2010/10/12

  2010年10月12日(火)

(一)パナソニックに注目。

(1)先週、パナソニックは三洋電機とパナソニック電工のTOB応募を締め切った。
(2)TOBに応募しなかった株主もパナソニック株式と交換することによって完全に買収し、3社は合併する。交換比率は間もなく決定するだろう。今後、三洋電機とパナソニック電工の株価は、パナソニックの株価に準じて上下することになる。
(3)合併後のパナソニックには好材料が出そろう。
(4)第1に、2社を買収する資金を調達するために予定していた5〜8,000億円の増資を取りやめた。上半期の大幅増益で増資の必要がなくなったからである。
(5)第2に、リチウムイオン電池を含む乾電池で世界ダントツの三洋電機と世界第2位のパナソニックが合併すれば、圧倒的な市場シェアと競争力を確立する。
(6)第3に、パナソニック電工との合併で、太陽電池の販売網が充実する。
(7)本格的な電気自動車(EV車)時代が目前に迫っている。EV車ではガソリンエンジンがモーターに変わり、3万点の部品が1万点に激減する。モーターを駆動するリチウムイオン電池は最大の中核部品となる。
(8)パナソニックはすでに後ろ向きの選択と集中を終えたから、世界最大の成長企業に発展する条件を整えた。
(9)これまで三洋電機に賭けて来た大きな夢を今後はパナソニックに託したい。

(二)為替介入で日本を守れ。

(1)例えば、韓国は常時為替相場に介入し、過去5年間にウォンは円に対して最大44%も下落し、現在も33%安の低水準を維持している。官民一体のウォン安政策によって日本の十八番である半導体、液晶、家電のみならず、新幹線、原子力発電でさえ、国債入札で日本を圧倒している。
(2)韓国のみならず、すべてのアジア諸国は皆日常的に為替介入を繰り返している。インドやブラジルのような超高度成長国家も、常時為替市場に介入している。
(3)中国は元相場を国家が管理し、元高を阻止することが世界の利益に繋がると公言してはばからない。
(4)中国の為替政策を非難している米国もまた、ドル安を支持することによって為替相場に介入している。
(5)欧州はギリシャ、スペイン、アイルランドなど、財政危機の国を抱えているから、ユーロ安を主張するわけにはいかない。
(6)円が1ドル360円から80円まで大暴騰した高度成長時代は20年も昔に終わった。今や日本はデフレとゼロ成長に悩む斜陽国家である。リーマンショック以後、日本がさらに国際競争力を失い、景気が低迷したのは、世界で唯一為替に介入しなかったからである。
(7)9月の第一次為替介入は明らかに有効であった。ドル円相場は先週高値を更新したが、ドル以外の通貨に対しては割安の水準を保っている。
(8)現在は異常なドル安局面である。米国がドルの独歩高の容認をやめれば、日本は為替介入の必要がなくなる。
(9)私は、今すぐ第二次介入に踏みきるべきだと思う。第二次、第三次の介入をためらえば、再度投機筋の跳梁を招く。
(10)為替介入に反対するエコノミストは、日本追撃に照準を合わせて官民一体の為替操作を継続している韓国に対抗する方策を明示する責任がある。国益を無視した机上の空論は百害あって一利もない。今にして為替介入をためらえば日本の主要産業と主要企業は皆韓国に屈服するだろう。
(11)今や為替政策は国家の存亡を賭けた経済政策の根幹である。国内企業の海外流出、失業率の増大、物価デフレ、ゼロ成長という日本経済の困難な課題は、円の独歩高を阻止すればことごとく解決する。
(12)日本は國際的な通貨安競争の一方的な被害者である。日本は堂々と為替市場に介入し、円の独歩高を阻止する権利がある。

(三)ユダヤ人の無担保金融と日本人の不動産担保金融。

(1)日銀が金融安和政策を発表した数時間後に、ニューヨークダウが200ドルの急騰を演じた。最も保守的な日銀が大胆な緩和策を発表したのを見て、世界中の中央銀行がジャブジャブ金融に追随するという観測が広がったからである。
(2)日銀の資産5兆円買い上げに対して、米FRBは10倍の50兆円に上る資産買い取り政策を計画していたから「不景気の株高論」に拍車がかかり、米国を筆頭に世界の株価は連鎖して上昇軌道に乗った。
(3)日本では、日銀買い取り資産にリート(不動産投信)が含まれたから、不動産株が急騰し、暴落していた銀行、証券も反騰に転じた。
(4)思い返せば、私は小泉内閣で竹中平蔵氏が金融担当大臣に就任して断行した暴力的な金融改革に徹底的に反対した。竹中大臣は木村剛(政策投資銀行を破綻させた)を金融庁顧問に据えて、「不動産担保金融から無担保金融へ」と狂気のような金融革命を断行し、三和銀行が事実上倒産して三菱銀行に吸収合併された。
(5)しかし小泉政権の終えんと共に日本の銀行は一夜にして無担保金融から不動産担保金融に回帰した。
(6)さもありなん。無担保金融は3,000年間にわたって故国を持たず、定着せず、各地を流浪したユダヤ人が構築したシステムである。流浪の民であるユダヤ人と対照的に、有史以来日本列島に土着している日本人が土地を担保とする金融システムを構築したのは当然である。
(7)一昨年のリーマンショックで無担保金融の欧米では銀行が軒並みに巨額の負債をかぶったが、不動産担保金融の日本の銀行は無傷であった。
(8)日本の銀行は不動産相場が上昇すれば貸し出しを増やすから、今回は通常の金融緩和よりも景気刺激効果が大きい。
(9)歴史的に見ても、日本では不景気の株高が土地高を誘発し、景気回復の先行指標となってきた。

(四)ヘッジファンドの衰退は個人投資家の好機。

(1)私は、世界的な株高のもう一つの支援材料として、ヘッジファンドの衰退を指摘したい。
(2)一口にヘッジファンドといっても多種多様であるが、資金量の大きさとノウハウの多彩さで証券市場の大きな攪乱要因となったのは投資銀行系列のヘッジファンドである。
(3)彼らは投資銀行の代理人として証券市場で巨額の資金を運用し、投資銀行から供与されたアルゴリズムを駆使して超高速で運用する。さらに彼らは投資銀行経由で株式を借り出し、借り株を用いて一挙に相場を売り崩すという独自のノウハウを駆使する。
(4)彼らは巨額の資金運用を一瞬で執行するから、ニューヨーク市場のコンピュータシステムが売買停止に追い込まれるという事件が発生した。
(5)大引け直前に株価が急騰、急落し、一つの市場の急落がリアルタイムで他市場に連鎖する、という傾向も常態化した。
(6)一般の投資家は投資銀行系ヘッジファンドが繰り出す資金量とノウハウとスピードに翻弄された。マスコミは急騰、急落の原因を説明できない。投資家が離散し、市場人気が弱気に傾いた。
(7)しかしここへ来て、投資銀行系ヘッジファンドの勢いに変調が現れ始めた。
(8)5月にギリシャの財政破たん情報を受けてヘッジファンドが猛然とユーロを売り、ギリシャとスペインの国債と株式を売り崩したが、6月にECB中央銀行が反撃に出るともろくも敗退した。
(9)彼らは東京市場でも円買い、日本株売りのアルゴリズムを仕組んで連戦連勝していたが、9月に政府日銀が円売りに出ると、反撃するどころか、一方的な買い戻しが続いている。
(10)例えば先週、みずほ銀行、野村證券など、暴落していた銘柄に借り株の買い戻しと見える大口買いが集中して急反騰に転じた。ヘッジファンドは借り株を調達して実弾で売り崩すから、通常の信用取引と反対に売れば売るほど買い残が増え、買い戻せば買い戻すほど売り残が増える。信用取引の取り組みの推移を見れば、彼らが借り株の買い戻しを急いでいる状況が鮮明に読み取れる。
(11)傍若無人で稼ぎまくっていた投資銀行系ヘッジファンドが、急に資金を引き揚げ始めたのは、米オバマ政権の金融改革を受けて、投資銀行が証券部門の大半を切り捨てたからである。投資銀行で世界1のゴールドマン・サックスも証券部門の資金量を10分の1に縮小した。
(12)かくして世界中の株式市場を撹乱した投資銀行系ヘッジファンドは資金回収を急いでおり、その勢力は大幅に後退するだろう。
(13)ヘッジファンドの借り株による売り崩しに撹乱された株式市場は次第に本来の姿を回復し、個人投資家の相場観が勢いを取り戻すだろう。