつつある。
(5)パナソニックの大変身に新たな夢を託したい。